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複数AIモデルのアンサンブル機能「Hermes MoA 2.0」、GPT-5.5やClaude 4.8を超える性能うたう

Hermes Agent (github.com)[写真拡大]
Nous Researchは、オープンソースのエージェントフレームワークの最新アップデートとなる「Hermes Mixture of Agents 2.0(MoA 2.0)」をリリースした。同社によると、このフレームワークは複数のAIモデルを組み合わせることで、Claude Opus 4.8やGPT-5.5といった現在利用可能な最高峰の単一モデルを上回る性能を発揮するという。アクセスが制限されがちな最先端の単一モデルに依存せず、利用可能な複数のモデルを組み合わせることでそれを凌駕するという、新たなアプローチが提示されている。
■Mixture of Agents 2.0とは何か?
MoAは新しい単一のモデルではなく、複数のモデルを組み合わせるアーキテクチャである。ユーザーは、1つ以上の「参照モデル(reference models)」と、1つの「アグリゲーター(aggregator)」からなるプリセットを設定する。参照モデルがそれぞれ独立してリクエストを分析し、アグリゲーターがそれらすべての出力を読み込んで最終的な回答を合成し、ツールの呼び出しなどを処理する仕組みだ。
MoA自体は以前からHermesに搭載されていた機能だが、バージョン2.0における最大の変更点は、各プリセットがモデル選択画面で「仮想モデル」として選択可能になったことだ。CLI、デスクトップクライアント、さらにはTelegramやDiscordといったゲートウェイにおいて、Claude、GPT、Grokなどと並んでリストに表示される。ユーザーは通常のモデルと同じようにプリセットを選択するだけで、Hermesが自動的にアンサンブル処理を実行する。また、「/moa [プロンプト]」コマンドを使用すれば、1回限りの呼び出しも可能で、処理終了後は通常のモデルに自動で戻るため、特に負荷の高いタスクのみに限定して利用することもできる。
■なぜ複数のモデルを組み合わせることで単一モデルを超えられるのか?
このアプローチの背景にあるのは「専門家委員会」という考え方だ。それぞれのモデルには異なる強みと弱点(ブラインドスポット)があるため、複数のモデルが同じ問題を独立して分析すれば、それぞれの誤りが重複しにくくなる。アグリゲーターは委員会の議長のような役割を果たし、各モデルの視点を比較検討した上で、どのメンバーが単独で出すよりも強力な回答を合成する。これは機械学習におけるアンサンブル学習と同じ原理を、より小さなコンポーネントではなくモデル全体のレベルに適用したものであり、優れた委員会がその中で最も優秀な個人(単一モデル)を上回ることができる理由でもある。
■ベンチマークが示す結果と注意点
Nous Researchは、近く公開予定のベンチマーク「HermesBench」の結果を提示している。GPT-5.5とDeepSeekを参照モデルとし、Claude Opus 4.8をアグリゲーターとしたデフォルトのプリセットは「0.8202」を記録した。これは、Opus 4.8単体の「0.7607」や、GPT-5.5単体の「0.7412」と比較して、Opusに対しては約8%、GPT-5.5に対しては約11%上回るスコアである。Nous ResearchのチーフエンジニアであるTeknium氏はX(旧Twitter)上で、チームは現在も「Opusレベルの出力をはるかに低いコストで実現する」ことを目指し、オープンソースモデルの組み合わせをテスト中であると述べている。
ただし、重要な注意点として透明性の問題がある。HermesBenchは現時点で完全には一般公開されておらず、これらの数値はNous Researchによる内部テストの結果である。完全な公開リーダーボードは現在準備中とのことであり、ベンチマークとその評価手法が正式に公開されるまでは、これらの数値は同社独自の主張として受け止める必要がある。
■エンジニアリングにおける詳細設計
Hermes MoA 2.0を導入・運用するにあたり、注目すべき設計上の選択肢がいくつかある。
まず、プロンプトキャッシュを維持するため、参照モデルの出力を履歴の途中ではなく、最新のユーザーターンの末尾に追加する設計が採用されている。これにより、キャッシュにヒットするコンテキストプレフィックスが安定し、コストを抑えることができる。また、アグリゲーター自体に別のプリセットを指定する「ネストされたMoA」は禁止されている。これにより、無限に再帰的なミキシングが発生してコストが暴走したり、デバッグが困難になったりするトラブルを防いでいる。
さらに、推論プロセスは透明化されており、各参照モデルの完全な出力がラベル付きのブロックとして個別に表示されるため、アグリゲーターが最終的な回答を出力する前に、GPT、Claude、Grokのそれぞれの回答を個別に確認できる。また、完全なツールアクセス権限はアグリゲーターのみに与えられ、参照モデルにはシステムプロンプトやツール履歴を除去した簡略化された会話が渡される。これはコスト削減に加え、より厳格なサービスプロバイダーによる拒否反応を回避するための措置である。
■なぜ今、この機能をリリースするのか?
