戸田工業 Research Memo(6):MLCCやLTOバックアップテープなどAI需要を取り込み次の成長ステージへ

2026年7月15日 12:46

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記事提供元:フィスコ

*12:46JST 戸田工業 Research Memo(6):MLCCやLTOバックアップテープなどAI需要を取り込み次の成長ステージへ
■中長期の成長戦略

● 中期経営計画と進捗状況
(1) 中期経営計画「Vision2026」の進捗状況
戸田工業<4100>は2024年5月に中期経営計画「Vision2026」を策定し、事業ポートフォリオマネジメントの強化を軸とした収益構造改革を推進している。最終年度である2027年3月期には営業利益率5.0%、ROE11%、自己資本比率29%などをKPIとして掲げているが、現時点では達成には課題を残している。

ただし着目すべき点は、数値目標の達否そのものではなく、事業ポートフォリオ改革が着実に機能し始めている点にある。経営陣は中計最大の成果として、事業ポートフォリオマネジメントの浸透を挙げている。不採算事業であったTAMの解散・清算やBTBMからの撤退は、その象徴的な事例と言える。かつては成長事業として期待されていたLIB関連事業から迅速に撤退判断を下し、経営資源を成長分野へ再配分したことは評価できる。

また、棚卸資産削減やCCC改善など資本効率向上への取り組みも進んでいる。2026年3月期は営業黒字化を達成しており、事業ポートフォリオ改革が収益改善として顕在化し始めた段階と評価できる。

(2) 誘電体材料が最大の成長ドライバー
今後最も期待できる事業の1つが誘電体材料である。

誘電体材料はMLCCの主要材料として使用される。MLCCはスマートフォン、自動車、サーバーなどあらゆる電子機器に搭載されるが、近年は生成AIの普及に伴うAIサーバーの需要拡大が新たな追い風となっている。

同社によれば、同事業の2026年3月期売上高は過去最高を更新した、とのことである。2024年3月期比では約1.9倍まで拡大している。AIサーバーでは高性能化に伴いMLCC搭載数量が増加しているほか、スマートフォンでも高機能化が進んでいる。また、MLCCそのものも小型化・多層化・低背化が進んでおり、より微細で均一な粒子が求められている。

同社は水熱合成技術による微粒子製造を強みとしており、この分野で高い競争力を有する。AI関連需要拡大の恩恵を直接享受できる数少ない材料メーカーの1社として、中長期的な成長余地は大きい。

(3) 磁石材料は安定成長が続く見通し
磁石材料は同社最大の事業で2026年3月期の売上高は114億円である。

同社の特徴は、磁性粉末だけでなく、コンパウンド、成形体まで一貫供給できる点にある。2021年に中国の成形体メーカーを買収したことで、材料メーカーから部品メーカーに近い領域まで事業領域を拡大した。

今後はEV向け熱マネジメント用途が成長ドライバーになる見通しである。特にウォーターポンプ向け需要の拡大に期待している。また、中国、日本、タイの複数拠点による供給体制を構築しており、顧客の脱中国ニーズにも対応可能である。

足元では中国市場減速の影響を受けているものの、前期は原価低減や歩留まり改善によって利益率改善を実現した。今後も同社の安定収益源として成長が期待される。

(4) 軟磁性材料は最大の課題であり最大のアップサイド
一方で、経営陣が最も課題として認識しているのが軟磁性材料である。

同事業は中国市場における価格競争激化の影響を大きく受けた。同社によれば、中国市場で「内巻」と呼ばれる過当競争が発生しており、韓国子会社TDMI経由の販売も影響を受けたと言う。

しかしながら、経営陣は軟磁性材料の「復権」を重要テーマとして掲げている。AIサーバー向け低損失メタル材料や車載向けノイズ対策材料など、成長市場は依然として存在している。加えて、新材料ビジネスも立ち上がりつつある。

2027年3月期は営業損失が大幅に縮小する計画であり、今後の収益改善余地は大きい。弊社は、同事業が中長期的な利益成長のカギを握ると考えている。

(5) 記録材料はAI時代の恩恵を受ける有望分野
生成AIの普及により世界中でデータ量が急増している。一方で、すべてのデータをHDDやSSDで保存することはコスト面や消費電力面で非効率となる。このため、長期保存用途としてLTOバックアップテープが再評価されている。

同社は記録材料事業において、LTOバックアップテープ向け酸化鉄材料を供給している。市場プレーヤーは限られており、高い参入障壁を有する。同社によれば、受注は大幅に増加しているという。

AIサーバー需要拡大というと誘電体材料に注目が集まりやすいが、記録材料も同様にAI時代の成長恩恵を受ける事業として注目される。

(6) 環境関連材料は2030年に向けた長期成長テーマ
環境関連材料では、CCUS及びDMR(CO2フリー水素製造)技術の事業化を進めている。CCUSは脱炭素社会の実現に向けて世界的に注目されている分野であり、日本でもGX政策の重点テーマの1つとなっている。同社は酸化鉄技術を応用したCO2回収材の開発を進めており、安価なナトリウムと鉄を用いた回収技術の実用化を目指している。また、回収したCO2を有効利用する技術開発も進めている。

また、DMRではメタンからターコイズ水素とカーボンナノチューブを生成する技術を開発している。北海道豊富町では実証試験も進んでいる。

現時点で業績への寄与は限定的であるものの、2031年3月期には売上高10億円、営業利益1億円を目標としている。事業化が実現すれば、同社にとって新たな収益の柱となる可能性がある。

弊社は、同社の中長期戦略の本質は、成長分野への経営資源集中にあると考えている。誘電体材料、磁石材料、記録材料という収益成長分野に加え、軟磁性材料の収益回復と環境関連材料の事業化が進展すれば、収益性及び資本効率の改善余地は大きいと考えられる。

■株主還元策

連結業績の推移を考慮したうえで早期の復配を目指す

● 株主還元策
同社は2019年3月期に40.0円の配当を行って以来、業績低迷もあり無配を継続している。2026年3月期も無配を継続した。2027年3月期についても無配を予想している。将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、早期の復配を目指しているが、復配には今しばらく時間を要する見込みだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)《HN》

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