仏競争当局、メタに15日以内のデータ開示命令 EU著作権判決を背景に強硬姿勢

2026年7月12日 15:21

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記事提供元:Tech Times

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フランスの競争管理当局は、米メタ・プラットフォームズに対し、国内の主要な報道機関グループ2団体との交渉を再開し、著作権料の算定に必要な財務データを15日以内に開示するよう命じる決定を下した。この命令は、1,100以上のフランスのニュース媒体に影響を与える。2026年5月に欧州司法裁判所(CJEU)が下した画期的な判決を背景に、当局はメタに対して強硬な姿勢を示している。

■フランス競争当局による命令の具体的内容

フランスの競争管理当局(Autorité de la concurrence)は、メタに対し、報道機関や通信社を代表する2つの業界団体と誠実に交渉を行うよう命じた。対象となるのは、ル・モンドやレゼコーなど800以上の媒体を代表する「DVP」と、約300の全国紙を代表する「APIG」である。メタには、これらの団体が適切な対価を算出するために必要な財務データを引き渡すための15日間の猶予が与えられた。

当局はこの命令を暫定措置と位置づけており、最終的な支払額の特定は避けている。暫定的な料金を一方的に課すことは、再開を目指す交渉プロセス自体を歪める可能性があると判断したためである。一方で当局は、これまでのメタの行為が「市場における支配的地位の乱用」にあたる重大な懸念があるとの見解を示した。

特に問題視されたのは2つの行為である。1つ目は、メタが支払額を可能な限り低く抑える算定方法を採用し、報道機関側がその妥当性を検証するための財務データへのアクセスを拒否したこと。2つ目は、交渉の対象からInstagramやThreadsを除外し、Facebook上で共有されたコンテンツのみに限定したことである。当局は、この除外行為がフランスの著作隣接権の枠組みを弱体化させるものであり、それ自体が乱用にあたる可能性があると指摘した。

ロイター通信が伝えたメタの声明によると、同社は当局の結論には同意しないものの、プロセスへの関与は継続する意向を示している。同社は、当局の決定が公平な合意に向けた交渉の進展に役立つことを期待すると述べた。

■1,100以上の報道機関が直面した「1年間の未払い」

メタはフランスの著作隣接権(droits voisins)のルールに準拠するため、2021年にAPIGと年間2,000万ユーロ(約34億円、1ユーロ=170円換算)以上の契約を締結した。また、2022年にはDVPとも同様の契約を結んでいる。フランスは、EUの2019年デジタル単一市場著作権指令を国内法にいち早く取り入れた国の一つである。

しかし、DVPとの契約は2024年12月に、APIGとの契約は2025年1月にそれぞれ満了し、更新交渉は行き詰まった。最初の契約満了から10か月以上が経過した2025年10月、APIGと複数のメディア団体は、メタが公正な対価の交渉を拒否しているとして、支配的地位の乱用で競争当局に正式に提訴した。報道機関側は、メタが提示した更新条件は当初の契約から「大幅かつ不当に」減額されたものだったと主張している。

契約満了以降、DVPおよびAPIGの加盟報道機関はメタから一切の支払いを受け取っていない。しかし、当局によると、その期間中も報道コンテンツはメタのサービス上で配信され続けていたという。

競争当局が競争法(独占禁止法)を適用した意味は大きい。この問題を単なる商業紛争ではなく、支配的地位の乱用として扱ったことで、巨額の制裁金が科される法的領域へと移行した。フランスでは前例がある。2024年3月、グーグルが著作隣接権の交渉合意に違反したとして、2億5,000万ユーロ(約425億円、1ユーロ=170円換算)の制裁金を科された。この額は、メタが今後直面し得るリスクの基準となっている。

■形勢を一変させたEU司法裁判所の判決

2026年5月12日、欧州司法裁判所(CJEU)の大法廷は、イタリアにおける著作隣接権の執行を巡る「メタ対AGCOM」の裁判で、メタ側の主張を全面的に退ける判決を下した。

この判決は、EU加盟国が国内法を整備する際、著作権指令第15条が定める基準を大幅に超える規制を設けることができると定めている。これには、交渉の義務付け、公正な対価の算出に必要な全データの開示要求、交渉中のニュース表示制限の禁止、合意に至らない場合に規制当局が介入して対価を決定する権限などが含まれる。

フランスの紛争において最も重要なのは、情報非対称性に関する裁判所の見解である。CJEUは、報道コンテンツの価値を評価するために必要なデータ(オンライン利用から得られる、または得られると期待される収益データ)をプラットフォーム側のみが独占していると明記した。報道機関は自力でこのデータを入手できないため、構造的に弱い立場に置かれている。そのため、裁判所はプラットフォームへのデータ開示義務付けについて、営業の自由に対する正当かつ比例的な制限であると判断した。

