ロヒンギャ難民キャンプで疥癬が大規模流行──有病率7割に達する地域も
配信日時: 2023-06-08 13:50:29
バングラデシュの難民キャンプに暮らすロヒンギャの間で、皮膚感染症である疥癬(かいせん)が流行している。5月末に明らかにされた調査結果では、ロヒンギャ難民の約40%が罹患し、一部のキャンプでは70%に達していることがわかった。国境なき医師団(MSF)は、人道援助に頼って生きるしかない人びとが、度重なる援助資金の削減により、過密で不衛生な環境での暮らしを強いられていることが原因であり、保健クラスターと資金拠出者などは、疥癬の治療と予防、キャンプにおける水と衛生環境の改善を図る必要があると訴える。
[画像1: https://prtimes.jp/i/4782/631/resize/d4782-631-52a5a5ba33f03479ad6c-0.jpg ]
多すぎる患者、治療を断るケースも
調査は世界保健機関(WHO)が主導するキャンプの保健クラスターが疥癬の有病率を調べたもので、世界最大の難民キャンプ群のあるコックスバザールで実施された。疥癬は微細なダニが皮膚の上層部に潜り込み、そこに留まって卵を産むことで起こる皮膚感染症。皮膚に強いかゆみを引き起こし、発疹に至る。薬で治療できるが、過密状態で水や衛生設備が十分でない場所で容易に感染を広げるため、再感染する可能性がある。
有病率の高さは、MSFが昨年3月以降、診療所で行った20万件余りの診療実績からも見て取れる。MSFは、フォローアップや家庭訪問を含む、疥癬専門の治療活動を行っているが、複雑な症例や、患者数が多すぎることもあり、患者によっては治療を断らなければならない状況が続いている。
昨年6月にキャンプの診療所を訪れたMSF日本の渉外担当シニアオフィサー、堀越芳乃は、「難民には移動制限があり、診察を受けるために居住区域を越えて移動することは困難です。たとえ診療所に来られたとしても、患者数が多く診察に時間がかかることも治療の障壁となっています」と話す。
援助資金の減少が招いた流行
[画像2: https://prtimes.jp/i/4782/631/resize/d4782-631-3d4419d92dfbc66164c8-1.jpg ]
国際社会からの援助資金の減少による影響も大きい。堀越は、「井戸やトイレ、シェルターが以前よりも適切に管理されなくなっていると聞きます。衛生が保たれた生活環境を維持し、医療へのアクセスを確保していくことが疥癬対策としても必要です」と指摘する。
バングラデシュにおけるMSFの活動責任者、カーステン・ノコは次のように訴える。「ロヒンギャは迫害や暴力によって故郷を追われた人たちで、キャンプでは法的地位も、働く権利もなく、人道援助に頼るしかありません。しかし、度重なる資金削減により、彼らが頼る援助は何度も縮小しています。疥癬の流行は、その結果なのです。MSFは、保健クラスター、資金拠出者、その他すべての関係者に対し、大規模な疥癬治療と予防、そしてこの集団感染を制御不能なまでに拡大させているキャンプのひどい水と衛生の状況を改善するため、包括的で多方面にわたる対応をとることを強く求めます」
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