「猫のような泥棒」とは? 猫にまつわる英語イディオム (12)

2025年6月23日 15:52

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 猫と言うと、ゴロゴロとよく寝ているイメージがあるが、それと同じくらい何かをこっそり盗むようなイメージがあるのではないだろうか。それは日本に限らず、英語圏でも同様だ。

【こちらも】「暗闇では猫はみな灰色」とは? 猫にまつわる英語イディオム (11)

 今回紹介するイディオムは、そんな猫の抜け目ないイメージから生まれた表現である。

■Cat Burglar

 「cat burglar」とは、直訳すれば「猫のような泥棒」とでも言える。日本語にも「泥棒猫」という言葉があるが、まったく意味が違うので注意したい。

 「cat burglar」とは<、泥棒を形容する言葉だが、単なる泥棒ではない。その最大の特徴は、猫のように静かで身軽に、高いところや窓から建物に忍び込む巧妙さにある。

 ドアや窓を壊すような荒っぽい手口ではなく、人知れず壁をよじ登ったり屋根伝いに侵入したりなど、まさに猫のような動きにたとえられる泥棒のことだ。

 盗みの対象としては、宝石や美術品など高価なものが多いのも1つの特徴だ。映画や小説、ニュースなどでも、そういう窃盗犯がしばしば「cat burglar」と呼ばれている。

■由来

 「cat burglar」の由来には、実際の事件が関係している。

 記録によると1907年、ロンドン郊外で数々の窃盗事件を起こしたArthur Edward Youngが、「the cat burglar」と呼ばれた最初の人物だ。

 当時の新聞が、Youngの高い窓から侵入する手口やその身のこなしを「猫のようだ」と評したことがきっかけで、この呼び名が一気に広まった。

 それ以降、壁や屋根を巧みによじ登り、人の目をかいくぐって侵入する窃盗犯をの代名詞として、「cat burglar」は英語圏で定着した。実際の泥棒だけでなく、フィクションの世界でも好まれる呼び名だ。

 最近では、本物の猫を指すケースもよく見られる。SNSでは、何年にもわたって衣類やぬいぐるみを集めていた猫が、「cat burglar」としてと地元の人気者になったこともある。

 本来は人間の泥棒を猫にたとえた言葉だったはずが、猫そのものを指すという逆転現象が起きているのだから、言葉の変化は猫の気まぐれ同様、予測がつかない。

 例文
 ・The police finally caught the cat burglar who had stolen several paintings from the gallery.
 (ついに警察は、その美術館から複数の絵画を盗んだ「cat burglar」を逮捕した)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る

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