この判断が、フランス競争当局による15日以内のデータ開示命令の直接的な法的根拠となった。当局はメタに特定の支払額を受け入れるよう求めているのではなく、新たに確認されたEUの法原則に基づき、メタが一方的に交渉条件を決めることを可能にしていた「情報のブラックアウト」を終わらせようとしているのである。

■メタのニュース離れ戦略と矛盾する実態

メタの交渉態度は、同社が進めるニュースコンテンツからの戦略的撤退と深く結びついている。同社は2023年12月にフランス、ドイツ、英国で「Facebook News」タブの提供を終了した。近年は「大半のユーザーはニュース目的でプラットフォームを利用していない」と主張し、不要なコンテンツに支払う必要はないとの姿勢を強めている。しかし規制当局は、ニュースが依然としてサービス上で広く流通し、広告収益を生み出していると指摘している。

フランス競争当局の決定はこの点に直接言及している。メタがユーザーの意図をどう説明しようとも、ニュースコンテンツはサービス上に表示され、同社はその周囲に掲載される広告から利益を得ている。フランスの著作隣接権法は、メタが能動的にニュースを推奨しているかどうかではなく、報道出版物を表示または再利用しているかどうかを基準としており、当局はメタがそれを行っていると認定した。

もしメタが「ニュースはプラットフォーム上でほとんど価値を生み出していない」と主張するならば、その算出根拠は開示を命じられたデータによって検証可能であるはずだ。しかし、もし開示されたデータから、報道コンテンツに関連して多額の広告収入が発生していることが明らかになれば、メタが提示した「80%減額」という更新条件の正当性は失われることになる。

■命令に従わない場合のリスク

データ開示の15日間の期限は2026年7月23日頃に切れる。メタがこれに従い、本格的な交渉が再開されれば、さらなる法的措置は回避される可能性がある。しかし、従わない場合や、算定方法を巡る対立で進展が見られない場合、競争当局は制裁金を科す権限を保持している。

さらに、メタは欧州全体で法的リスクの増大に直面している。2025年4月にはフランスの約200のメディアがオンライン広告慣行を巡り提訴したほか、2025年3月には著作権で保護された文学作品を許可なくAIモデル「Llama」の学習に使用したとして、フランスの出版社や著作者がパリ司法裁判所に提訴している。

AI学習の分野における次の焦点として、ハンガリーの出版社がグーグルを訴えた裁判があり、2026年3月にCJEUで初の口頭弁論が行われた。フランスの報道機関もこれを注視している。もしAI学習へのコンテンツ利用にも著作隣接権の適用が認められれば、AI学習の領域に対しても同様のデータ開示と対価支払いの義務が拡張される可能性がある。

■注目ポイントQ&A

●著作隣接権(droits voisins)とは何ですか?なぜフランスの報道機関にとって重要視されているのですか?

著作隣接権とは、オンラインプラットフォームが報道コンテンツの一部を再利用または表示した際、報道機関や通信社が対価を請求できるようにする知的財産権の一種です。ジャーナリスト個人の著作権とは異なり、報道の制作・配信に対する報道機関の投資を保護します。フランスは2019年10月にEU指令を国内法化してこれを導入しました。紙媒体の広告収入が減少する中、ニュース表示から利益を得るプラットフォームから対価を回収するための重要な法的手段となっています。

●2026年5月のEU司法裁判所(CJEU)の判決は、今回のフランスの命令にどう影響しましたか?

CJEUは、EU加盟国がプラットフォームに対し、公正な対価の算出に必要な財務データの開示を義務付けることができると判断しました。これにより、プラットフォーム側が「社外秘の財務データである」として開示を拒むことができなくなりました。この判決が、フランス競争当局による15日以内のデータ開示命令の直接的な法的根拠となっています。

●FacebookやInstagramでフランスのニュースを読んでいる一般ユーザーに影響はありますか?

この紛争が、メタのプラットフォーム上に表示されるニュースに直接影響を与えるわけではありません。交渉中もニュースコンテンツは流通し続けています。影響を受けるのは報道機関の財務健全性です。プラットフォームが対価を支払わずにニュースから広告収入を得続けると、報道機関の収益が圧迫され、記者の削減や調査報道の縮小など、コンテンツの質低下につながる恐れがあります。

元記事: France Gives Meta 15 Days to Pay 1,100 Publishers as EU Copyright Power Shifts

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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