全国で増えるゼロカーボンシティと、企業の取り組み

2022年6月12日 17:16

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記事提供元:エコノミックニュース

積水ハウスは事業活動におけるCO2排出量の削減目標を75%に上方修正。その達成に向け、業務用車両の100%電動化や当社事業拠点のZEB化を推進する

積水ハウスは事業活動におけるCO2排出量の削減目標を75%に上方修正。その達成に向け、業務用車両の100%電動化や当社事業拠点のZEB化を推進する[写真拡大]

地球温暖化の主な原因となる温室効果ガスである二酸化炭素の排出量をゼロにしようという、いわゆる「脱炭素」社会に向けた取り組みが世界中で加速している。日本でも、行政や企業での積極的な取り組みが進んでいる。

 環境省によると、2022年4月28日時点で、42都道府県の412市、20特別区、187町、35村の合計696もの自治体が、2050年までに二酸化炭素実質排出量ゼロとなる「ゼロカーボンシティ」の表明をしている。

 例えば、埼玉県所沢市では、地域の廃棄物発電や太陽光発電などで得られる再生エネルギーを主な電源とした、地域発の新電力会社「株式会社ところざわ未来電力」を設立。主に市内の公共施設の電力として活用している。

 また、鹿児島県鹿児島市では、市全体で電気自動車・燃料電池自動車の普及を促進。公用車の電気自動車や燃料電池自動車への切り替えを率先するほか、一般の自家用車に対しても、条件を満たす電気自動車の購入には、最大30万円の補助金を交付する。

 企業のゼロカーボンも、より高度になってきている。その代表的な例が、住宅メーカーの積水ハウスの取り組みだ。同社では5月25日、2030年までに事業活動における CO2排出量の削減目標を従来の50%から75%に上方修正した。その達成に向けた具体的な施策として、グループで保有する約 1 万 1 千台の業務用車両の100%電動化や、住宅事業で培ったノウハウを活かした事業拠点のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化、卒 FIT の住宅オーナーから太陽光発電の余剰電力を買い取って、事業活動に活用する事でRE100を目指す「積水ハウスオーナーでんき」を推進する。

 同グループでは、2008年に2050年までに住まいからのライフサイクル CO2排出ゼロを目指す「2050年ビジョン」を宣言しており、それ以来、事業活動全体において、CO2削減のためのさまざまな取り組みを実施してきた。その結果、2021 年度実績で46.6%削減を達成。さらに目標を75%削減に上方修正することで、世界の気温上昇を産業革命前と比べ 1.5°C以内に抑える世界目標に整合させるという。

 また、2018年に総合化学企業として世界で初めてSBTイニシアチブの認定を取得している住友化学は昨年12月、30年度までの温室効果ガス排出量の削減目標を大幅に上積みし「Well-below 2℃」で改めて認定を取得している。省エネルギーの徹底に加え、愛媛工場内における液化天然ガス(LNG)発電所の建設や千葉工場での高効率なガスタービン発電設備の導入などを計画しており、「1.5℃目標」での認定再取得も視野にいれて、温室効果ガス排出量を30年度までに50%削減することを目指している。

 本田技研工業も、1.5°Cに抑える努力目標を目指し、 グローバルに事業を拡大する一方で、エネルギー使用量とCO2排出量の低減に注力している。工場の新設やリニューアルにあたっては、車1台当たりの生産エネルギーを従来工場比で30% 低減した寄居完成車工場など、最新の省エネルギー技術やノウハウを積極的に導入しているほか、再生可能エネルギーの活用も世界の拠点で積極的に進めており、20年度にはソーラー発電や風力発電などで合計358GWhを活用している。

 脱炭素社会実現のためには、事業の省エネ化はもはや当然で、多くの企業が次の段階に進みはじめている。今後の取り組みにも期待したい。(編集担当:今井慎太郎)

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