Googleがプライバシー設定を「サイレント変更」、検索時の写真や音声がデフォルトでAI学習用に収集される仕様に

2026年7月9日 18:56

印刷

記事提供元:Tech Times

Googleが2026年6月にプライバシー設定を密かに更新し、検索ツールを通じて送信された写真、音声録音、ファイル、動画を、デフォルトでAIモデルの学習用に収集し始めたことが報じられている。これまで「ウェブとアプリの活動」をオフにしていたユーザーであっても、新たな設定項目「検索サービスの履歴」の導入により、意図せずデータが収集されている可能性がある。ユーザーは自身のプライバシー設定を早急に確認することが推奨される。

■Googleが収集しているデータとその広範な影響範囲

新たに導入された「検索サービスの履歴」設定は、Google検索、マップ、ショッピング、フライト、ホテル、翻訳、ニュースに加え、ファイルアップロードを伴う「AI Mode」や「Ask Maps」のスレッドなど、Googleの幅広い製品に適用される。

この設定が有効になっている場合、以下のようなメディアデータが収集対象となる。

・画像認識のためにGoogleレンズに送信された写真

・音声検索や「Search Live」を通じて録音された音声

・発音練習のためにGoogle翻訳に入力された音声

・これらのツールを介してアップロードされたファイルや動画

この影響は、ユーザーが「検索」と認識していない操作にまで及ぶ。例えば、レンズでスキャンした処方箋のラベル写真、旅行中に翻訳アプリで発声した文章、手が離せない時に行った音声コマンドなども対象に含まれる。

なお、Googleフォトは明示的に除外されており、フォトライブラリに保存されている個人用画像が影響を受けることはない。今回のポリシーが適用されるのは、検索やAIツールを通じてユーザーが能動的に送信したメディアのみである。

■プライバシー管理機能の再編と「新たな抜け穴」

今回の変更前、Googleは検索関連サービスのプライバシーを「ウェブとアプリの活動」という単一の切り替えスイッチで管理していた。これをオフにするか、データ保持期間を制限することで、検索内容やアップロードしたデータの保存を制御できていた。

しかし、現在はその仕様が変更されている。Googleは従来の管理機能を以下の3つの独立したコントロールに分割した。

1. 検索サービスの履歴:クエリやインタラクションを保存するかどうかを決定する。

2. パーソナライズされたおすすめ:保存された履歴を検索結果や広告のカスタマイズに利用するかどうかを制御する。

3. メディアの保存:「検索サービスの履歴」の下位設定であり、画像、音声、動画を保持し、AIの学習に利用するかどうかを管理する。

Googleによると、移行時にはユーザーの既存の推奨設定が引き継がれ、「ウェブとアプリの活動」がオンだったアカウントは「検索サービスの履歴」もオンに、オフだったアカウントはオフのまま維持されたという。しかし構造的な問題として、今後これら2つの設定は完全に切り離される。将来的に「ウェブとアプリの活動」をオフにしても「検索サービスの履歴」には影響せず、ユーザーは両方を個別に管理する必要がある。

電子プライバシー情報センター(EPIC)のシニアカウンセルを務めるキャリ・シュローダー氏は、オプトアウト(機能停止)を推奨している。同氏はHuffPostに対し、「自分の子供の写真や、メーカーを特定しようとして撮影した水着姿の写真をGoogleに保有されても本当に問題ないか、慎重に考えてほしい」と語り、特に音声録音や顔画像は、検索エンジンに渡すべきではないバイオメトリック(生体)情報にあたると指摘した。

■Googleの「匿名化」主張に対する疑問の声

Googleの公式ドキュメントによると、AI学習用に送信されたメディアは、モデルの学習に使用される前、あるいは外部委託業者によってレビューされる前に「Googleアカウントから切り離される」とされている。また、広範な識別情報や機密性の高い個人情報を削除するためのフィルターを適用し、人間のレビュアーと共有する前にはユーザーの同意を求めるとしている。

