牛骨格筋由来の細胞から直径1.5cmの培養肉作成に成功 順大

2021年10月4日 16:53

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今回の研究の概要(画像: 順天堂大学の発表資料より)

今回の研究の概要(画像: 順天堂大学の発表資料より)[写真拡大]

 近年は人口増加に伴う食糧難や畜産による環境負荷などの背景から、食用肉に代わる食材の研究が盛んに行われている。中でも注目を集めているのが、細胞培養の技術をもとにしてつくられる培養肉である。順天堂大学は1日、牛骨格筋内の特定の細胞を培養することで、直径1.5センチメートルほどの構造物を形成することに成功したと発表した。

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 これまでは病気や怪我の治療を目的として、ヒトの組織に存在する前駆細胞を培養する技術が研究されてきた。当然ながら組織前駆細胞は家畜の組織にも存在するため、研究グループはそれを培養肉技術へ応用することを試みた。

 研究グループが牛骨格筋由来の細胞を選別したところ、CD29と呼ばれる抗原を有する細胞が増殖しやすいことを発見。細胞としての未分化性も高いことから、筋や脂肪など思い通りの組織へと分化させやすい点でも実用性が高いことが示された。CD29陽性細胞を筋と脂肪に分化させてコラーゲンゲル中で培養することで、直径1.5センチメートルほどの構造物が形成することを確認したという。

 この技術を用いれば、牛肉100グラムあたりから3週間の培養で10兆個以上の細胞を得ることができる。それを培養によって増殖させることで、実用的なレベルの量の培養肉をつくることができる可能性がある。現在はラボスケールでの実験にとどまっているが、今後は安価かつ大量に培養する技術を開発していくことが求められる。

 また、今回の技術は筋肉成分や脂肪成分を自在に制御することが可能な点も魅力的である。つまり、筋肉成分の多い肉や体に良い油を含む培養肉など、栄養機能食としての応用につながることも期待される。培養肉は単なる食糧問題の解決だけでなく新たな健康増進の手段を切り開く可能性もある。

 今回の研究成果は9月21日付の「Cells」誌のオンライン版に掲載されている。

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