YouTubeが600万ドルの「SNS中毒」評決を不服として控訴、2件目の訴訟では和解し陪審審理を回避

2026年7月17日 14:46

印刷

記事提供元:Tech Times

YouTubeは、プラットフォームを6歳から強迫的に利用した若い女性が被った精神的健康上の害について、同社にも一部責任があると認定した600万ドル(約9億7200万円)の陪審評決を不服とし、ロサンゼルス郡上級裁判所に控訴通知書を提出した。しかし、その3週間前には、次に予定されていた訴訟で原告と非公開の和解に達し、2度目の陪審審理を回避していた。控訴によって先例となり得る判断を争う一方、新たな評決が積み重なるのを避けるという、集団不法行為訴訟でこれまでにも見られた戦略である。

■YouTubeの「控訴」と「和解」が示す二面的な戦略

YouTubeは2026年7月13日、ロサンゼルス郡上級裁判所に控訴通知書を提出し、6歳から同プラットフォームを強迫的に利用したことで精神的健康上の害を受けた若い女性について、同社にも一部責任があると認定した600万ドル(約9億7200万円、1ドル=162円換算)の陪審評決に正式に異議を申し立てた。しかし、この提出は、YouTubeが次に審理される予定だった訴訟で非公開の和解に達し、2度目の陪審審理を回避してから3週間後のことだった。

YouTubeを傘下に持つGoogleは、この評決に同意せず、プラットフォームは責任を持って設計されたとの立場を維持している。しかし、控訴する一方で別の訴訟では和解するという二つの動きは、集団不法行為訴訟で法廷弁護士が過去にも目にしてきた戦略を示している。すなわち、控訴裁判所で先例となり得る判断を争う一方、被告を包括的な解決へと向かわせる追加の判断材料、つまり新たな評決が積み重なるのを防ぐ戦略である。

Metaもその1週間前の2026年7月8日に控訴通知書を提出している。両社による一連の提出は、2026年3月25日に下された評決を、どちらの会社も争わずに受け入れるつもりがないことを示す、これまでで最も明確なシグナルとなった。「K.G.M.対Meta PlatformsおよびYouTube LLC」の評決では、600万ドルの賠償額のうちMetaに70%、YouTubeに残る30%の責任が割り当てられた。陪審員には、ユーザーが投稿したコンテンツについて両社に責任を負わせるのではなく、両社が自ら設計した機能が法的な害を構成するかどうかを評価するよう明確に指示されていた。

■2件目の「R.K.C.訴訟」における非公開和解の背景

YouTubeの弁護士がケイリーの訴訟で控訴通知書を提出する3週間前の2026年6月23日、Googleは、同年7月27日に始まる予定だった2件目の代表訴訟(ベルウェザー裁判)の原告、フロリダ州の15歳の少年R.K.C.とYouTubeが非公開の和解に達したことを認めた。R.K.C.は8歳からソーシャルメディアを利用しており、全般性不安障害と大うつ病性障害の診断を受けている。本人は、これらの症状がプラットフォームの強迫的な利用によるものだとしている。

この裁判は2026年7月27日に予定どおり始まるが、R.K.C.と和解しなかったMetaとSnapに対する訴訟として進められる。YouTubeは2度目の評決が下されるリスクを負う代わりに、陪審法廷から離脱したことになる。

原告側弁護士のエミリー・ジェフコット氏は、YouTubeとR.K.C.の和解について厳しい反応を示した。同氏は共同代理人のジョン・モーガン氏と連名の声明で、「陪審員と向き合う前にこの訴訟を解決するというYouTubeの決定は、それ自体がすべてを物語っている。最初の代表訴訟で陪審員が目にしたように、これらソーシャルメディア企業の経営陣は、自動再生や無限スクロールといった悪質な機能によって子どもを早い時期から引きつけ、利用を最大化するための戦略を何年にもわたって練ってきた。その目的はすべて、若者のメンタルヘルスを犠牲にして利益を増やすことにあった」と述べた。

■自動再生と無限スクロール:コンテンツではなく「設計」が法的リスクになる理由

一連の訴訟における法的な新機軸は、「コンテンツ」と「設計」を明確に区別する点にある。ロサンゼルス上級裁判所のキャロリン・B・クール判事が公判開始前に示し、陪審員が5週間にわたる審理で適用した区別だ。この設計欠陥に関する法理は、ユーザーが投稿するものと、プラットフォーム企業が設計するものとを切り分ける。