Googleの広報担当者は、バイオメトリック情報の収集に関する懸念について「憶測に基づくコメントであり不正確」とし、「検索サービスの履歴はバイオメトリック目的で収集されているわけではない」と述べた。

しかし、独立したセキュリティ研究者らは、この種の匿名化にはシステム上の限界があると指摘している。2019年にNature Communications誌に掲載された研究では、匿名化されたはずのデータセットであっても、わずか15個の人口統計学的属性を用いるだけで、米国人の99.98%を正しく再特定できることが示されている。音声録音には声紋データが含まれ、レンズ経由で送信された画像には顔や周囲の状況、メタデータなど、本質的に準識別子として機能する情報が含まれている。これらは一般的なフィルターでは除去しきれない性質のものだ。

さらに、Googleが公表している「4年間」というデータ保持期間が、この懸念をより現実的なものにしている。Googleのドキュメントによると、ユーザーが「検索サービスの履歴」を削除した後であっても、すでにAI学習用に選定されたメディアは「アカウントとの関連付けが解除された状態で、最大4年間保持される」という。この期間は、オプトアウトした時点からではなく、メディアが収集された時点からカウントされる。

■過去のプライバシー管理を巡る訴訟と判決の歴史

今回の変更は、Googleが過去にユーザーに対してプライバシー管理の説明をどのように行ってきたかという、法的な事実認定の歴史を背景にしている。

Bloomberg Lawの報道によると、2025年9月、サンフランシスコの連邦陪審はGoogleに対し、「ウェブとアプリの活動」をオフにしていた約9800万人のユーザーに対して4億2570万ドル(約693億8910万円、1ドル=163円換算)の支払いを命じた。これは、ユーザーが設定をオフにした後も、Googleがサードパーティ製アプリからデータを収集し続けていたと認定されたためである。この判決の原因となった「ウェブとアプリの活動」設定こそが、今回「検索サービスの履歴」へと再編されたものである。

また、Fox Businessの報道によると、2026年1月には、Googleアシスタントが誤作動によってユーザーの音声を秘密裏に録音し、同意なしにサードパーティのレビュアーに送信して音声認識AIの向上に利用していたとされる問題について、Googleは6800万ドル(約110億8400万円、1ドル=163円換算)の和解金支払いに合意した。この和解金の請求期限は2026年8月27日となっている。

さらにGoogleは2025年、ユーザーの位置情報、シークレットブラウジングの活動、音声データの不正な追跡を巡り、テキサス州とも14億ドル(約2282億円、1ドル=163円換算)で和解している。

米連邦取引委員会(FTC)は業界に対し、事前に収集されたデータを用いたAI学習を可能にするために、明確で目立つ通知や積極的な明示的同意なしに利用規約やプライバシーポリシーを「密かに変更」することは、FTC法第5条が禁じる不公正または欺瞞的な行為に該当する可能性があると直接警告している。Googleが2026年6月に送信したメールは、同意を求めるものではなく、変更を一方的に通知するものだった。

■データ収集を停止する方法:完全なオプトアウト手順

「検索サービスの履歴」の導入は段階的に行われており、Googleは「今後数ヶ月かけて」すべてのアカウントに適用するとしている。そのため、アカウントに新しいインターフェースが既に反映されているかどうかで手順が異なる。

【すでに「検索サービスの履歴」が表示されている場合】

1. myactivity.google.com にアクセスしてサインインする。

2. 「検索サービスの履歴」タブを見つけ、完全にオフにする。または、自身の利用のために検索履歴は残しつつメディアの収集だけを止めたい場合は、枠内にある「メディアの保存」のチェックを外す。

3. 検索活動に基づく広告ターゲティングも停止したい場合は、Googleアカウントの「データとプライバシー」から「パーソナライズされたおすすめ」を個別にオフにする。

【「検索サービスの履歴」がまだ表示されていない場合】

現時点では、「ウェブとアプリの活動」に移動し、「音声とオーディオのアクティビティを含める」および「ビジュアル検索履歴を含める」のチェックを外すことで、当面のメディア収集を停止できる。その後、新しい設定項目が表示されるまで週に1回程度確認し、表示されたら「メディアの保存」がオフになっていることを確認するよう推奨される。

