今後の経済動向を占うアメリカ重要経済指標と株価・為替との関係 前編

2021年7月7日 16:56

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 7月2日にアメリカ労働省が発表した6月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比85万人増となり、前月の約56万人増からさらに29万人ほど増え、市場予想の70万人増も大きく上回った。その一方で、失業率は市場予想の5.7%に対して5.9%、平均時給(前年同月比)は市場予想の3.7%増に対して3.6%増と弱く、強弱入り混じった結果といえる。

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 世界で発表される経済指標のなかでもアメリカの経済指標が注目される理由は、米ドルが基軸通貨になっていることや、アメリカの経済動向が世界のGDPの約20%を占めているなど、世界全体の経済へ及ぼす影響が強いという理由だ。そして、そんなアメリカの経済指標のなかでも、最も注目を集めるのが、毎月第1金曜日(原則)に公開される雇用統計である。

 雇用統計においては、非農業部門雇用者数のほかにも失業率、週労働時間、平均時給、建設業就業者数、製造業就業者数、金融機関就業者数など計10数項目の指標が発表されるが、その結果によって、世界中の株価や為替が大きく動くことになる。つまり、アメリカ国内の雇用の改善は個人消費の改善につながり、ひいてはアメリカ経済全体の回復につながるため、世界全体の経済へも波及する指標として注目を集めているのだ。

 もちろん、世界経済への影響だけではなく、雇用統計の改善はアメリカ国内における金融政策の動向にも影響する。なぜなら、雇用の改善によって経済全体の回復が見込まれることになれば、物価の上昇が予測されるため、物価の過度な上昇をコントロールしなければならない。そしてその役割を担っているのが、各国の中央銀行というわけである。

 アメリカにおいては、FRB(連邦準備理事会)が中央銀行の役割を担っており、リーマンショックやコロナ禍のような危機には金融緩和を行う一方で、経済の過熱によって物価が上昇しすぎないようにするため、金融引き締めも行う。金融引き締めを行う場合には、利上げを行ってドルの金利を上げ、ドルそのものの価値を上昇させる政策を行うのだ。

 ドルの金利が上がれば、預金をしておくだけで利益が出ることになり、消費の抑制につながる。投資で金利を得る必要はない。もちろん、金利が上がることで貸し出し金利も上がるため、積極的な融資が少なくなっていく。総じて経済全体に対しては悪影響となり、株安となる要因にはなるものの、経済加熱を放置しておけば、日本のバブルのような状況になってしまうため、金融引き締めは必須というわけである。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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