世界で原発に対する姿勢が一変、日本は「原発過敏症」を克服できるのか? (2)

2022年9月9日 10:49

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 日本政府も現時点で電力の安定的な供給と、脱炭素社会の実現へ向けた目標を両立できる電源が、原子力発電以外にないことを見極めて、再稼働や運転期間の延長、次世代型の原発建設などへの検討を始める。

【前回は】世界で原発に対する姿勢が一変、日本は「原発過敏症」を克服できるのか? (1)

 既に日本における電力の安定供給体制は崩壊同様の状態にある。夏季の電力消費は夕方に膨らむ傾向があり、猛暑に襲われた6月以降、散発的な節電要請が発出された。ユーザーの協力や、お役御免になっていた火力発電所を遮二無二稼働させて、停電という最悪の事態は回避したが、基本的な状況が変わっていない以上、一時を凌いだに過ぎない。

 東京電力福島第1原発での事故を受けて、全ての原発が稼働を停止した。再稼働の条件が原子力規制委員会による安全審査に合格することにして、既に審査をクリアした原発は17基に上るが、実際に稼働しているのは6基に止まる。この結果、東日本大震災が発生する前に総発電量の約30%を占めていた原発のシェアが、2020年度には4%までに縮小してしまった。

 政府が目標としているのは、30年度の温暖化ガス排出量を13年度から46%削減することだが、再生可能エネルギーを極限の37%前後まで引き上げたとしても、20%超のシェアを原発が占めることが必須だ。この原発のシェアは電力各社が稼働を申請した全ての27基が稼働しなければ達成できない。

 8月に岸田文雄首相が「原子力発電所の稼働を17基に拡大する」方針を表明している。全て規制委員会の安全審査をクリアしているのだから、17基を稼働させるのは当たり前の話なのだが、当たり前のことが中々実行できないのが「原発過敏症」とも言える日本の現状だ。

 安全審査をクリアした原発の再稼働を進めることは最優先として、今後は原子炉等規制法が定める原則40年という稼働期間を意識した「寿命」の見極めが必要だ。稼働期間が変わらずに新設されなければ、国内の33基の原発は減少する一方だから、20年に20基になり、60年には5基になる。

 そんな事態になればエネルギー計画が成り立たないから、原発の新設や稼働期間の延長を検討することが必須だ。そもそも、40年という原発の寿命は、東日本大震災当時に政権与党だった旧民主党と野党だった自民党と公明党が合意して決まったもので、専門的で科学的な背景があった訳ではない。政治的な駆け引きにより決められたものだから、今後は科学的な知見をもとにした合理的な稼働期間を定めるべきだ。

 対外的に温室効果ガスの目標達成を謳いながら、国内向けには原発の必要性を的確に伝える努力を惜しんでいては、国民が常時停電の危機に晒されながらも国際的には「ほら吹き」の汚名を被るという、最悪の状況すら想定される。優先順位の設定を間違えてしまうと、背に腹は代えられないという警句も、迫力を持たないことは言うまでもない。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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