このリリースのタイミングは偶然ではない。2026年6月12日、米国の輸出管理規制により、Anthropicは世界中の全ユーザーに対して「Fable 5」および「Mythos 5」の提供停止を余儀なくされた。この禁止措置は19日間のシャットダウンを経て7月1日に解除されたばかりだが、最先端モデルへのアクセスは全体的に高コスト化し、利用制限も厳しくなっている。Nous Researchはこの現実を意識したメッセージを打ち出している。発表の中で同社は「最も強力なモデルはアクセスが制限されており、ごく一部の人しか利用できない」と指摘し、MoA 2.0をその代替案として位置づけた。つまり、アクセスが制限された単一のスーパーモデルに依存するのではなく、利用可能なモデルを組み合わせてそれを凌駕するシステムを構築するという提案である。
■懸念されるデメリット
MoAの最大のデメリットはコストである。1回の呼び出しごとに、消費されるトークン数は参照モデルの数におおむね比例して乗算される。そのため、Nous Researchはすべてのやり取りでMoAを使用するのではなく、「最も品質が求められる10%のタスク」に限定して使用することを推奨している。Teknium氏は、オープンソースモデルの組み合わせが商用モデルの品質に追いつけば、高価な最先端APIを経由する必要がなくなるため、コスト問題は大幅に緩和されるはずだと述べている。
なお、MoA 2.0は2026年6月19日に「Hermes Agent v0.17.0」のコア機能としてリリースされ、その後7月1日の「Judgment Release」と呼ばれるv0.18.0において、より詳細なトレースの永続化やセキュリティの強化などの微調整が行われている。
■注目ポイントQ&A
●Hermes MoA 2.0とは何ですか?
Nous Researchが開発するオープンソースのフレームワーク「Hermes Agent」のアップデート機能です。複数のAIモデル(参照モデル)にリクエストを独立して分析させ、その出力を「アグリゲーター」と呼ばれるモデルが統合して最終的な回答を作成します。ユーザーはこれを1つの仮想モデルとして選択して利用できます。
●複数のモデルを組み合わせることで、本当に単一の最先端モデルを上回る性能が出せるのですか?
Nous Researchの内部ベンチマーク「HermesBench」によると、特定の組み合わせにおいてClaude Opus 4.8を約8%、GPT-5.5を約11%上回るスコアを記録したと主張されています。ただし、このベンチマークは現時点で一般公開されていないため、第三者による客観的な検証はまだ行われていません。
●単一のモデルではなく、あえてMoAを使用するメリットは何ですか?
複数のモデルの強みを掛け合わせることで、より高品質な回答を得られる点です。また、特定の最先端モデルがアクセス制限やコスト高騰に直面した際、単一のプロバイダーに依存するリスクを軽減できます。ただし、1回あたりのトークン消費量が大幅に増加するというトレードオフがあります。
●MoAの実行にはどのくらいのコストがかかりますか?
1回の呼び出しにつき、使用する参照モデルの数に比例してトークン消費量が増加するため、単一モデルの利用に比べて大幅にコストが高くなります。そのため、開発元は品質が極めて重要となるタスクに絞って使用することを推奨しています。将来的には、オープンソースモデルの性能向上に伴い、コストは低下していくと予想されています。
元記事: Hermes MoA 2.0 Combines GPT, Claude and DeepSeek to Outscore Any One Model
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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