下駄が高くなりながらも好調な収益:東亜建設の内情を覗く

2022年5月26日 15:30

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 東亜建設工業(プライム、以下、東亜建設)は3月1日から31日の12万3400株に続き、「8月末までに上限120万株・20億円の自己株式取得」を明らかにしている。その一方で2023年3月期を最終年度とする中計で、「事業の構造改革に100億円を投資する(323億円水準のFCFを有する)」とし且つ「売上高2340億円(今3月期計画比5%増)、営業利益102億円(3%増)」を掲げている。

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 東亜建設は、国内土木事業・海外土木事業・国内建築を3本柱としている。中計最終年度の今期計画比が小幅増なのは、今期期中の上方修正もあり下駄が高くなった結果。期初は「17.5%増収、3.3%営業増益、80円配」で立ち上がったが、2月に「手持ち案件の利益率改善、政策保有株式の見直し(一部売却)」を理由に売上高こそ2230億円据え置きも営業利益を「13.6%増益:99億円」に上方修正した。

 開示済みの第3四半期は「前年同期比20.4%増収、6.6%営業増益」、修正後の計画への進捗率は「71%、73%」。業態からして下期集中型の収益構造。着地に不安はない。

 東亜建設のここ数期間を振り返ると、20年3月期の「10%増収、92.8%営業増益」一段と高くなった下駄を履きながら着実な収益動向を継続している点が目を引く。株価もそうして展開を前向きに反映している。GW最中の時価は2000円台終盤と、4月18日の年初来高値2972円のゾーン内。時価の予想税引き後配当利回りも2.5%強と目を引かれる。

 内外の土木事業・国内の建築事業の実績は、ホームページで確認していただくとして第3四半期の内容を検証してみる。

★海外土木事業: 東南アジア中心に中東・アフリカで展開。第2四半期までは一部の国で新型コロナウイルスに起因する工事中断はあったが、当該期は全ての国で工事が稼働。売上高は前年同期比74.1%増(302億7600万円)。だが鋼材価格高騰の影響で1億5400万円の営業損失。今後については鋼材価格問題がどうなるかという課題は大きいが、受注高は前年同期比43.3%増(178億3600万円)。

★国内土木事業: 順調に施行が推移。当該期の売上高は18%増の796億6200万円、営業利益は8.3%増の59億4200万円。ただ課題も残った。各高速道路会社の道路工事など陸上土木の受注が、15.4%減の810億9400万円にとどまった。

★国内建築事業: 5.1%増収(426億5600万円)、1.1%営業増益(25億5800万円)。が、「物流や工場分野に注力したが」(東亜建設)、受注高は15.4%減(810億9400万円)と落ち込んだ。

 つまり、それぞれの事業分野で課題・問題を抱えながらも「着実な歩みを続けよう」(斯界アナリスト)というのが見通しである。ちなみに手元の会社四季報は23年3月期を、「4.9%増収、3%営業増益」と独自予想している。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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