NYタイムズは「中東情勢の激変がイランを大国にする」と指摘

2011年2月28日 11:00

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

菅政権の中東対応は不十分だ。NYタイムズは「中東情勢の激変がイランを大国にする」と指摘している。チュニジア、エジプト、バーレンそしてリビアと続いている北アフリカ、中東、アラブ世界の『民衆の叛乱』。

菅政権の中東対応は不十分だ。NYタイムズは「中東情勢の激変がイランを大国にする」と指摘している。チュニジア、エジプト、バーレンそしてリビアと続いている北アフリカ、中東、アラブ世界の『民衆の叛乱』。[写真拡大]

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  菅政権の中東対応は不十分だ。NYタイムズは「中東情勢の激変がイランを大国にする」と指摘している。

  チュニジア、エジプト、バーレンそしてリビアと続いている北アフリカ、中東、アラブ世界の『民衆の叛乱』。これは数十年に亘る独裁体制を打破する歴史的な民主化運動であり、また、アメリカが主導するグローバル経済体制への『一つの反逆』でもある。さらに、先進国への道をひた走る、中国、インド、ブラジル等の新興国にとっても、自らの足元を真剣に見直さざるを得ない局面である。わが国においても、この地域との経済的外交的紐帯からすれば、極めて重要な対応が必要となるにもかかわらず、政治はこの中東情勢に極めて無関心である。予算審議と政局にかまけているとすれば、これは日本経済と外交にとって大きな損失になる。マスメディアも事件報道はするものの、この『激変』についての分析は不十分だ。その点、中東地域に重大関心を有するアメリカのメディアは敏感であり、広視覚的に報じており、25日のニューヨークタイムズは「中東の混乱はサウジアラビアの影響力低下を余儀なくさせ、イランの進出を招く」と、以下の通り報じている。

  専門家たちはアラビア世界を揺るがし拡大する暴動は、イランのポジションを強め、ライバルであるサウジアアラビアのポジションを弱めたと述べる。また、アナリストたちによると、暴動の影響について最終的な分析をするのは早いが、イランは既に彼らの強敵であったアラビアのリーダ達の弱体化から利益を得、自分達の影響力を強め始めている。今週イランは1979年の革命以来、初めてエジプトの許可を得た上で、スエズ運河経由で2隻の軍艦を北アフリカに差し向けた。

  アメリカの同盟国であり、またシーア派のイランと地域の影響力争いを続けるスンニ派の国であるサウジアアラビアは、今や混乱状態にある。アブドゥッラー・サウジアラビア国王は水曜日、若い人々の結婚、住宅購入、ビジネス開始を応援するため社会保障を10億ドル増加すると宣言した。これは地域で起こっている反対運動や暴動を弱めるための作戦だと見られている。

  アブドゥッラー国王は、バーレーンのハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王と面談し、多数派であるシーア派による政治的暴動について論議した。サウジアラビアとバーレーンのスンニ派指導者たちは、シーア派の国民はイランに対して忠実であると指摘している。しかしシーア派の国民は、そのような意見は党派心の強い緊張感を広げ、「民主主義反対」を正当化する見方だと強く非難した。

  暴動は国内の関心事から生まれる。しかし専門家達は、中東の地域的範例を三つの国、つまり西側諸国と、西側と同盟を結ぶイスラエルと、そしてイスラエルと敵対する(ハマス、ヘズボラを含む)に分けている。エジプトのムバラク大統領は辞任を余儀なくされ、ヨールダンのアブドゥッラー国王は自らの王国で起こっている混乱を鎮圧しようと努力しているのに対し、サウジアラビアはアラブ地域に起きているすべての問題に関して、解決する役割を担わされている。

  ランド(RAND)研究所の国際関係の専門家であるアリレザ・ナデル氏は、『サウジアラビア人達はイラク、シリア、レバノンに取り囲まれていると心配している。イエメンは不安定な状況で、バーレーンはとても不安定だ。サウジはイランがサウジに最も関心を持っているという事を心配している。そしてイランは地域的不安定さを上手く利用することを既に始めている』と述べている。また、アメリカ政府の地域アドバイザーは、匿名を条件に、『イランはこの状況で大きな勝利者となった』と述べる。

  しかし、イランがやり過ぎたり、広がるアラビアの民衆運動が地域内でのイランの干渉に反対し始めれば、イランの立場(今の有利な状況)は変わり得る。そうなれば、もちろんプロイラングループがエジプト、チュニジアと他の地域の政治を独占するようになることをはない。だが今のところ、イランとシリアは強気である。カタールとオーマンがイランの味方になりつつあり、エジプト、チュニジア、バーレーンとイエメンは既にイラン寄りである。

  『もしアラビアのプロアメリカンな規則が、大きな国民の暴動によって試されているのなら、これからのアメリカとの戦略協定には非協力的になっていくだろう』とアメリカ国家安全保障会議のスタッフフリント・レベレットとヒラリーマンがメールに記した。加えて「イランの指導者達は、『敵であるアメリカに対し、イスラム共和国の為に地域バランスは決定的に変わってきている』と主張している」と述べる。困難な経済、大幅な失業率、強力な反政府勢力の存在などの国内問題が存在するにも関わらず、イランの立ち位置は強い。

  専門家達は、イランの核兵器プログラムを抑制させるという課題に、アメリカは目下チャレンジしているとみている。だが、ナデル氏は『最近の出来事はイランの核兵器プログラムから焦点を外し、地域的や国際的なコンセンサスの認可に焦点が集まった』と述べる。

  イランのこの存在感の高まりは、9.11事件の後遺症から立ち直り、緩やかな統合に基づき成長してことの表われである。アフガニスタンのタリバン、イラクのサッダーム・フセインを追い出したことで、アメリカはイランの二つ大敵を取り除いた。この偶然な結果によって、イランは今では両方の国の『主役』になっているのである。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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