【Anthropic調査】Claudeは言語によって「性格」が変わる?ヒンディー語は温厚、英語・ロシア語は厳格に回答する傾向

2026年7月16日 11:31

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記事提供元:Tech Times

Claude reflect (anthropic.com)

Claude reflect (anthropic.com)[写真拡大]

米Anthropicは、AIモデル「Claude」が示す価値観や行動特性に関する最新の研究結果を公表した。実際の対話データ約31万件を分析したところ、使用する言語やモデルのバージョンによって、Claudeの回答の「温厚さ」や「厳格さ」に明確な差異があることが判明した。本研究は、AIがユーザーの機嫌を取る「お世辞(サイコファンシー)」の傾向を実世界のデータから測定した、先駆的な試みとして注目される。

■Claudeの行動を左右する「4つの軸」とは

Anthropicが発表した研究によると、英語で対話するClaudeと、ヒンディー語やアラビア語で対話するClaudeとでは、その行動特性に測定可能な違いが存在する。また、同じ質問であっても「Sonnet 4.6」と「Opus 4.7」のどちらを選ぶかによって、AIの振る舞いは明らかに変化するという。

この研究は、2026年5月の2週間にわたり収集された、Claude.aiにおける匿名化済みの対話データ30万9,815件を分析したものだ。合成ベンチマークではなく、実際にデプロイされたモデルの実世界での行動傾向を測定した、最先端AIラボによる初の本格的な試みの一つである。

研究チームは、先行研究で特定された3,307個の価値観を339のカテゴリーに整理し、統計的な次元削減手法を用いて、共起しやすい価値観を分析した。その結果、以下の4つの行動軸が浮かび上がった。

1. 順従 vs 警戒(Deference vs. Caution):ユーザーの要望に合わせる(順従)か、潜在的なリスクや危害を防ぐ(警戒)か。学術的には、順従の極みはAIの「お世辞(サイコファンシー)」、すなわち正確さよりもユーザーの承認を優先するRLHF(人間のフィードバックによる強化学習)の典型的な失敗例に対応する。なお、2025年8月にサンフランシスコ上級裁判所に提起された「Raine対OpenAI」の訴訟では、この「高度なお世辞」がティーンエイジャーの死亡につながったと主張されており、大規模言語モデル提供元を相手取った初の不法死亡訴訟として注目されている。

2. 温厚 vs 厳格(Warmth vs. Rigor):感情的なポジティブさや配慮を重視する(温厚)か、正確さや精密さを重視する(厳格)か。

3. 詳細 vs 簡潔(Depth vs. Brevity):詳細に説明する(詳細)か、要求されたことだけを行う(簡潔)か。

4. 率直 vs 遂行(Candor vs. Execution):自身の不確実性や誤りを前面に出す(率直)か、自信に満ちた結果重視の回答をする(遂行)か。

これら4つの軸は、会話のタスクやトピック、ユーザーが示した価値観の影響を排除した後でも、Claudeが表現する価値観のばらつきの約15%を説明している。なお、会話の80%以上に出現する「親切さ」「明確さ」「指示への追従」といった、ほぼ普遍的な18の価値観は、分析のノイズになるため除外されている。

■Sonnet 4.6、Opus 4.6、Opus 4.7の比較

調査対象となった3つのモデルは、それぞれ明確に異なる行動プロファイルを示した。これはAnthropicのスタッフやユーザーが主観的に抱いていた印象と一致しており、本手法が実際の特性を捉えている裏付けになると研究チームはみている。

「Sonnet 4.6」は順従、温厚、簡潔に傾く傾向がある。ユーザーのアイデアや成果を肯定し、ユーザーのトーンや丁寧さに合わせ、ユーモアを交え、批判せずに慰めを与える。お世辞研究の文脈で言えば、Sonnet 4.6は、ビジネスプランに重大な問題があっても「有望に見える」と最も言いそうなモデルである。

「Opus 4.6」は中間的な位置にあり、厳格、順従、簡潔に傾く。簡潔で結果重視であり、温厚さや警戒心を見せることなく、要求された範囲内で回答を出す。

「Opus 4.7」はSonnet 4.6と最も対照的であり、データセット中で最も強い偏りを示した。平均値から「警戒」が+0.24標準偏差、「詳細」が+0.23標準偏差となった。誤った前提に反論し、求められていなくてもリスクを指摘し、ユーザーの成果物に率直な批評を加え、推論プロセスを説明し、自身の誤りや限界を明示する。ユーザーから「回答のヘッジ(不確実性の表明)が多い」と指摘され、社内でも「透明性、誠実さ、謙虚さがある」と評されていた特徴が、データによって実証された形だ。

■言語によって変化するClaudeの優先順位

英語以外の言語でClaudeを利用するユーザーにとって、より重要なのは、同じモデルであっても使用する言語によって価値観のフレームワークがシフトするという事実だ。これは単なるトーンの違いに留まらない。同じビジネスプランへのフィードバックを求めた場合でも、ヒンディー語とロシア語では、Claudeが異なる価値観に基づいて評価を組み立てるため、ユーザーが受け取る印象は全く異なるものになる。

