OpenAI、1兆ドル未満のIPOを拒否し2027年へ延期か――ソフトバンク株急落で時価総額約6.1兆円が吹き飛ぶ

2026年6月28日 16:18

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記事提供元:Tech Times

米OpenAIが、市場の混乱の中で1兆ドル(約162兆円)未満の評価額での新規株式公開(IPO)を避けるため、上場時期を2027年に延期する方向で調整していると報じられた。この報道を受け、同社に巨額の投資を行うソフトバンクグループの株価が急落し、時価総額約380億ドル(約6兆1560億円)が消失した。サム・アルトマンCEOは1兆ドルの評価額引き下げを拒否しているとされ、AI投資サイクルやソフトバンクの資金繰りに大きな影響を与える可能性がある。

■アルトマンCEOが「1兆ドル」の評価額に固執する背景

米OpenAIは2026年5月22日に米証券取引委員会(SEC)へ秘密裏に登録届出書草案を提出し、同年6月9日にこれを公表した。提出時の直近の未公開株評価額は、ソフトバンク、Amazon、Nvidiaなどが主導した3月の122億ドル(約1兆9764億円)の資金調達ラウンド時点で852億ドル(約138兆240億円)だった。

サム・アルトマンCEOが掲げる1兆ドル(約162兆円)という目標は、単なる象徴的な数字ではない。この大台に達すれば、OpenAIはNvidia、Microsoft、Apple、Alphabetといった、パブリック市場でその地位を維持している一握りの巨大テック企業と肩を並べることになる。しかし、現在の852億ドルから1兆ドルに達するには約17%のプレミアムが必要であり、同社のアドバイザーらは、現在の不安定な市場環境において2026年中にその差を埋めるのは困難であると警告している。

アドバイザーらがボラティリティの具体例として挙げたのが、宇宙開発企業SpaceXの事例だ。同社は2026年6月12日にNasdaqへ上場し、初値150ドル、時価総額1.77兆ドル(約286兆7400億円)を記録したものの、わずか2週間後の6月26日には約153ドルまで32%も急落した。ニューヨーク・タイムズ紙によると、OpenAIのアドバイザーはこの激しい値動きを引用し、アルトマン氏に警告を発したという。

また、2024年にCFOに就任したサラ・フライアー氏も、将来のインフラ支出コミットメントが6000億ドル(約97.2兆円)に上ることや、アルトマン氏が望む過密なスケジュールでは上場企業としての報告基準を満たすことが困難であるとして、上場を2027年まで延期することを個別に推奨していると報じられている。

■ソフトバンクが直面する「400億ドル」の債務償還期限

ソフトバンクグループにとって、OpenAIのIPO延期は単に利益確定が先送りされるだけでは済まない。市場の動向と、同社が抱える巨額の債務償還期限が衝突することを意味している。

ソフトバンクはOpenAIに約650億ドル(約10兆5300億円)をコミットしており、約13%の株式を保有する第2位の外部株主(筆頭はMicrosoftの27%)となっている。同社のビジョン・ファンドによるOpenAI投資の公正価値は、2025年末時点で796億ドル(約12兆8952億円、累計コストは346億ドル)に達し、2026年3月期までの1年間で約460億ドル(約7兆4520億円)の投資含み益を記録していた。この利益のほとんどは、OpenAIの未公開株評価額の上昇によるものだ。

しかし、この含み益の裏にある財務構造が問題となっている。ソフトバンクはOpenAIへの投資資金を賄うために400億ドル(約6兆4800億円)のブリッジローンを組んでおり、その返済期限は2027年3月に迫っている。OpenAIの上場は、この債務を返済するための主要な資金回収(流動化)イベントとなるはずだった。アルトマン氏の意向通りIPOが2027年後半にずれ込めば、ソフトバンクは期待していた流動性を得られないまま、巨額の債務償還期限を迎えることになる。

