乳酸菌の摂取でストレスが低減することを発見 北大らの研究

2021年8月7日 07:53

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唾液中コルチゾルリズムの日内変動の変化(画像: 北海道大学の発表資料より)

唾液中コルチゾルリズムの日内変動の変化(画像: 北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 乳酸菌には多くの種類があり、古くから利用されてきた。北海道大学などの研究グループは4日、YRC3780という乳酸菌株が、ストレスによって体内で起こる反応を穏やかにすることを発見したと発表した。この乳酸菌により、ストレスによる精神の不調や疾患を防ぐ食品が開発されることに期待したい。

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 この研究は北海道大学の山仲勇二郎准教授と松浦倫子学術研究員、よつ葉乳業中央研究所の元島英雅研究員と内田健治研究員らの研究グループにより行われた。研究結果は4日公開の European Journal of Clinical Nutrition 誌に掲載された。

 乳酸菌は、細菌のうち「乳酸」という酸を作る菌の総称だ。人に役に立つという意味で「善玉菌」に分類される。乳酸菌は周りの環境を酸性にするため、人にとって悪い作用をする菌が増えにくくなる。そのため古くからヨーグルトやチーズ、漬物などの発酵食品が利用されてきた。

 乳酸菌は、お腹にいいというイメージがあるが、それ以外にも様々な作用を人に及ぼすことが近年わかってきている。スーパーマーケットの売り場には、様々な機能性食品としてのヨーグルトが並んでいるのを見たことがあるだろう。今回研究グループは、乳酸菌がストレスによる症状に良い影響を与えることを明らかにした。

 人にストレスがかかった時、脳の視床下部から下垂体を刺激するホルモンが出て、次に下垂体から副腎皮質を刺激するホルモンが出る。最終的に副腎皮質からコルチゾールというホルモンが出てくる。

 コルチゾールは、ストレスホルモンと呼ばれており、一時的に人体のストレス耐性を高める働きがある。そもそもコルチゾールは、副腎皮質ホルモンの一種で、血糖値を上げたり、炎症を抑えたりする働きをもつ物質だ。コルチゾールの濃度が上がったことを感じると、負のフィードバックによりコルチゾールの産生は減少する。このようなストレスによるコルチゾールの調節をHPA-axis系と呼ぶ。

 研究グループは、健康な成人を2グループに分け、乳酸菌YRC3780株またはプラセボを摂取してもらった。そして摂取開始前、2、4、6、8週間後に、起床から2時間起きに唾液をとりコルチゾールの濃度を測定し、主観的な睡眠の質、精神状態をチェックした。

 その結果、YRC3780を摂取したグループで6週目、8週目の午前中のコルチゾール濃度が有意に低下していることが判明。また主観的なチェックではあるが、睡眠の質や精神状態が改善しているという結果になった。さらにストレスを与えた後、時間経過を追ってコルチゾールの濃度を測定したところ、YRC3780摂取グループの方が早くコルチゾールが減少していたという。

 以上の結果から、乳酸菌株YRC3780がコルチゾールの1日の中での変動を穏やかにし、またストレスによって起こるコルチゾールの急な増量を抑えることがわかった。つまり心理的なストレスに応じて起こる体の反応を抑えているのだ。

 YRC3780を利用した機能性食品によりメンタルヘルスの不調や、メンタルヘルスからくる疾患を予防、改善していけることを期待したい。(記事:室園美映子・記事一覧を見る

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