台湾、初の有事対応演習で約1600万人のモバイルデータ通信を通常の約1%に制限へ

2026年7月23日 21:46

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記事提供元:Tech Times

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台湾政府は8月10日と13日、北部および中部に住む約1600万人を対象に、4Gおよび5Gのモバイルデータ通信を30分間、通常の約1%に制限する。サイバー攻撃や中国海軍による封鎖が原因ではなく、台湾政府がまさにそうした状況を意図的に再現するものだ。

台湾の中央通訊社によると、動画ストリーミング、ビデオ通話、SNSへの投稿、クラウドベースのアプリ、大容量ファイルの転送は事実上利用できなくなる。一方、音声通話、SMS、セルブロードキャストによる緊急警報は通常どおり機能する。この違いは、台湾が試みる演習の技術的な考え方を端的に示している。

国家通訊伝播委員会(NCC)は、4Gおよび5Gのモバイルデータ通信速度を、30分間ずつ2回、通常の約1%に制限すると明らかにした。顧立雄国防部長によると、この措置は8月5日から14日まで実施される年次軍事演習「漢光42号」と同時に行われる「全社会防衛強靱性都市演習」の一環である。

台湾で民間向け通信帯域の強制的な制限が実施されるのは史上初めてだ。ロイターによると、台湾政府は、民間のインターネットを制御する政府権限の行使ではなく、あくまで有事への備えであると慎重に位置付けている。ただし、演習では実際にその権限を行使することになる。

■停止するサービスと停止しないサービス

通信制限は、14の市・県を対象に2段階で実施される。台北タイムズが報じたNCCの計画通知によると、8月10日の現地時間14時30分から15時(日本時間15時30分から16時)には、台中市、嘉義市、嘉義県、苗栗県、彰化県、南投県、雲林県を含む中部で行われる。8月13日の同じ時間帯には、台北市、新北市、基隆市、桃園市、新竹市、新竹県、宜蘭県を含む北部が対象となる。ロイターによると、対象地域には台湾の人口の約70%が居住している。

一般的な4Gまたは5Gの通信速度が通常の1%まで低下すると、普段は50~100Mbpsのダウンロード速度が出る回線でも0.5~1Mbps程度になる。これは低品質のIP音声通話を不安定な状態で利用できる程度にすぎず、動画ストリーミング、オフライン保存していない地図を使うリアルタイムナビゲーション、写真のアップロード、クラウド同期サービスには不十分である。

Focus Taiwanによると、NCC当局者は住民に対し、演習時間前にオフライン地図をダウンロードすること、重要なビデオ会議を固定回線またはWi-Fi接続に切り替えるか時間を変更すること、集合場所や固定電話による代替連絡先を事前に決めておくことを明確に推奨している。

音声通話は演習中も維持される。これは偶然ではなく、4Gおよび5Gネットワークが音声とデータのトラフィックを技術的に分離しているためだ。Focus Taiwanによると、緊急サービス、交通信号、ATMも、一般消費者向けモバイルデータ網とは構造的に分離された専用の固定回線または私設無線インフラで稼働しているため、影響を受けない。

台湾南部は演習の対象から完全に除外される。その理由は異例なほど率直だ。台北タイムズによると、NCCの温俊瑜秘書長は、南部の都市強靱性演習が台湾証券取引所の取引時間中である午前に予定されており、モバイルインターネットを低速化すると、スマートフォンを利用した株式取引を妨げる恐れがあると説明した。この例外措置は、リアルタイムの経済インフラがモバイルデータ通信にどれほど深く依存しているかを、今回の演習の中で最も明確に示しているのかもしれない。

■演習の背景にある海底ケーブル切断

今回の帯域制限は、仮想的な戦争だけを想定した訓練ではない。台湾はすでに、大規模な通信障害がどのようなものになるかを小規模ながら経験している。

Al Jazeeraが2025年3月に報じたところによると、2023年以降、台湾周辺では海底ケーブルへの破壊工作が疑われる事案が少なくとも11件記録されており、複数の事案で中国船籍または中国との関係が指摘される船舶が関与したとされる。

