ノイズ補正なしの高速データ通信をPOFで実現 世界初 慶應大の研究

2021年9月26日 17:14

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 近年では電気通信機器の高性能化に伴ってデータ通信の高速化も求められるようになってきた。データセンターではガラス光ファイバーによるデータ通信が主流となっているが、固有のノイズがあることが課題であった。プラスチック製光ファイバー(POF)による高速通信の研究に取り組んできた慶應義塾大学は24日、POFにより世界で初めてノイズ補正なしでの高速データ通信に成功したと発表した。

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 ガラス光ファイバーでは、ファイバー内での光路長差や反射などにより、原理的にデータ伝送によってノイズが発生してしまう。そのため、現在はそのノイズを補正する機能が必要であり、消費電力の増加や通信の遅延が発生するという問題があった。

 そこで慶應大の研究グループは、光ファイバーの材料として一般的なガラスではなくプラスチックを用いたPOFの研究を実施。POFはガラスと比較して光が散乱してしまうため、従来ではデータ通信には向かないと考えられてきた。だが研究グループは、プラスチック内の光散乱をあえて利用して制御することで、ガラス光ファイバー以上のノイズ低減が可能であることを発見。特に散乱によるデータ損失が大きな問題とならない短距離通信では、POFが有効であると考えた。

 この成果をもとにPOFを新たに開発し、次世代の短距離通信の標準である毎秒53ギガビットの通信を行った。その結果、ガラス光ファイバーでは必須のノイズ補正を用いることなく、データ通信を行うことに成功したという。

 今回の研究成果は今後、短距離で省電力かつリアルタイムな情報通信が必要なテクノロジーへの寄与が期待される。特にデータセンターや自動運転車、ロボティクス、高精細映像伝送などはPOFの活用により大きく進歩する可能性がある。

 今回の研究成果の一部は、8月1日付の「Optics Letters」のオンライン版に掲載されている。また、11月に開催されるプラスチック光ファイバー国際会議にて詳細が発表される予定である。

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