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アホウドリを首に巻いた水夫の話 詩から生まれた英語イディオム
英語には「albatross around one's neck」というイディオムがある。直訳すれば「首に巻いたアホウドリ」だが、「逃れられない重荷」「呪いのように付きまとう負い目」を意味する英語表現だ。
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今回は、一篇の詩から生まれ、現代の英語にまで生き続けているこのイディオムを紹介したい。
■なぜアホウドリなのか
なぜ重荷や負い目の比喩としてアホウドリが出てくるのだろう。
重い荷物を首にかけることの比喩なら、アホウドリでなくても、大型犬でもイノシシでも、あるいは、首に巻きつけるという点では大蛇の方がしっくりくる。にもかかわらず、アホウドリなのは、このイディオムが一篇の詩に由来するからだ。
サミュエル・テイラー・コールリッジに「The Rime of the Ancient Mariner」(1798年)という長編詩がある。「老水夫行」や「老水夫の死」、「年寄り船乗りの歌」などの邦訳がある詩だが、要約すれば、航海中に船を追いかけてきたアホウドリを弓矢で殺した老水夫の話だ。
God save thee, ancient Mariner!
From the fiends, that plague thee thus!—
Why looks't thou so?"—With my cross-bow
I shot the ALBATROSS.
「神よ、あの老水夫をお救いください!
こうも悩ませる悪魔の手から!
なぜそんな顔をしているのか?」——私は弓で
アホウドリを射た。
船乗りたちの間では、船を追うアルバトロスは幸運をもたらすと信じられていた。そのため、アホウドリを殺した老水夫を、仲間の船員たちは厳しく罰する。
Ah! well a-day! what evil looks
Had I from old and young!
Instead of the cross, the Albatross
About my neck was hung.
ああ、悲しいかな!老いも若きも
なんと冷たい眼差しを私に向けたことか!
十字架の代わりに、アホウドリが
私の首にかけられた。
■一篇の詩が現代語に残したもの
文学作品に起源を持つ英語イディオムは少なくない。
ただ、「albatross around one's neck」の場合、アホウドリを重荷とする発想そのものがこの詩における創作である。概念ごと一篇の詩が生み出したという意味では、かなりレアなケースだ。
実際、船乗りの間でアホウドリが縁起の良い鳥とされていた確証はなく、むしろ航海中に殺して食べたという記録が残っている。
つまり、この迷信自体、コールリッジが詩のために創作した可能性が高い。それにもかかわらず、この詩におけるイメージによって、「アホウドリ=逃れられない重荷」という意味を帯びて定着したのだ。
「The Rime of the Ancient Mariner」が特異なのは、18世紀に書かれた詩でありながら、今もさまざまなジャンルに取り上げられている点だ。文学、音楽、映画、ゲームなど枚挙に暇がない。
一篇の詩が、時代もジャンルも超えて参照され続けるというのは、決して当たり前のことではない。このイディオムが今も生きているのは、この詩自体が今も生き続けているからだと言えるだろう。
例文
The failed investment became an albatross around his neck, affecting every business decision he made thereafter.
(失敗した投資は彼にとって逃れられない重荷となり、その後のあらゆるビジネスの判断に影を落とした)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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