硫化物固体電解質の力学特性評価法を確立 全固体電池設計に貢献 豊橋技科大

2022年3月18日 08:16

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左: インデンテーション試験装置のイメージ図と装置写真。右図: 得られる P-h 曲線。P は荷重、h は圧入深さを表す。赤線は今回の研究で得られた 75Li2S-25P2S5 硫化物系固体電解質の P -h 曲線。

左: インデンテーション試験装置のイメージ図と装置写真。右図: 得られる P-h 曲線。P は荷重、h は圧入深さを表す。赤線は今回の研究で得られた 75Li2S-25P2S5 硫化物系固体電解質の P -h 曲線。[写真拡大]

 硫化物固体電解質を用いた全固体電池はEVなどへの応用が期待されているが、特性面ではまだまだ課題も山積している。その課題を解決するために硫化物固体電解質の力学特性を把握する必要があるが、大気中では容易に反応してしまうため分析が困難であった。豊橋技術科学大学は17日、不活性雰囲気中で定量的な評価が可能な方法を調査してきた結果、インデンテーション試験が有用であることを明らかにした。

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 硫化物全固体電池を用いた全固体電池の課題として、充放電時の活物質の膨張収縮による安定性低下が挙げられる。この膨張収縮によって、活物質と固体電解質との界面で良好な接触状態を維持することが難しくなる。そのため、活物質と固体電解質のマイヤ硬度や弾性率などの力学特性を理解した上で、材料設計を行う必要性が示唆されてきた。

 だが硫化物全固体電池は大気と容易に反応してしまうため、不活性ガスの雰囲気中で分析を行う必要がある。また試料サンプルの作製方法次第でも、空隙や表面状態が変化してしまい、力学特性が正確に評価できないと言った課題もあった。

 今回の研究では、Ar雰囲気中でのインデンテーション試験による評価を試みた結果、マイヤ硬度や弾性率などの重要な力学物性を得ることが可能になったと言う。

 インデンテーション試験自体は他の材料分析でも一般的に用いられてきたが、複雑な加工が不要である点がアドバンテージである。また先行研究で用いられた「ナノ」インデンテーション法と比較しても、十分に材料内部まで分析することが出来る。そのため、材料固有のバルク領域における力学特性を得られることが確認された。

 今回開発された手法は、複雑な材料加工を必要とせずに重要な力学物性値を得ることが出来る。そのため、様々な固体電解質材料の力学特性値をデータベース化し、電池特性との相関を探ることで、全固体電池の設計指針が確立することが記載される。

 今回の研究成果は14日付で「ACS Applied Energy Materials」のオンライン版に掲載されている。

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