「自動化」社会で存在感強める日本企業 物流や産業分野で注目技術が続々

2021年8月22日 21:02

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記事提供元:エコノミックニュース

これまで人力で行ってきた作業の多くが、みるみる自動化されていく

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世の中の「自動化」が加速している。新型コロナ禍の巣ごもり生活で需要が伸びているロボット掃除機や、世界中の自動車メーカーが実用化を目指す自律型自動運転車、工場や物流の現場で導入が進む無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)など、これまで人力で行ってきた作業の多くが、みるみる自動化されていく。そして、これら自動化の波を支えているのが、日進月歩で進化する人工知能(AI)やIoTなどを駆使した情報分析技術、また正確に距離測定・空間認識を行うことができるライダー(LiDAR)など現場の情報を収集するためのリモートセンシング技術だ。

 例えば2019年、それまで磁気テープや磁気棒などのガイドを頼りに施設内の決められたルートしか走行することしかできなかった従来のAGVに人工知能を搭載することで、自動で安全に障害物等を認識・回避し、施設内を自由に走行できるようになった。この「自動搬送ロボット」の開発に成功して話題となったのが、東大発のAIベンチャー・TRUST SMITH株式会社だ。同社はさらに今年、複数の自動搬送ロボットを同時に動かすことのできる群制御システムの開発にも成功している。同システムを導入すれば、施設内で同時に作業する複数台のAGVが互いに衝突すること無く、連携しながら、効率的に自律走行することが可能になるという。また、荷物を運搬するだけでなく、ピッキングシステムなどと組み合わせれば、限られたスペースの中でより複雑な作業も可能となる。実用化が進めば、物流現場で課題となっている人手不足やスペース効率の改善につながることが大いに期待できるだろう。

 AIだけではなく、LiDARなどのリモートセンシングを取り巻く技術の発展も目覚ましい。

 デジタル家電でも自動車でもロボットでも、電気で動くものにセンサは欠かせない時代だ。特にロボット掃除機やAGV、自動運転車など、動作の自動化を必要とする幅広いアプリケーションでは、正確に距離測定・空間認識を行うことができるLiDARの採用が進んでいる。そんなセンサ市場において、日本の企業は強い存在感を示している。

 例えば、ローム株式会社は、半導体メーカーとして培ってきた高い技術力とノウハウをもとに、幅広い分野で様々なセンサ製品や、それを取り巻く周辺回路の開発を行っている。LiDARに関して言えば、「より遠く」まで、「より正確」に、そして「低消費電力」で情報を検知するために、光源となるレーザーダイオードの性能向上が求められている中、同社はレーザーの発光幅を狭くしながら発光強度を高める独自の特許技術を確立。2019年に25W高出力レーザーダイオード「RLD90QZW5」の量産を開始した。さらに今年7月には、LiDAR用の75W高出力レーザーダイオードとして業界最小の狭発光幅225μmを達成した新製品「RLD90QZW3」を発表。同製品は一般品に比べて22%狭発光幅化したことで、高いビーム性能を実現しており、LiDARの長距離対応・高精度化に貢献する。市場が拡大する産業機器分野への展開に大いに期待が持てそうだ。現在は、レーザーダイオードの120W高出力化および車載対応(AEC-Q102準拠)に向けた製品開発も進めているという。

 単に自動化だけでなく、さまざまな交通網のサービスを一つに繋ぐMaaS(Mobility as a Service)をはじめ、今後、観光や飲食、医療、不動産など、あらゆる分野が連携し、相互に結び付く社会に発展していく中、上記のような、独創的でかつ確かな実績と経験に裏打ちされた日本の技術力が求められる場面は増えてくるのではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)

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