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上値重い南アランド【フィスコ・コラム】
*09:00JST 上値重い南アランド【フィスコ・コラム】
米国の雇用統計やインフレ指標の鈍化を受け、ドル買いの勢いは一服。それに伴い新興国通貨には底堅さが戻りつつあるものの、南アフリカランドについては上値の重さが目立つ展開です。経済情勢は改善しているものの、国内の治安悪化が新たな懸念材料として浮上しているためです。
直近の米雇用統計や消費者物価指数(CPI)の伸び率鈍化により、米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ観測は後退。ドル高圧力が和らぐ中、利回りを求める資金は再び新興国市場へと向かい始めています。南ア準備銀行(SARB)が高金利政策を維持していることも投資家から評価され、ランドはドルに対し16.30ランド付近で下げ渋る展開です。南ア資産への評価改善が、この水準を支えていると言えるでしょう。
背景には格付け機関の判断の変化があります。フィッチは先月に南アの格付けを引き上げ、ムーディーズも見通しを「ポジティブ」に変更しました。財政赤字の縮小や債務の安定化に加え、電力・物流分野における構造改革が着実に成果を上げ始めたことがその理由とみられます。高い政策金利と相まって海外資金を呼び込みやすい環境が整い、ランド相場の下支え要因となっています。
もっとも、格付け改善がそのままランド高に直結するわけではありません。格付け機関が重視するのは政府の財政運営や債務返済能力ですが、外国為替市場ではそれに加え、政治・社会の安定性も同等の重みを持つ判断材料となります。市場は国家の信用力を評価する一方で、社会全体を覆うリスクにも常に目を光らせているのです。
その懸念材料として表面化したのが、反移民デモに端を発する社会不安です。一部地域では外国人経営の店舗が襲撃や略奪、放火の被害に遭い、治安悪化への警戒感が広がっています。高い失業率や所得格差への不満がくすぶる中で起きた事態だけに、短期間での収束は期待薄との見方も。社会不安が長引けば、企業活動や観光業、さらには海外投資にも波及し、ランド相場の重荷となりかねません。
新興国通貨にとって、社会情勢は経済ファンダメンタルズに劣らぬ重要な判断材料です。海外資金の流入が続く限りランドは下げ渋る見通しですが、デモが全国規模に拡大し、企業活動や外国人投資に実害が及ぶなら、これまでの評価改善に水を差しかねません。南アフリカ経済が現状の改善基調を維持しつつ、治安の安定化をどこまで実現できるか——投資家の視線は、今後一段と厳しさを増していくと考えられます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。《CN》
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