トヨタグループで続く不正発覚、ブランドを直接毀損したダイハツ問題で事態は正念場! (1)

2023年5月10日 16:08

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 ケチのつき始めは、子会社の日野自動車(日野)で発覚した排ガスデータの改ざん事案だった。22年3月、日野は国内工場で製造された中大型のバスとトラックから排出される排気ガスのデータを、国土交通省に提出する際に(型式認証の基準値内に収まるように)不正な工作を行っていたことを公表した。

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 型式認証とは、法規・技術要件・安全性に係る最低限度の基準を満たした製品に対して、監督官庁が与える販売許可としての性格を持つ。言うなれば、当該車両に求められた基準を満たしているという合格証のようなものだ。

 排ガスの評価試験などはメーカーが適切に行い、得られたデータを取りまとめて国交省に提出する。国交省はそのデータを元に認証の判断をするという、信頼関係を大前提にした制度だ。

 日野が行った不正は、(1)3機種のエンジンで(2)排ガスの試験中に浄化装置を(都合の良い結果が出る)別の装置に交換し(3)燃費測定装置の設定を意図的に変更した、というものだ。

 不正の対象となる車は最大で11万台と報じられ、22年9月にリコールされた車両は2万1100台に及んでいる。

 行政処分は既に3度を数え、国内向けの概ね全車種が出荷できない時期すらも経験した。対象となるエンジンを搭載していた大・中型トラックは、再度型式証明を取得することが必須であるため、車種によっては23年末から24年にまで生産が再開できない見通しにある。

 日野が2月に打ち出した改善策で象徴的なのは、従来は合計で60人だった部門トップの幹部と役員の数を18人にまで削減したことだ。「偉い人が自分の成績を上げるために好き勝手な指示を出していた」ら、不正を引き起こしたという総括で、「船頭多くして船山に登る」という格言を思い出させる。

 22年3月期に847億円の赤字だった連結最終損益は、23年3月期でさらに膨らむことが予想されている。生産が正常化するまでにはさらに1年以上の年数が見込まれているから、あまりに高い授業料だったと言えるだろう。

 日野の場合は、トヨタの子会社になって20年を超えていながら、トヨタイズムが浸透しきれなかった事例だと受け止められていた。

 それに対して、トヨタの本流としての誉れが高い豊田自動織機でフォークリフト向けエンジンの評価試験において、排ガスデータを差し替えていたことが明らかになったのは、日野の不正が発覚してから1年後の23年3月だ。

 同社は1926年(昭和元年)に設立された繊維機械メーカーで、1937年(昭和12年)に自動車部門を分離してトヨタが誕生した。時代が変わって企業規模は逆転したものの、歴史上トヨタの本家であり源流としての存在であることに変わりはない。

 そのトヨタの本家で、1機種のガソリンエンジンでは09年、2機種のディーゼルエンジンでは14年の認証申請時に不正が行われていたから、既に14年間の長きに渡って不正が継続されていたことになる。

 不正の対象となったフォークリフトが約16万台と言われるのに対して、豊田自動織機が21年度に販売したフォークリフトは約1万6500台と報道されているから、不正が継続した期間が14年という点には納得感が高い。

 豊田自動織機もまた型式認証の取り消し処分を受けたから、再度認証を取得するまでは当該エンジンを搭載したフォークリフトの製造や販売は出来ないが、トヨタブランドにつけた傷の重さとは比較にならない。

 リコールを行い、該当エンジンを搭載したフォークリフトの製造販売が出来なくなったという事態を遥かに超えて、「トヨタの本家」で不正が継続していたという事実は極めて重い。(続く)(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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