川崎重工、水素からナフサ生産を提案 脱中東依存の切り札となるか

2026年5月19日 16:54

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●川崎重工が水素からナフサを生産する技術を提案

 川崎重工業が5月12日の決算説明会で、水素からナフサを生産する技術の提案を始めたことを明らかにしたと、日経新聞などが報じている。

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 対象は明らかにしていないが、独自技術を生かして経済安全保障に貢献するという。

 川崎重工は、天然ガス由来の水素などからガソリンを製造するプラントを、2019年にトルクメニスタンに納入した実績を持つ。日経の報道に寄れば、説明会で橋本康彦社長は、「水素を使ってガソリンやナフサを作れると知らない人がまだ多い」と語ったという。

 ホルムズ海峡の実質的封鎖以降、原油の約95%を中東由来に頼る日本にとって、ナフサ不足が深刻化しており、水素からナフサ生産が救世主となるのだろうか?

●水素からナフサ生産

 水素からナフサを生産する技術は、決して最新の技術ではない。

 水素と一酸化炭素を触媒反応させ炭化水素を合成するFTS(Fischer-Tropsch)という技術は、第2次世界大戦中にナチスドイツが実用化し、その後南アフリカのSasolが数十年商業運転してきた。

 ただ、石炭や天然ガスを一度水素と一酸化炭素に分解しないといけないため、大量の二酸化炭素(CO2)を必要とすることと、エネルギーロスが大きいことが課題となっている。

●e-naphtha(イーナフサ)への期待

 工場や大気中から回収したCO2(二酸化炭素)と再生可能エネルギーで作ったグリーン水素を掛け合わせた、環境負荷ゼロのe-naphtha(イーナフサ)への期待がかかる。

 日本政府は2030年までにイーナフサなどの合成燃料の商業化技術の確立を目標に掲げており、ENEOSや出光興産、三菱ケミカルなどの大手企業が提携し、国内のコンビナード内でのCO2回収と水素合成を一貫して行う実証実験が始まっている。

 ただ、現状石油ナフサに比べて1リットルあたり、数倍から10倍以上のコストがかかると言われており、大量の電力消費も問題となっている。

 イーナフサ関連企業は川崎重工だけでなく、千代田化工建設や東洋エンジニアリングなどのCO2回収に強い企業も、国策銘柄として注目される。

 後退しつつある脱炭素と、喫緊の課題である“脱中東依存”の経済安全保障面が一気に解決する切り札となる可能性を秘めている。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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