この資金繰りの悪化は、別の形でも表面化している。ソフトバンクはOpenAIの保有株を担保に少なくとも60億ドル(約9720億円)の証拠金ローン(マージンローン)を調達しようとしたが、金融機関側が難色を示した。OpenAIが未公開企業であるため基準となる市場価格が存在せず、担保価値(LTV)を正確に算出できないことが理由で、融資交渉は頓挫している。

S&Pグローバル・レーティングは、OpenAIへのリスク集中を理由に、2026年3月時点でソフトバンクの格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げていた。今回の延期報道とブリッジローンの返済期限が迫る中、格下げ圧力はさらに強まる可能性が高い。孫正義会長兼社長は株主総会で「AIバブル論」を否定し、技術の可能性を強調したが、市場の反応は同氏の確信がソフトバンクの財務リスクを免除するものではないことを示している。

■予測市場の織り込みと競合Anthropicとの比較

予測市場では、OpenAIの上場スケジュールに関する見方が急速に変化している。予測プラットフォームKalshiのデータによると、トレーダーらはOpenAIが2027年3月1日までにIPOを正式発表する確率を59%、2027年6月までを73%と予測している。以前のPolymarketでは2026年中の上場確率が30〜40%とされていたが、今回の報道を受けてセンチメントはさらに後退した。

財務面だけで見れば、上場を待つメリットは明確だ。OpenAIの2025年の売上高は130.7億ドル(約2兆1173億円)で、2026年は月商20億ドル(約3240億円)ペースで成長している。これはAlphabetやMetaが同ステージで記録した成長速度の約4倍に相当する。しかし、2026年6月15日に公表されフィナンシャル・タイムズ紙も確認した2025年の監査済み決算では、非営利から営利法人への移行に伴う非現金費用などを含め、385.3億ドル(約6兆2418億円)の純損失を計上している。2026年第1四半期の純損失も、非現金費用を除いて約85億ドル(約1兆3770億円)と推計されている。

さらに、元OpenAIの研究者らが設立した競合のAnthropicが、OpenAIとの差を縮めている。Anthropicは2026年5月下旬、OpenAIの直近の評価額を上回る9650億ドル(約156兆3300億円)の評価額で650億ドル(約10兆5300億円)を調達した。同社は2026年第2四半期だけで109億ドル(約1兆7658億円)の売上高を予測しており、これは2025年通期の売上高を1四半期で上回る規模だ。さらに、約5.59億ドル(約905億円)の初の営業黒字も見込んでいる。OpenAIの2026年第1四半期の売上高は約57億ドル(約9234億円)であり、両者の業績は市場の予想以上に拮抗しつつある。

EMARKETERのアナリスト、ネイト・エリオット氏は、OpenAIのIPOについて「極めて不安定な時期に差し掛かっている」と指摘。ブリッジウォーターのパートナーであるグレッグ・ジェンセン氏も顧客に対し、「現在の評価額は、まだ実現していない独占的地位を前提とした価格設定だ」と警告している。また、HSBCのアナリストは、楽観的な売上予測の下でも、OpenAIは2030年までに2070億ドル(約33兆5340億円)以上の追加資金が必要になると試算している。

■増大する司法リスクと情報開示の圧力

IPOの延期は、OpenAIにとって、SECへの情報開示が義務付けられる前に増大する法的リスクを処理するための猶予期間にもなる。

2026年6月13日、ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官が率いる42州の司法長官連合は、OpenAIに対し、広告、ユーザーエンゲートメント、データ処理、未成年者や高齢者に関する活動、モデル設計に関する記録の提出を求める広範な召喚状を送達した。これに先立ち、フロリダ州も6月1日に同社とアルトマン氏を相手取った民事訴訟を提起している。

IPOを準備する企業は、重大な法的リスクを開示する義務がある。42州に及ぶ共同調査は、同社のコア製品に対する重大なリスクに該当する。過去の州レベルの消費者保護調査の規模から推計すると、このような法的リスクは上場時の公開価格を10〜18%押し下げる要因になり得るとされている。