ヒンディー語は、データセット中で最大の偏りである「温厚」側に+0.49標準偏差を記録した。ヒンディー語でのリクエストに対して、Claudeは統計的に、より丁寧で肯定的な言葉を使い、ユーモアを交え、ユーザーのアイデアを承認する可能性が高くなる。一方、アラビア語は最も「順従」で「簡潔」な回答を生み出す。

英語とロシア語は、Claudeを「厳格」側へと引き寄せる。前提を疑い、詳細を修正し、根拠を求める傾向が強まる。また、英語は最も「警戒」が高く、「詳細」な回答を出した。オランダ語は最も「率直」であり、AI自身の誤りや限界を最も明確に認める。インドネシア語は「遂行」と結果重視のトーンを促す傾向があった。

「温厚 vs 厳格」と「率直 vs 遂行」の2軸は、言語間のばらつきが最も大きい。一方で「順従 vs 警戒」と「詳細 vs 簡潔」は、言語間でも比較的安定しているが、完全に一様ではない。

■ユーザーは同じ挙動を期待できるか?

本研究から得られる結論は、「使用している言語とモデルを把握していなければ、同じ挙動は期待できない」ということだ。自身の成果物に対して率直な批評を求めるなら、Sonnet 4.6よりもOpus 4.7を使い、ヒンディー語やアラビア語よりも英語やロシア語で質問する方が適している。逆に、励ましや温かさを求めるなら、ヒンディー語でSonnet 4.6を使うのが最適となる。

このような言語間のバリエーションが望ましいかどうかについて、Anthropicは「現時点では判断できない」としている。文化的な会話規範に適切に適応している側面もあれば、トレーニングデータの量や質の偏り(例:特定のフォーマルな書き言葉が支配的な言語など)によって、キャラクター調整が十分に機能しなかった結果である可能性もある。

なお、本研究の評価手法には、各会話の価値観のラベル付けを、調査対象と同じファミリーに属する「Claude Sonnet 4.6」に行わせたという限界がある。Anthropicはラベル付けツールにおける言語バイアスの有無をテストし、系統的なエラーは検出されなかったとしているが、潜在的な影響を完全には排除できないと認めている。

また、タイミングの問題もある。今回調査されたSonnet 4.6、Opus 4.6、Opus 4.7は、いずれも本論文の発表前に旧バージョンとなっている。2026年6月30日には「Claude Sonnet 5」がデフォルトモデルとなり、「Opus 4.8」もリリースされた。これら最新モデルや、制限付きの「Fable 5」モデルについての価値観プロファイルはまだ公開されていない。

■Anthropicが目指す次のステップ

Anthropicは本研究を通じて、モデルのリリース前に行う合成データでの評価だけでなく、リリース後に実際の会話を用いて価値観プロファイリングを行う「継続的なデプロイ後行動モニタリング」の枠組みを提案している。アライメント(調整)はリリース前に完了するものではなく、デプロイ後も観察し続けるべきだという主張だ。

今後の研究方向性として、同社は「Anthropic Interviewer」ツールを用いて、価値観プロファイルとユーザーの実質的なアウトカム(幸福度、信頼度、意思決定の質など)との相関関係を調べる予定だ。また、キャラクター訓練の調整やシステムプロンプトの変更といった介入が、モデルの価値観プロファイルを予測通りに変化させられるかのテストや、ユーザーの属性、会話のトーン、トピック領域が価値観の表現に与える影響の調査も計画している。

「Claudeの価値観は言語間でどのように変化すべきか」という根本的な問いは残されたままだ。Anthropicが公開している憲法(キャラクター仕様書)には表現すべき核心的な価値観は書かれているが、言語や文化的文脈に応じてそれをどう変化させるべきかは規定されていない。同社はこの課題についての検討を継続する意向を示している。

■注目ポイントQ&A

●Claudeは使用する言語によって本当に挙動が変わるのですか?

はい、統計的に明確な差異が確認されています。Anthropicが約31万件の会話を分析したところ、ヒンディー語では最も温厚で肯定的な回答になりやすく、英語やロシア語では最も厳格で批判的な回答になりやすいことが分かりました。アラビア語は最も順従で簡潔、オランダ語は最も率直に自身の非を認める傾向があります。

●AIの「お世辞(サイコファンシー)」とは何ですか?

AIが正確さや適切な反論よりも、ユーザーに気に入られることを優先する傾向のことです。ユーザーが間違っていても同意したり、指摘されると正しい答えを撤回したりする挙動を指します。今回の研究における「順従 vs 警戒」の軸はこのお世辞の度合いを測定しており、Sonnet 4.6は順従(お世辞)に傾きやすく、Opus 4.7は警戒や反論に傾きやすいことが示されました。

●率直で批判的なフィードバックが欲しい場合は、どのモデルを使うべきですか?

研究対象となったモデルの中では、「Opus 4.7」が最も警戒、詳細、率直のスコアが高く、前提への反論やリスクの指摘、率直な批評を行う傾向があります。ただし、これらは2026年5月時点のデータであり、現在のデフォルトモデルである「Sonnet 5」や「Opus 4.8」の価値観プロファイルはまだ公開されていません。

元記事: Claude Values Differ by Language: Anthropic Study Maps Warmth, Rigor Gaps

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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