TACOトレードはいつまで続くのか?

2025年6月11日 09:19

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●底堅い米国株

 米国株の底堅さが目立つ。4月7日に、トランプ関税による大幅下落を記録したが、2カ月余りで元の株価に戻りつつある。

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 トランプ米大統領による高関税は90日間の停止となっているが、再燃する可能性も燻っており、米中貿易摩擦の緊張も緩和されていない。

 英紙フィナンシャル・タイムズのアームストロング氏が言い始めた「TACO(Trump Always Chickens Out)トレード」(トランプはいつでもビビって逃げる)という造語が、市場では定着しつつある。

 TACOトレードは、トランプ氏の関税政策での朝令暮改ぶりを皮肉り、4月から繰り返される、高関税を課しては引っ込めるということを前提とした投資である。

 今後もTACOトレードが繰り返されるのだろうか?

●TACOトレードでも底堅さの要因

 4月には、相互関税の発動で下落、発動から13時間での停止で買い戻された。FRBパウエル議長に解任をちらつかせて利下げを求めた時も、1300ドル以上下落する場面もあった。

 これらは先行きの経済や景気への不安から売られていたが、エヌビディアの好決算や6月6日に発表された5月の雇用統計が好調だったことが好感されて、買われている。

 企業業績も好調で、インフレ指標も良好、懸念された経済の影響は今のところ確認されておらず、株価も上昇している。

●これからもTACOトレードは続くのか?

 トランプ関税については相場に“免疫”がついてきたのか、トランプ氏の言動にも以前ほど過剰な反応を見せることは減ってきている。

 ただし、関税に外でもTACOトレードは続くと考えられる。

 トランプ政権肝いりで「大きく美しいひとつの法案」と自称する大型減税法案が成立すれば、2034年度までに約2兆4000億ドル(約340兆円)の財政赤字が増加するという試算もある。

 ムーディーズが格下げするなど、米国の財政について神経質な状況の中、新たな火種となる可能性も否定できない。

 この法案について、DOGE(政府効率化省)の役職を終えたテスラのイーロン・マスク氏が、「バラマキ法案は不快な忌まわしいもの」とSNSで批判すると、トランプ氏も「大変失望している」と応酬した。

 さらにトランプ氏は、マスク氏が政府から受け取る補助金や契約を終わらせることを示唆。その結果、テスラ株は約15%下落し、時価総額も22兆円が消失する事態となった。

 パウエル氏の後任問題もあり、まだまだ形を変えた部分的なTACOトレードは続きそうで、トランプ氏の言動に振り回されることになりそうだ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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