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暗闇で猫の毛色を見分けることはできるだろうか。明るい場所では黒や白、縞模様の違いがはっきりしていても、光が消えればすべては灰色にしか見えなくなる。
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英語には、まさにそんな光景をそのまま比喩に取り込んだことわざがある。それが今回取り上げる、「all cats are grey in the dark」という表現だ。
■All cats are grey in the dark
「all cats are grey in the dark」を直訳すれば、「すべての猫は暗闇では灰色」となる。つまり暗闇という状況下では、誰もが等しくなり、外見の違いは問題にならないという意味だ。
このことから、英語解説サイトや学習記事には、「外見の違いは問題ではなく、誰もが等しく平等だ」といった、やや教訓的な意味合いとして解説するものが多く見られる。
もちろんそうした意味でも使われることわざだが、実際には、そうした善意の解釈だけにとどまらないことに注意が必要だ。
■性的なニュアンスを伴う表現
この表現が広く知られるきっかけは、アメリカ建国の父とも言われるベンジャミン・フランクリンによる、手紙の体裁をとったエッセイにある。
この中でフランクリンは、「なぜ年上の女性を恋人に選ぶのか」という問いに対し、「“...and as in the dark all Cats are grey, the Pleasure of corporal Enjoyment with an old Woman is at least equal, and frequently superior...(そして暗闇では、すべての猫が灰色であるように、年配の女性との肉体的な楽しみも少なくとも同等か、それ以上である)」と記している。
つまり彼は、夜の営みにおいて、年齢や美醜といった外見的な差異は意味をなさないと言っているわけだ。このため現代でも、このことわざにはしばしば性的な含みが見られる。特に成人同士がこの表現を使う際、やや際どいニュアンスを帯びることもあるので注意が必要だ。
とはいえ、この表現が初めて現れたのはフランクリンよりはるか昔、16世紀のイングランドにさかのぼる。前回の「a cat may look at a king」でも触れた、イギリスの劇作家John Heywoodが、1546年刊行の格言集で「when all candles be out all cats be grey(すべての灯が消えれば、すべての猫は灰色になる)」と記しているのだ。
そのほか、たとえば『ドン・キホーテ』にも同じ趣旨の言い回しが確認できるように、この種の表現はヨーロッパの広い地域に古くから伝わってきた。本来は、外見へのこだわりや社会的序列を笑い飛ばす大衆的な知恵が込められたことわざと言えるだろう。
例文
・He said, “All cats are grey in the dark,” implying that appearances didn’t matter to him.
(彼は「暗闇ではすべての猫が灰色だ」と言って、見た目など気にしないとほのめかした)(記事:ムロタニハヤト・記事一覧を見る)
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