1996年制定の通信品位法(CDA)第230条は、第三者であるユーザーが投稿したコンテンツについて、オンラインプラットフォームに広範な免責を認めている。この法律は、プラットフォームがユーザーの発言の発行者として扱われることを防ぐために制定された。一方、この法律が想定していなかったのは、企業自身の設計上の選択について責任を負うかという問題だ。ソーシャルメディア中毒を巡る訴訟は、まさにこの点について裁判所に判断を迫っている。

問題となっているのは、現在の動画が終わるとユーザーが操作しなくても次の動画を開始する自動再生機能、ページの境界という自然な中断点をなくす無限スクロール、特定のユーザーが過去にどのコンテンツを最も長く視聴したかに基づいて次のコンテンツを選ぶパーソナライズされた推奨アルゴリズムなどである。

これらの仕組みはいずれもユーザーが生成したものではない。10歳の子どもがYouTubeを開いても、自動再生のキューや、そこに表示する動画を決めるランキングシステムを設計しているわけではない。これが、原告側の弁護士が陪審員に主張して認められた重要な区別であり、MetaとYouTubeが現在、カリフォルニア州の控訴裁判所に覆すよう求めている論点である。

この「設計とコンテンツ」の区別は、すでにほかの裁判所でも支持を得つつある。2026年4月10日、マサチューセッツ州最高司法裁判所は、通信品位法第230条はMetaに対する依存性のある設計を巡る請求を妨げるものではないとの判断を下した。これにより、カリフォルニア州の第一審裁判所による判断に加え、州最高裁判所レベルの判断も示されたことになる。カリフォルニア州の中間控訴裁判所がK.G.M.評決の論理を支持すれば、設計欠陥理論は初めての主要な控訴審の試練を乗り越えることになる。

■YouTubeは「SNS」なのか? 裁判所が迫られる定義の判断

裁判を通じてYouTubeが展開した最も特徴的な抗弁であり、まだ提出されていない控訴趣意書でも主張するとみられるのが、サービスの定義に関する議論である。YouTubeは動画共有・ストリーミングサービスであってソーシャルメディアではなく、Instagramのようなソーシャルグラフ型プラットフォームを対象に構築された責任の枠組みは適用されない、という主張だ。

この主張にまったく論理がないわけではない。YouTubeの主要なインターフェースは非対称的で、大半のユーザーは制作者ではなく視聴者である。また、フォロワーの関係やユーザー同士の交流が利用体験の中心となるInstagramやTikTokのような、中核的なソーシャルグラフ構造を欠いている。

しかし、法律上、そのような区別はほとんど確立されていない。「ソーシャルメディア」には定まった法的定義がなく、訴訟の中心となっている自動再生やアルゴリズムによる推奨システムは、InstagramやTikTokが採用するものと構造的に似た形でYouTubeにも存在する。

控訴裁判所がYouTubeのプラットフォーム分類に関する主張を受け入れるかどうかは、この訴訟だけでなく、ストリーミングを中心とするサービスに対する将来の設計責任請求がどう分類されるかにも大きな影響を与え得る。裁判所がYouTubeはInstagramとはカテゴリー上異なると認めれば、一連の訴訟が及ぶ範囲は狭まる。一方、プラットフォームの種類ではなく、自動再生や推奨の仕組みを分析対象と判断すれば、その範囲は広がることになる。

■2,900件以上の訴訟に影響を与える「代表訴訟」の仕組み

裁判資料ではK.G.M.、証言ではケイリーと呼ばれた原告の訴訟は、同種の訴訟として初めての代表訴訟だった。これは、統合して進められている多数の訴訟から1件を選んで早期に審理し、基礎となる法理に陪審員がどう反応するかを試す仕組みである。

2026年7月中旬時点で、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のイヴォンヌ・ゴンザレス・ロジャース判事のもとで進められている連邦広域係属訴訟(MDL-3047)には、約2,900件のソーシャルメディア中毒に関する個別請求が係属している。訴訟は急速に増加しており、事件記録上の件数は2025年だけで2倍以上になった。カリフォルニア州で統合して進められている州訴訟(JCCP 5255)でも、ケイリーの裁判を担当したクール判事のもとに1,000件を超える個別訴訟が係属している。

