オーストラリア、3月の貿易黒字は過去最高に 豪ドルへの影響は?

2020年5月8日 19:03

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●貿易黒字106億豪ドル

 コロナ禍にもかかわらず、オーストラリアの3月の貿易黒字が、統計開始以来過去最高となった。オーストラリア連邦統計局が7日に発表した貿易収支によると、3月の輸出額は前月比15.1%増、輸入額は同3.6%減、貿易黒字は同174%増の106億豪ドル(約7,186億8,000万円)となった。鉄鉱石や金の輸出額が急増し、市場予想も大幅に上回る結果だ。

●中国の工場再開が背景

 オーストラリア経済は、中国への依存度が高い。輸出の約3分の1は中国向けで、外国人留学生の約5分の2、観光客の約6分の1を中国人が占める。

 世界有数の資源国であるオーストラリアでは、鉱物資源の輸出が中国の需要によって左右されると言っても過言ではない。鉄鉱石、ニッケル、銅、アルミニウムの鉱物資源の価格も中国の需要で大きく変化する。

 金の産出量も、中国に次いで世界2位だ。3月の金の輸出は同225%増の36億ドルで、香港や英国への輸出が多かった。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、感染源とされる武漢市をはじめ、中国国内全域の工業都市で生産がストップしていた。その影響もあり、2月の貿易収支は、前月比8%減となる約43億6,100万豪ドル(約2,917億円)の黒字だった。

 3月に入り、閉鎖していた中国の工場が再稼働したことで、貿易黒字の大幅増に繋がった。

●今後の見通し 豪ドルはどうなる?

 中国経済が本格的に回復し始めれば、オーストラリアの輸出にも好影響を与える。経済成長にもプラスに働くが、3月下旬から導入されている経済封鎖の影響によるマイナスが上回り、第2四半期のGDPが大きく落ち込むことは避けられない。

 オーストラリア準備銀行は、今年上半期のGDPは10%落ち込むと予想している。

 2020年に入ってから、先進国通貨の中でも豪ドルの下落が目立っていた。昨年秋からの森林火災が大きく影響していたためだ。

 森林火災は鎮火したが、今回の新型コロナウイルスの影響で、さらに豪ドルは下落し、一時は1豪ドル=60円を割り込む場面もあったが、5月に入り、70円近辺まで回復している。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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