前がん細胞が正常細胞を排除し拡大する仕組み解明 治療法開発に期待 京大

2022年2月11日 16:38

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がん促進タンパク質Yorkieの活性化細胞が腫瘍を拡大する仕組み。(画像: 京都大学の発表資料より)

がん促進タンパク質Yorkieの活性化細胞が腫瘍を拡大する仕組み。(画像: 京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学は8日、前がん細胞が正常細胞に細胞死を誘導して排除する現象、スーパーコンペティションの仕組みを解明したと発表した。研究グループによれば、スーパーコンペティションは腫瘍形成に重要な役割を果たしており、今回の研究成果は今後、スーパーコンペティションに注目した新しいがんの治療法の開発につながる可能性があるという。

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■スーパーコンペティションとは?

 細胞は、常に周りの細胞とその「質」を比較しており、周りの細胞とある程度その質に差が生じると、自ら細胞死する。前がん細胞はこれを利用して、周りの正常細胞を細胞死させて排除し、組織内で拡大していく。これをスーパーコンペティションという。

 これまでもスーパーコンペティションという現象は知られていたが、そのメカニズムや腫瘍化における役割はよく解っていなかった。

 研究グループは今回、ショウジョウバエを使って実験を行い、これを解明した。

■ショウジョウバエを使って解明

 研究グループは、ショウジョウバエにおいて、前がん細胞の周囲にある正常細胞の遺伝子を1つ1つ破壊していき、スーパーコンペティションに関係する遺伝子を探していった。その結果、正常細胞においてオートファジー(自食作用)に関連する遺伝子を破壊すると、腫瘍の形成が抑えられることが判明。つまり前がん細胞は、周囲の正常細胞にオートファジー細胞死を誘導して、組織内で拡大していることが解った。

 研究グループは続いて、前がん細胞がどのようにして、周囲の正常細胞にオートファジー細胞死を誘導しているのかを調べた。すると前がん細胞は、ある種のマイクロRNAの量を増やし、タンパク質の合成能力を高めることで、周囲の正常細胞にオートファジー細胞死を誘導していることが判明したという。

 このようなスーパーコンペティションに関係しているマイクロRNAなどは、人にも存在していることから、研究グループでは今後、新しいがん治療法の開発につながる可能性があるとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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