代表訴訟という仕組みの目的そのものが、今回の控訴を重要なものにしている。評決が控訴審でも維持されれば、残るすべての訴訟の予想価値が大幅に上昇し、MetaとGoogleに対する和解圧力が強まる。両社が個々の訴訟を争い続けるのではなく、包括的な解決へ向かう可能性もある。反対に評決が覆されれば、プラットフォーム企業は、一連の訴訟の核心にある設計責任理論を崩すための法的な道筋を得ることになる。

41を超える州の司法長官が、関連する訴訟を提起するか、訴訟に参加している。約800の学区も、依存性を生じさせるプラットフォーム設計によって学区の資源が奪われ、若者のメンタルヘルス危機が悪化したとして独自に提訴した。2026年7月7日には、4州がMetaだけを対象として、法令に基づく制裁金を合計で最大1兆4000億ドル(約226兆8000億円)求めていることを明らかにした。

■Metaに積み重なる評決と巨額の法的リスク

K.G.M.訴訟の評決は、法的に孤立した出来事ではない。ロサンゼルスの陪審員が評決を下したのと同じ週、ニューメキシコ州サンタフェの別の陪審は、Metaが子どもにとってのプラットフォームの安全性についてユーザーを誤解させたとされる行為により、同州の不公正取引行為法に違反したと認定した。そのうえで、州法上認められる上限額となる3億7500万ドル(約607億5000万円)の民事制裁金の支払いを命じた。

ニューメキシコ州のラウル・トレス司法長官は、同氏の事務所がさらに約37億ドル(約5994億円)の是正費用と、Metaのプラットフォームに構造的な変更を求める差し止めによる救済を請求する方針だと述べている。

Metaはこの評決についても控訴した。また、YouTubeがK.G.M.訴訟で控訴通知書を提出する4日前の2026年7月10日、欧州委員会はEUデジタルサービス法に基づく予備的な見解を示した。それによると、InstagramとFacebookにおける無限スクロール、自動再生、過度にパーソナライズされた推奨機能の使用は、EU法に違反する依存性のある設計に該当するという。この見解が確定すれば、最大120億ドル(約1兆9440億円)の制裁金が科される可能性がある。

ケンタッキー州ブレシット郡学区の訴訟は、2026年6月15日に始まる初の連邦MDL代表訴訟となる予定だった。しかしYouTubeは、SnapおよびTikTokとともに同年5月にこの訴訟でも和解し、Metaだけが被告として残っていた。Metaも公判前夜に和解し、4社による和解額は合計2700万ドル(約43億7400万円)、うちMetaの負担額は約900万ドル(約14億5800万円)だった。

■Googleが語ったこと、語らなかったこと

Googleの広報担当者ジョセ・カスタニェーダ氏は、YouTubeの控訴について公表した声明で、今回の提出を「この訴訟を前に進めるための標準的な申し立て」と表現した。この説明は、控訴を実質的な法的戦略ではなく、手続き上の形式として位置付けるものだ。今後数カ月のうちに提出される控訴趣意書で具体的な法的主張が示される前の段階では、控訴通知書についてそう説明することにも一定の合理性がある。

一方、カスタニェーダ氏が触れず、YouTubeも公には説明していないのが、R.K.C.との和解である。600万ドルの評決を控訴審まで争う会社が、なぜ2度目の陪審員の前で自らを弁護するのではなく、金額を公表しないまま和解して訴訟から離脱したのかは明らかにされていない。

5週間にわたるケイリーの裁判と、その後に退けられた再審請求まで原告側の弁護団を率いたマーク・ラニエ弁護士は、Metaの控訴後、ケイリー側は控訴裁判所が「この訴訟に引き続き法を慎重に適用し、第一審裁判所の評決を支持する」ことを期待していると述べた。