一般的なガイドが見落としがちな重要な注意点として、「メディアの保存」のみをオフにした場合、画像や音声のAI学習への保持は停止されるが、音声検索の「テキスト変換されたトランスクリプト(文字起こし)」は、より広範な「検索サービスの履歴」自体をオフにしない限り保存され続ける。音声クエリを完全に除外したい場合は、「メディアの保存」だけでなく、「検索サービスの履歴」全体をオフにする必要がある。

なお、完全にオプトアウトするのではなく、保持期間を制限したい場合は、3ヶ月、18ヶ月、36ヶ月の自動削除オプションも利用可能である。

■業界の背景:ウェブスクレイピングから「リアルデータ」への移行

Googleのこの動きは、AI業界全体の構造的な変化を反映している。大規模言語モデル(LLM)の従来の学習ソースであったウェブスクレイピングによるデータは有限であり、法的課題に直面することが増えている。また、AIが生成したコンテンツがウェブ上に氾濫することで、データの品質低下も進んでいる。これに対し、実際のユーザーが送信するデータは常に新しく、高精度であり、日常的な製品利用を通じて追加コストなしで収集できる極めて貴重なリソースである。

Metaも同様の戦略を大規模に展開しており、ユーザーの画像、投稿、スマートグラスを通じて取得されたコンテンツをAIの学習に利用している。OpenAIも消費者向けアカウントのデータをデフォルトで学習に使用する仕様(オプトアウトは可能)にしており、Anthropicは消費者向け規約において学習データの利用をより厳しく制限している。

商業的な動機は明確である。AIモデルの精度は、学習データの量と多様性に直接比例する。レンズでの検索、音声翻訳、画像のアップロードのすべてが、競合他社が外部からアクセスできない独自のデータセットを構築する。Googleがこれらのデータを収集するのは、ユーザーの検索履歴を記憶しておくためではなく、AI支援ツールを介して送信される現実世界のメディアデータが、現在の業界において最も価値のある学習リソースの一つだからである。

■注目ポイントQ&A

●「ウェブとアプリの活動」をオフにすれば、新しい設定から保護されますか?

いいえ、保護されません。今回の変更により、Googleは「ウェブとアプリの活動」と「検索サービスの履歴」を完全に切り離しました。今後は「ウェブとアプリの活動」をオフにしても「検索サービスの履歴」には影響しないため、myactivity.google.com から個別に設定を管理する必要があります。

●履歴を削除しても、Googleは私のデータを使用し続けますか?

一部のデータは使用され続けます。履歴を削除するとアカウントからの関連付けは即座に解除されますが、削除前にすでにAIモデルの学習用に選定されていたメディアデータは、匿名化された状態で最大4年間保持されます。削除は今後の収集を止め、アカウントに紐づくコピーを消去しますが、すでに学習パイプラインに組み込まれたデータは即座には消去されません。

●Google翻訳は私の声を録音していますか?

はい、翻訳アプリの発音練習機能や音声入力を使用し、かつ「メディアの保存」設定がオンになっている場合は録音されます。Google翻訳は「検索サービスの履歴」の対象サービスに含まれており、発音練習中に録音された音声は、デフォルト設定においてAI学習用に保持される対象となります。

●Googleの「アカウントからの切り離し(匿名化)」でプライバシーは完全に守られますか?

完全とは言えません。Googleはデータをアカウントから切り離し、識別情報を削除するフィルターを適用していると説明していますが、独立した研究者らは、音声データに含まれる声紋や、レンズ画像に写り込んだ顔や周囲の状況などの情報から、個人が再特定されるリスクを指摘しています。専門家も、これらはアカウントとの紐づけを解除しても残るプライバシーリスクであると警告しています。

元記事: Google Turned On AI Training for Your Photos and Voice Searches Without Asking

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事