日精鉱 Research Memo(6):創立100周年、「第2の創生」に向けた基盤づくりのための挑戦と変革

2026年1月6日 12:06

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記事提供元:フィスコ

*12:06JST 日精鉱 Research Memo(6):創立100周年、「第2の創生」に向けた基盤づくりのための挑戦と変革
■中長期の成長戦略

1. 成長戦略の枠組み
日本精鉱<5729>の成長戦略は、基本理念、長期ビジョン、中期経営戦略という三層構造で設計されている。

まず基本理念として、環境・安全・成長を最重要課題と認識し、社会との共存を図り、豊かで快適な生活環境の創出に資するモノづくりを担うことを掲げる。この理念を具体化するため、2035年の創立100周年を見据えた長期ビジョンを設定している。独自技術と高付加価値を追求しグローバル展開に挑むこと、人的資本の充実と挑戦人材の育成、社会貢献とサーキュラーエコノミー実現への取り組みを三本柱とし、ROE10%以上の持続的達成を長期的財務目標としている。

基本理念と長期ビジョンを踏まえ、2025年4月から2028年3月までを対象とする中期経営戦略では、「第2の創生(創立100周年)に向けた基盤づくりのための挑戦と変革」をテーマに掲げる。同社は90周年を節目として再成長フェーズに移行し、既存事業の深化と新事業の創出を通じて企業構造の変革を図る。

2. 中期経営戦略の骨子
同社の中期経営戦略基本方針は四つの柱から構成されている。

(1) グループ連携のさらなる強化
ガバナンスの強化、財務経理、人材育成、情報セキュリティなどの横断的連携を強化し、経営効率と統制の両立を図る。特に研究開発機能の共有やグループ全体の情報セキュリティ教育の一体運用を通じて、組織全体の協働基盤を強化する。

(2) 既存事業の競争力強化とグローバル展開への挑戦
アンチモン事業では、原料調達の多様化と高付加価値製品の拡販を進め、金属粉末事業ではつくば工場の生産ライン拡充を生かし、電子部品向けや金属粉末の拡販、再生処理技術の確立を目指す。

(3) 最適な事業ポートフォリオの構築と新規事業の創出
新設の技術開発部を中心に、電池材料など成長分野向け金属硫化物の新製品開発を推進する。また、M&Aを活用して樹脂コンパウンドや非鉄金属リサイクルなど新規分野への展開を進める。

(4) 人的資本の充実とESGへの取り組み
有給休暇取得率、平均残業時間など具体的KPIを設定し、働き方改革を推進するとともに、気候変動対応やリサイクル率向上などサステナビリティ指標も重視する。

3. 重要KPI
中期経営戦略では、アンチモン地金価格の変動により業績がボラタイルになりやすい同社の事業特性を踏まえ、中経3年間の平均値をKPIとして設定している点が特徴である。

営業利益は前中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の平均17億円から、中期経営戦略では平均30億円へと約1.8倍の拡大を見込む。ROEは平均11%に対し10%以上を安定的に維持する方針である。これは短期的な市況変動の影響を排除し、リスク調整後の実力収益力を測定する意図によるものである。特にアンチモン相場の想定を2026年3月期39,500ドル/トンから翌期以降18,000ドル/トンへと引き下げており、慎重な業績見通しの中でも安定的利益水準を確保する設計となっている。

設備投資計画については、成長基盤構築を目的として前中期経営計画比約2倍の規模へ拡大している。前中期経営計画3年間の累計投資額は25億円(アンチモン事業5億円、金属粉末事業20億円)であったのに対し、中期経営戦略では51億円(アンチモン事業29億円、金属粉末事業22億円)を計画している。アンチモン事業では電熱炉転換や省人化・DX、金属粉末事業では高機能粉末の量産化と環境対応設備の導入を進め、競争力と持続性を兼ね備えた生産体制を整備する。これらの投資は期間利益と自己資本を中心に賄い、財務健全性を維持しながら成長投資を推進する方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)《HN》

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