YouTubeとTikTokが和解し、MetaとSnapに対する訴訟として進むR.K.C.の裁判は、2026年7月27日にロサンゼルスで始まる。原告は現在15歳で、2023年に初めて不安障害とうつ病と診断され、自殺念慮のために治療を受けてきた。原告側の弁護士は、Instagramのフィルターや美容関連コンテンツではなく、自動再生と無限スクロールが、原告の経験に最も大きな影響を与えた設計機能だと主張している。マーク・ザッカーバーグ氏と、MetaでInstagramを統括するアダム・モセリ氏は再び証言するとみられている。

YouTubeの控訴は、同社がソーシャルメディアとして誤って分類されたという原則的な主張なのか、それとも費用負担が増す和解環境に対抗するための戦術的な取り組みなのか。おそらく答えは、その両方である。

■注目ポイントQ&A

●なぜYouTubeはこの訴訟で「自社はSNS(ソーシャルメディア)ではない」と主張しているのですか?

YouTubeの弁護士は5週間の審理を通じて、同サービスは主に動画共有・ストリーミングサービスであり、フォロワー関係やユーザー同士の交流が中心となるInstagramやTikTokのようなソーシャルグラフ型プラットフォームとは構造的に異なると主張しました。この訴訟における依存性や設計上の害を巡る理論は、主としてソーシャルプラットフォームを念頭に構築されています。控訴裁判所がYouTubeによる分類を受け入れれば、この訴訟や将来の設計責任訴訟において、YouTubeが責任を問われる範囲が狭まる可能性があります。ただし、問題となっている自動再生やパーソナライズされた推奨アルゴリズムは、プラットフォームをどう分類するかにかかわらず、YouTubeでもInstagramと構造的に似た形で機能しているとの指摘があります。

●YouTubeの控訴は具体的に何を争うもので、決着までにどのくらいの時間がかかりますか?

YouTubeとMetaが提出したのは、控訴する意思を正式に表明する控訴通知書であり、具体的な法的主張そのものではありません。実際の主張は、今後数カ月のうちに提出される控訴趣意書で示されます。その後、カリフォルニア州の中間控訴裁判所で審理され、州最高裁判所が審理する可能性もあります。この手続きには数年を要する可能性があります。その間にも、2026年7月27日に始まるR.K.C.の代表訴訟や、同年8月に予定されている州司法長官に関する連邦訴訟によって、基礎となる請求に陪審員がどう反応するかを示す新たな判断材料が生まれます。控訴の結果にかかわらず、これらの材料は係属中の数千件の訴訟に関する和解交渉に影響します。

●もしYouTubeが控訴審で勝訴した場合、他に係属している約2,900件の訴訟はどうなりますか?

YouTubeとMetaが控訴審で勝訴すれば、両社は係属中の各訴訟の核心にある設計欠陥理論を崩すための法的な道筋を得ることになります。これにより和解圧力が大幅に弱まり、通信品位法第230条が依存性のある設計を巡る請求に対して、より広範な防御手段として機能する可能性があります。反対に、両社が敗訴するか、評決の論理が維持されれば、残る各訴訟の予想価値が上昇し、包括的な和解に向けた圧力が強まります。また、自動再生や無限スクロールがカリフォルニア州法上、法的責任を問える設計上の欠陥となり得ることが、事実上確立されます。連邦MDLの2,900人を超える原告、カリフォルニア州裁判所の1,000件を超える訴訟、学区、州司法長官はいずれも、同じ法的論点の行方を注視しています。

●通信品位法第230条とは何ですか? なぜこの訴訟で重要視されているのですか?

1996年制定の米国通信品位法(CDA)第230条は、ユーザーが投稿したコンテンツについて、オンラインプラットフォームに法的責任を負わせないための免責規定です。ソーシャルメディア企業は訴訟の大半を通じて、設計上の選択もユーザーのコンテンツを表示・推奨する方法に影響するため、この規定によって保護されると主張してきました。

これに対し、原告側は、自動再生、無限スクロール、パーソナライズされた推奨アルゴリズムはユーザー生成コンテンツではなく、企業が作った製品機能だと裁判所、そして陪審員を説得してきました。ユーザーがYouTubeの推奨キューを設計しているわけではありません。この区別は、陪審評決、再審請求の却下、2026年4月のマサチューセッツ州最高司法裁判所の判断を経ても維持されていますが、カリフォルニア州の控訴審ではまだ審査されていません。

元記事: YouTube Appeals Addiction Verdict but Already Settled Second Case to Dodge Jury

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事