漬物・小分け惣菜で稼ぐ、ピックルスの力

2021年3月18日 16:58

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3月にリニューアル発売された「焼肉チャンピオンが本気で作ったキムチ」(画像: ピックルスコーポレーションの発表資料より)

3月にリニューアル発売された「焼肉チャンピオンが本気で作ったキムチ」(画像: ピックルスコーポレーションの発表資料より)[写真拡大]

 私は痔主だった。社会人になりたての頃に痛みに悩まされた。幸い今は全く痛みを覚えることはないが、爾来「辛い食べ物」は苦手。特にキムチは全く口にしなかった。

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 それが友人に「騙されたと思って1口食べてみなよ、辛くないから」と言われ口に運んだのが、「ご飯がススムキムチ」。2009年にピックルスコーポレーション(東証1部、ピックルス)が発売した逸品だった。辛みでなく、甘味・旨味だった。まごうことなき実話である。

 キムチが食べられるようになって10余年。感謝の意味を含め、ピックルスを調べ直してみた。

◆漬物事業: 業界NO1。15%近いシェアを有している。漬物業界で唯一1社、開発・製造・物流・営業を一貫して手掛けている。全国に19拠点(前2月期末、以下同じ)の事業所を配し、生産・物流機能を果たしている。取り扱う「漬物」数は、全国で約2000種。「ご飯がススムキムチ」を先頭に売上高は約73億9500万円と、総売上高比率約2割。

 漬物分野では高齢化社会の進捗で、「小分け」した漬物がスーパーの店頭などでは目立つ。「小分け」対応では、セブンイレブンとの提携効果が大きい。提携(小分けした漬物を毎日納品)は1977年12月。当時のセブンイレブンの店舗数は、約400店舗。昨年11月末で約2万1000店舗。宮本雅弘社長も「セブンイレブンへの小分け商品の毎日納品で成長させてもらった」としている。

 92年にはスーパーやドラッグストアとの取引にも進出。2000年代に入ると地場の漬物会社のM&A等で、生産拠点・販路を拡大していった

 実は漬物市場自体は、縮小傾向にある。90年代の約5500憶円市場が現在は約3000億円。2000社程あった漬物メーカーも800社水準にまで減少している。宮本氏は「まずは15%水準のシェアを獲得したい。廃業を考える会社のM&Aを積極的に進めていく」としている。

◆惣菜事業: 惣菜市場は1兆円を超えており、今後も拡大が見込まれている。漬物惣菜に加え生野菜サラダや、いわゆるナルムセットといった調理済み素材も入った惣菜も展開中。注力部門である。売上高は83億2100万円と、漬物分野を上回っている。

 漬物市場の基盤をより強固にし、惣菜市場で成長階段を・・・という構えだ。

 前2月期の「1.8%増収、32.8%営業増益」に続き今期も「3.8%増収、1.8%営業増益」計画で立ち上がったが昨年末、「8.7%の増収(450億円)、33.6%の営業増益(25億円)、5円増配35円配」に上方修正。第3四半期の修正後計画に対する進捗率は「78%、92%」。

 たかが漬物されど漬物、である。時価3000円台半ばに対し、IFIS目標平均株価は4720円1000円以上上値にある。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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