新NISA、年利8%超と5%未満の差 分かれ目は「投資スタイル」

2026年5月15日 09:47

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 新NISA制度の開始から2年余りが経過し、投資家の運用成果には明確な二極化が生じている。

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 金融庁が公表する過去の長期シミュレーション(つみたてNISA早わかりガイドブック)では、20年間の分散投資によって得られた収益の分布が年率2~8%程度に収束するデータが示されている。だが2026年現在、年利8%超のハイリターンを狙う層と、市場平均以下(おおむね5%未満)に留まる層の間には、運用スタイルの「決定的分岐点」が存在する。

■現状:成果格差のデータと運用実態

 新NISAのつみたて投資枠において、低コストなインデックスファンドを機械的に積み立てる投資家が多数を占める。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「全世界株式(オール・カントリー)」は、過去3年の年率リターンで24~29%台という歴史的な好成績を記録した。

 しかしこれらは、あくまで強気相場の恩恵であり、長期的な市場平均リターンは5~7%程度に収斂する。

 一方、年利8%超を継続的に狙う層は、成長投資枠を活用し、資本効率の高い銘柄への選別投資を組み合わせている。半導体製造装置世界シェアトップクラスの東京エレクトロン(8035)は、AI需要の爆発的拡大を背景に28%を超える高いROE(自己資本利益率)を維持し、株価上昇と配当再投資の両面でリターンを押し上げた。

 また、FAセンサー大手のキーエンス(6861)は、積み上がった内部留保によりROEが13%台まで低下していたが、2026年4月の決算において自己株式取得枠の整備や大幅増配など、資本効率改善に向けた抜本的な株主還元策を打ち出した。PBRやROEを基準とした「資本効率の改善期待」に着目し、質の高い日本株を抽出するスタイルが、平均を上回るリターンの源泉となっている。

■背景と分析:分岐点を生む2つの運用スタイル

 格差の背景は、運用スタイルの根本的な違いにある。平均以下の成果に留まる層は「ほったらかし運用」を盲信し、市場全体の変動に依存しすぎる傾向がある。そのため、市場調整局面における心理的動揺から積立を中断したり、感情的な売買を繰り返したりする投資家も少なくない。

 これに対し、8%超を狙う層は「資本効率重視の個別選別」を戦略的に組み入れている。

 単なる市場追随ではなく、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)のように、金利のある世界への移行とコーポレートガバナンス改革を追い風に、株主還元を強化する銘柄を厳選しているのだ。同社は株価上昇に伴い予想配当利回りは2.5%台まで低下したが、増配と自社株買いによる「総還元」の視点で見れば、依然として資本効率の高い投資先である。

 分岐点は「行動規律」にもある。継続的な積立に加え、企業の決算数値や経営戦略を定期的に検証し、ポートフォリオの質を維持する規律が、長期的なリターンの差となって表れる。

■今後の展望と課題:市場環境変化への対応

 2026年以降も「金利ある世界」と企業統治改革の流れは不可逆であり、資本効率に優れた企業が選好される環境が続く。高リターン層はこの潮流を収益化できる一方、インデックスに過度に依存する層は、市場停滞局面で相対的なアンダーパフォームを強いられるリスクがある。

 ただし、個別選別には銘柄集中リスクや高度な情報収集が不可欠だ。年利8%超を目指す場合でも、資産の一定割合をインデックスで守りつつ、残りを資本効率銘柄に充てるハイブリッド型の分散投資が現実的な解となる。

 新NISAは長期運用を支援する制度だが、最終的な成果は投資家自身のスタイル選択と、短期的な変動に動じない規律の継続に集約される。投資家は今こそ、自身のリスク許容度と照らし合わせ、運用スタイルを抜本的に見直すべきだ。(記事:今福雅彦・記事一覧を見る

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