ラストで最高視聴率を更新、ドラマ『あなそれ』が伝えたかったこと

2017年6月21日 19:07

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自分の人生さえ決められなかった美都だが、結婚という「失敗」を経験することで大きく価値観を変えていく過程が描かれるドラマとなった(c)TBS

自分の人生さえ決められなかった美都だが、結婚という「失敗」を経験することで大きく価値観を変えていく過程が描かれるドラマとなった(c)TBS[写真拡大]

■美都の運命に注目が集まった『あなそれ』最終回


 2017年4月期にスタートしたドラマ『あなたのことはそれほど』が、6月20日に最終回を迎えた。美都(波瑠)の行動に共感できない視聴者も多くいたようだが、ラストに向かうにつれて視聴率を伸ばした怪作。最終話では14.8%を記録することになったが、現代における「恋愛」や「結婚」について一石投じるような内容に感じた。

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■『あなそれ』最終回の概要


 妊娠検査薬を使ったみたが、子供が妊娠していないことがわかった美都。しかし、涼太(東出昌大)とは離婚の話を進めており、すでに家からも引っ越しをすましていた。不倫相手だった光軌とも連絡を取ることが憚られ、狭い部屋で孤独を感じる日々が続いた。

 しかし、離婚を進めていたはずの涼太は「最後の晩餐をしたい」と美都に連絡をしてくる。これで最後だと考えた美都は彼の要望に応じることにしたが、その中で涼太のことを好きな自分がいたことに気付く。それでも離婚を決めた美都は、涼太に離婚届けを書いてもらった後に役場に届けてもらうことにする。

 その一方、光軌は麗華(仲里依紗)に愛想を尽かされ、子供を連れて消えられてしまう。彼女は実家に戻っていたのだが、引き戻そうとやってくる光軌を冷たくあしらう日々が続く。それでも光軌は懸命に説得を試みるが、「すべては徒労だ」と麗華から許しをもらえそうになかった。それでも麗華ともう一度やり直したい光軌は、何度も彼女の元を訪れて誠意を示そうとした。

■タイトル名を述べたのは涼太だった


 行き場のない美都は母親である悦子(麻生祐未)と結婚に関する話をするが、やはり意見がかみ合うことはなかった。その中で、悦子は涼太の家に向かうことがあったが、彼はまだ美都のことを諦めていないようだったと話しを聞く。心配になった美都は小田原(山崎育三郎)に相談すると、会社にもずっと来ていないようだった。

 美都は涼太が行きそうな場所に心当たりがあり、彼の元を訪れる。美都の予想通り涼太を発見し、彼に対して「今更こんなこと言う資格ないけど、涼ちゃんが望むならもう一度」と言葉を掛ける。その言葉に対して涼太は「同情で恋愛はできない。みっちゃんに気持ちがあるように僕もあったけれど、気づかなかった」と告げる。そして、「今の気持ちは、みっちゃんのことはそれほど」と関係を断つ宣言をする。

■現代人の価値観に対するアンチテーゼのようなドラマ


 不倫をした美都と光軌には制裁が下り、お互いの価値観や人生に大きな変化を与えた。ドラマのラストでは不倫後の人生についても少し触れていたが、第1話の2人とは別人のような価値観を感じられるものとなっている。

 特に、波瑠演じる美都は「~をすれば幸せになれる」と思い込んでいる現代人を濃縮したようなキャラクターになっていた。今回はそれが「運命の人」だったが、「仕事」や「勉強」でも同じである。自分が何か1つの価値観だけで推し量り、別の生き方を許容できないことで、まるで成長が止まったような人間だった。しかし、母親や結婚相手としっかり触れ合うことで、失敗はしたものの人間的な成長が感じられた。

 『あなたのことはそれほど』は不倫劇を楽しむというよりも、現代に生きる人たちに不倫を通して別の何かを伝えたいドラマに見えた。その「何か」については、見た人それぞれが別のものを感じられる良作だと思われる。(記事:藤田竜一・記事一覧を見る

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