上方修正組も統合組も、厳しさを背負い続ける地銀の今

2021年5月12日 16:23

印刷

 2021年3月期決算がGW明けに本格化を迎える。ある程度は第3四半期までの通期計画に対する進捗率で着地は予想できる。

【こちらも】勝ち残り・生き残りを賭した、地銀のEC戦略の現状と課題

 ところで「統廃合&再編の必要性」が強調されることに象徴的に「厳しさ」が指摘される、地方銀行の着地がどうなるか。失礼ながら興味深い。3月以降、「●●地銀、上方修正」という配信に目を皿にし続けた。具体的にこんな事例に出会った。

(I)3月12日: 西京銀行(山口県)が連結経常利益を従来予想の47億円から、前期比22%増の61億円に上方修正した。純益も35%増の40億円になる見通しとした。(新型)コロナウイルス感染症対策の融資拡大に伴い、貸出金利収入が想定以上に増加。業務の集中化・効率化も経費削減に寄与した。

(II)22日: 紀陽銀行(和歌山県)が経常利益・純益とも、「貸出金増」「役務取引(受取手数料-支払手数料)等の利益増」を理由に上方修正した。但し経常利益は20年3月期の31.7%減:148億円から10.5%減:194億円、純益も27.1%減:100億円から7.4%減:127億円にというものだった。

(III)4月19日: 北國銀行(石川県)は経常利益を100億円から128億円(前期131億円)へ、純益を45億円計画から67億円(前期16億4600万円/黒転)へ上方修正した。有価証券損益が当初予想を上回ったことから、経常利益はほぼ前期並みに。純益が順調な伸びで10円増配の80円配に増額修正した。

(IV)23日: 沖縄銀行が通期計画に対し経常利益を43.6%増の79億円(前期比3%減)、純益を57.5%増の52億円(同6%減)に上方修正した。

(V)27日: 神奈川銀行は経常利益を7億円計画から12億円(前期比7%減)、純益を4億円から7億円(同17%減)とした。

 調べていくうちに、「は~あ」と溜息が出てきた。記した範囲でも5行中4行の上方修正はあくまで「期初予想比」であり、20年3月比ではマイナスだったからである。あらためて地銀が超低金利下でいかに厳しい経営を強いられているかを、痛感させられるにとどまった。

 では統合した地銀はどうか。池田泉州HDを覗いてみた。周知の通り大阪北部を地盤とする池田銀行と、南部を地盤とする泉州銀行の経営統合を前提に2009年に誕生した持ち株会社である。前者はりそなHD傘下の近畿大阪銀行、後者は三井住友銀行系列の関西アーバン銀行との闘いを強いられていた。

 アナリストは、「大手資本を背景にしたライバルとの闘いは、やはりビハインドを余儀なくされる。一時“破談説”も流れたが、最終的には金融庁の判断が統合を強いた」とする。

 そんな池田泉州HDが1月29日に開示した経常利益実績は79億8800万円。だが同じ日に「通期の経常利益予想は60億円に据え置く」とした。4-12月期実績の通期予想の進捗率は133%にもかかわらず、である。何か「?」を覚えた。

 やはり地銀は依然、厳しい環境に晒されている。先のアナリストは「池田泉州HDに更なるステージが用意されても驚かない」とした。(記事:千葉明・記事一覧を見る

関連記事