■今後の見通し

OpenAIはニューヨーク・タイムズ紙の報道についてコメントを控えている。同社は6月9日の声明で「上場の時期はまだ決定していない」とし、「非公開企業として行う方が容易な取り組みがあるため、上場にはしばらく時間がかかる可能性がある」と述べていた。

アルトマン氏の戦略の意図は明確だ。現在の市場環境で1兆ドルの評価額が得られないのであれば、非公開のまま企業規模を拡大し、その価値に見合うまで待つというものだ。調査会社Sacraの推計によると、OpenAIの2026年初頭の年換算売上高は約250億ドル(約4兆500億円)に達しており、通年のキャッシュ燃焼額は約270億ドル(約4兆3740億円)と予測されている。この売上成長が続き、アルトマン氏の予測通りにAIインフラのコスト曲線が低下すれば、2027年に1兆ドルでのIPOを実現する方が、2026年に妥協した評価額で上場するよりも現実的なシナリオとなる。

しかし、ソフトバンクが抱える400億ドルのブリッジローンは、OpenAIの成長を待ってはくれない。2027年3月の返済期限までに、同社は別の資金調達手段を確保する必要に迫られている。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは引き続きOpenAIのIPOアドバイザーを務めており、市場環境が回復すれば上場手続きは迅速に再開される可能性があるが、現時点での延期決定はOpenAIの枠を超え、ソフトバンクをはじめとする市場全体に大きな波紋を広げている。

■注目ポイントQ&A

●OpenAIの上場はいつになりますか?

OpenAIは2026年5月22日にSECへ秘密裏に登録届出書草案を提出し、当初は早ければ2026年第4四半期の上場を目指していました。しかし、2026年6月26日のニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、同社は1兆ドルの評価額目標を維持するため、上場を2027年まで延期する方向で検討しているとされています。予測市場Kalshiでは、2027年3月1日までに正式発表される確率を59%と予測していますが、現時点で正式な上場日は決定していません。

●2026年6月26日にソフトバンクグループの株価が12%以上急落したのはなぜですか?

ソフトバンクはOpenAIに約650億ドル(約10兆5300億円)をコミットし、約13%の株式を保有する第2位の外部株主です。OpenAIの上場延期報道により、ソフトバンクが期待していた早期の資金回収(流動化イベント)の機会が遠のいたため、市場に失望が広がり、株価は一時14%下落、終値で12%以上急落して時価総額約380億ドル(約6兆1560億円)が消失しました。

●サム・アルトマンCEOが掲げる評価額目標とその重要性は何ですか?

アルトマンCEOは、OpenAIのIPOにおける評価額の下限を1兆ドル(約162兆円)に設定しており、これ未満での上場は受け入れられないとしています。直近の未公開株評価額852億ドルから1兆ドルに達するには、パブリック市場で約17%のプレミアムが必要です。しかし、年間約270億ドル(約4兆3740億円)のキャッシュを消費している同社に対し、この評価額は「まだ存在しない独占的地位を前提とした高すぎる価格設定」であるとのアナリストの指摘もあります。

●IPOの延期は、ソフトバンクにとって資金回収の遅れ以外にどのような問題がありますか?

ソフトバンクはOpenAIへの投資資金を賄うために400億ドル(約6兆4800億円)のブリッジローンを組んでおり、その返済期限が2027年3月に迫っています。IPOが2027年後半に延期された場合、返済期限までに上場による資金回収が間に合わないリスクが生じます。また、OpenAI株を担保にした60億ドル(約9720億円)の証拠金ローンの調達も、未公開株の基準価格が設定できないことを理由に金融機関から拒否され、難航しています。

元記事: OpenAI IPO Delay Sends SoftBank Down $38 Billion: Altman Refuses Any Cut to $1 Trillion Target

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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