海岸写真から漂着ごみを推定 AI用いた新技術を開発 JAMSTECら

2022年2月5日 18:02

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入力画像、正解ラベル、AIによる推定画像の例。上段の例では、白いプラスチックケースが精度良く検出されている。(画像: 海洋研究開発機構の発表資料より)

入力画像、正解ラベル、AIによる推定画像の例。上段の例では、白いプラスチックケースが精度良く検出されている。(画像: 海洋研究開発機構の発表資料より)[写真拡大]

 近年では海岸に漂着した大量のごみが社会問題となっており、様々な実態調査および対策が行われてきた。特にごみの現存量の調査は頻度や範囲、精度などの面で限界があり、より効率的な定量評価技術の確立が求められてきた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)、鹿児島大学の研究グループは4日、海岸画像やドローンの空撮画像などを用いて、ごみの海岸被覆面積などの推定するAI技術を無償公開した。

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 研究グループではこれまで、AIを用いた新たな漂着ごみの定量的な検出法を開発してきた。今回の研究では、セマンティック・セグメンテーションと呼ばれるディープラーニング手法を採用。セマンティック・セグメンテーションでは、学習により海岸の写真をピクセル単位で識別する。今回は学習データとして山形県庄内総合支庁から提供された海岸写真3500枚が用いられた。

 その結果、海岸写真から流木などの自然ごみとプラスチックなどの人工ごみとをそれぞれ検出することが可能となった。また、海岸写真を真上から撮影した構図に変換することで、海岸全体のごみ被覆面積も推定可能という。この技術は、訓練データとして用いた山形県の海岸以外にもある程度適用可能なことが分かっており、汎用性が高いことも特徴である。

 一方で研究グループは、パターンの大きく異なる海岸に対しては、検出精度は低下するという点を課題として挙げている。今回の技術の汎用性をさらに上げるためには、世界中の様々な海岸やごみの写真を撮影してAIの学習データとする必要がある。そうしたチューニングを施すことによって、パターンの異なる海岸でも精度の高い検出が可能となる。

 研究グループは今回開発した学習用データセットを公開し、他の科学者が改良可能なようにするとしている。各地域の自治体等が今回のようなAI技術を取り入れ調査を行っていくことによって、より特化した技術に進化していくことも期待される。

 今回の研究成果は1日付の「Marine Pollution Bulletin」誌のオンライン版に掲載されている。

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