2023年2月には、台湾の馬祖列島に通信を提供する2本のケーブルが切断され、修理船の手配が進められる間、住民は50日以上にわたってインターネットを利用できなくなった。Just Securityによると、2025年1月には、香港企業が管理し、中国籍の乗組員が乗船していたタンザニア船籍の「Xingshun 39」が追跡システムを停止し、台北北方のTPEケーブル上で錨を引きずった。さらにその翌月には、「Hong Tai 58」が澎湖諸島と台湾を結ぶTPKM-3ケーブルを切断したと、Global Taiwan Instituteが報じている。

台湾では、15本の海底ケーブルが7カ所の陸揚局に接続されている。意図的な攻撃者が通常兵器を使用せずに台湾全域の通信を劣化させ得る、集中度が高く脆弱な構造である。

8月の帯域制限演習は、そのような通信劣化が起きた場合に何が生じるかを再現するためのものだ。市民はどのように連絡を取り、政府機関はどのように連携し、どのバックアップシステムが逼迫した状況でも実際に機能するのかを検証する。

台湾の安全保障担当高官はロイターに対し、「今回の演習では中央政府機関だけでなく、国民にも異なる通信手段を利用するための備えを強化してもらいたい」と語った。同高官は、作戦上の背景として「台湾の太平洋沿岸における中国海警局の活動の急増」を挙げた。代替手段には固定電話、固定回線インターネット、トランシーバーなど、モバイルデータ通信への依存が始まる以前からある技術も含まれる。

■通信制限を実現する仕組み――無線アクセス網のQoSポリシー

今回の演習で使われる技術的な仕組みを詳しく理解することには意味がある。それによって、演習で検証できることと、その限界の両方が明らかになるためだ。

4G LTEおよび5Gネットワークでは、すべてのデータ通信が階層化されたネットワーク構造を通過する。利用者の端末は、4GではeNodeB、5GではgNodeBと呼ばれる基地局に無線で接続し、基地局はコアネットワークに接続する。

コアネットワーク内では、4GのPCRF(Policy and Charging Rules Function)や、5GのPCF(Policy Control Function)と呼ばれる機能が、各加入者の通信セッションに許可する帯域幅を管理する。通信事業者は、速度制限に相当するQoS(Quality of Service)プロファイルをコアネットワークから基地局へ適用することで、帯域幅の上限を設定する。

NCCと演習に参加する通信事業者は、対象となる14の行政区域内で有効になっているすべての加入者セッションを対象に、QoSポリシーを設定する。この結果、PCRFなどのポリシー制御機能が各データベアラに大幅に低い保証ビットレートを割り当て、対象地域全体の通信速度を実質的に制限する。

音声通話が維持されるのには、明確な技術的理由がある。4Gおよび5GのIMS(IP Multimedia Subsystem)では、音声通話はGBR(Guaranteed Bit Rate)ベアラと呼ばれる専用の通信経路を使用する。4GではQoS Class Identifier(QCI)1に分類され、3GPP仕様上、最も優先度の高いクラスとなる。

この通信経路は、設計上、データ通信の帯域制限から保護されている。そのため、通信事業者や規制当局は音声通話に影響を与えず、データ通信用のベアラだけを制限できる。音声通話に回線交換フォールバック(CSFB)を使用する旧世代のネットワークでは、音声とデータはさらに明確に分離されている。

セルブロードキャストによる緊急警報は、まったく異なる仕組みで動作する。セルブロードキャストは通常のデータ通信経路を使用せず、4Gではユーザー向けデータ容量から独立して動作する制御用の同報チャネルを通じて送信される。

対象地域内にある対応端末は、データ帯域を消費することなく同時にセルブロードキャストメッセージを受信できる。このため、セルブロードキャストは世界各地で緊急警報に利用されている。米国のWireless Emergency Alerts、日本のJアラート、韓国の同様のシステム、欧州連合(EU)のEU-Alertも、データ網が混雑、障害、または意図的な速度制限の状態にあっても作動するという同じ理由から、この方式を採用している。

NCCが掲げる「災害時ローミングや通信の優先制御といった緊急措置」の再現という目標は、このネットワーク構造に直接対応している。実際の侵攻、地震、サイバー攻撃では、損傷した、または処理能力を超えたインフラ上で何百万人もの利用者が同時に連絡を取ろうとするため、モバイルネットワークの混雑が自然に発生する。

今回の演習は、事前に告知された管理可能な条件下で、そうした状態を人工的に再現する。一方、通信劣化が予告なく発生した場合に住民がどのように行動するかまでは検証できない。だが、それこそが市民社会の強靱性にとって、より難しい問題ともいえる。対応には別の演習が必要になる可能性がある。

■「漢光42号」で初めて民間・軍事演習を全面統合

帯域制限は、台湾が1984年から毎年実施している軍事演習の第42回に当たる「漢光42号」に組み込まれている。

Global Taiwan Instituteによる2025年の演習分析では、漢光演習は、中国による台湾侵攻への対応を想定した実弾演習やコンピューター上の兵棋演習など、従来型の軍事即応訓練として始まったとされる。USNI Proceedingsが2025年10月に報じたところによると、2025年の第41回演習は、10日間連続の実弾演習として過去最長となり、2万2000人を超える予備役が参加した。台本を完全に排した自由対抗方式のシナリオも初めて導入された。

今年の演習では、対象が軍部隊を超えて構造的に拡大する。都市強靱性演習は、軍事演習と並行して別々に実施されるのではなく、初めて漢光演習に全面的に統合される。

台北タイムズによると、強靱性演習の期間も1日から2日間に拡大した。初日は机上での戦争シナリオ演習、2日目はその計画を現場で実行する訓練に充てられる。民間人の避難、地下施設での医療活動、ドローンによる物資配送、負傷者の搬送、複数の交通手段を組み合わせた共同調整、自らのインフラが損傷した際に近隣自治体と資源を共有できるかを検証する県・市をまたぐ支援訓練などが行われる。

民間と軍の統合は、行政上の便宜ではなく、意図的な防衛ドクトリンである。頼清徳総統は「全社会防衛強靱性委員会」を設置し、政府機関、産業界、市民社会の代表者を集めた会合を四半期ごとに開催している。

外交問題評議会(CFR)が2026年4月にまとめた資料によると、同委員会は、民間人材の訓練、緊急物資、エネルギー安全保障、医療能力、そしてサイバー・通信の冗長性という5つの重点分野を定めている。帯域制限演習は、5番目の分野に明確に位置付けられる。

■民主主義国の先例が台湾以外にもたらす意味

NCCは、8月に実施する措置は「インターネット遮断ではない」と強調している。技術的には、この区別には根拠がある。演習は数週間前から告知され、30分間に限定され、対象はデータ通信だけであり、音声通話と緊急サービスは維持される。また、民主的な政府が、公表された民間防衛上の目的のために透明性を確保して実施する。

ただし、政府によるネットワーク干渉を分類する国際的な枠組みとして広く引用されている人権団体Access Nowの分類では、継続時間や政府が掲げる目的にかかわらず、意図的な速度低下もインターネット遮断の一形態に含まれる。この枠組みに従えば、台湾はインターネット遮断を実施することになる。

台湾政府が示す「全面的な切断ではなく、管理された通信劣化」という区別は現実的かつ重要である。しかし、現在の国際的な人権の枠組みでは、正式に認められた分類としては存在していない。

この問題が重要なのは、台湾の演習が不当だからではない。30分間に限定され、事前に告知され、音声通話を維持した民間防衛上の演習は、ほぼどのような比例原則に照らしても正当化できるだろう。重要なのは、台湾が一つのひな型を作ろうとしている点である。

台北タイムズによると、当局者はすでに、日本、韓国、シンガポール、EU加盟国でも通信障害を想定した類似の演習が行われていると説明している。「民主的に管理された通信劣化」という考え方が自由民主主義国の慣行として定着すれば、動機の透明性が低い政府も、同じ言葉を自らの行為を正当化するために利用できるようになる。

これは演習に反対する論拠ではない。事前に告知された民間防衛目的の帯域制限と、権威主義的な情報抑圧の手段との間に、より明確な国際規範上の区別を設けるべきだという論拠である。現時点では、そのような正式な区別は存在していない。

台湾国防部は、8月の結果を評価したうえで、演習を台湾全域に拡大するかどうかを決めるとしている。市民の通信準備にある不備を明らかにするうえで演習が有効だと判断されれば、将来の演習で台湾全域に導入される可能性がある。

■8月10日までに住民と企業が準備すべきこと

台湾北部または中部にいる人や、これらの地域でモバイル通信を利用する取引先との関係を持つ企業が行うべき準備は明確である。

8月10日までにオフライン地図をダウンロードしておく必要がある。GoogleマップやAppleマップなどのナビゲーションアプリでは、地図を端末に保存してオフラインで利用できる。演習時間中は、4Gまたは5G経由でリアルタイムの地図データを利用できなくなる。

8月10日の現地時間14時30分から15時に中部で、8月13日の同じ時間帯に北部で予定されているビデオ会議や、リアルタイムのデータ通信を必要とする取引は、固定回線またはWi-Fi接続に切り替えるか、時間を変更すべきだ。音声通話とSMSは通常どおり利用できる。

Focus Taiwanは、モバイル回線だけを利用するオンライン注文、身分証明書のアップロード、リアルタイム取引などが影響を受ける可能性があるとしている。

演習時間中も音声通話とSMSは完全に利用できるため、契約者への返金や料金の減額は行われない。NCCは演習前と演習中に、セルブロードキャストによる警報、テレビニュースの字幕、ラジオ放送を通じて住民に通知する。

株式取引を行う場合、証券市場への配慮による対象除外が適用されるのは、演習そのものが行われない台湾南部だけである。北部または中部で4Gや5Gを利用して株式を取引する住民は、演習時間中、固定回線またはWi-Fiを使用する必要がある。

■よくある質問

●台湾の8月の演習は、実際にはインターネット遮断に当たりますか?

台湾政府は遮断ではないと説明しています。データ通信は完全には切断されず、音声通話は継続し、緊急サービスも全面的に機能するためです。

一方、国際的に参照されているAccess Nowの分類では、データ通信に依存するサービスが実質的にほぼ利用不能になることから、意図的な速度低下も遮断の一形態とされています。実質的な違いは、規範と手続きにあります。台湾の演習は事前に告知され、時間が限定され、民主的な手続きの下で承認され、音声通話も維持されます。

これが政府によるネットワーク介入の意味のある別カテゴリーに当たるのか、それとも同じ政府権限をより透明な形で行使しているにすぎないのかについて、国際的な人権の枠組みではまだ正式な結論が出ていません。

●台湾北部・中部とは異なり、南部が帯域制限の対象外なのはなぜですか?

南部の都市強靱性演習が、台湾証券取引所で実際の取引が行われている午前中に予定されているためです。この時間帯にモバイルデータ通信を制限すると、スマートフォンを利用したリアルタイムの株式取引を妨げる恐れがあります。

NCCの温俊瑜秘書長が、この例外措置の理由を明確に説明しています。この判断は、金融市場がモバイル通信に依存する状況では、政府が事前に告知した一時的な帯域制限であっても、測定可能な経済的リスクを伴うことを示しています。

●通信制限中、音声通話、緊急サービス、セルブロードキャスト警報はどうなりますか?

いずれも通常どおり機能します。それぞれに技術的な理由があります。

4Gおよび5Gネットワークの音声通話は、最も高いQoS優先度に分類される保護された通信経路を使用します。4GではQCI 1に相当し、構造的にデータ通信の速度制限から保護されています。

緊急サービスは、一般消費者向けモバイルデータ通信に依存しない無線指令網などを使用します。演習中に住民へ通知するセルブロードキャストも、通常の利用者データ通信から独立した制御用の同報チャネルで動作します。これは、米国のWireless Emergency Alertsや日本のJアラートを支えるものと同種の技術です。

●台湾の演習は、他国政府が「強靱性の検証」を名目に民間のインターネット通信を制限する先例になりますか?

今回の演習が最も鋭く提起するのが、この問題です。Freedom Houseの2024年の評価では、台湾はアジアでもインターネットの自由度が高い地域の一つとされています。今回の演習も、十分な事前告知と民主的な承認の下で、透明性を確保して実施されます。

しかし、当局者は日本、韓国、シンガポール、EU加盟国でも類似の演習が行われていると説明しています。「民主的に管理された通信劣化」という枠組みが自由民主主義国の間で一般化すれば、権威主義的な政府が同じ表現を自らの行為の正当化に利用できるようになります。

事前に告知された民間防衛目的の帯域制限と、政治的動機による情報抑圧の手段とを規範上区別する国際基準は、現在のところ存在していません。台湾の演習によって、その区別を確立する必要性は一層高まっています。

元記事: Taiwan Cuts Mobile Data to Near-Zero for 16 Million in First-Ever War-Readiness Drill

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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