17世紀のマウンダー極小期、直前に太陽活動が変化 千葉大などが解明

2021年3月11日 17:47

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(a)赤色で示されたデータが今回の研究で取得された炭素14の高精度データ。灰色は先行研究により取得されていたデータ。(b)炭素14のデータと炭素循環ボックスモデルを用いた計算により復元された、地球に飛来した銀河宇宙線量の変動。(c)赤線が、bとともに復元された太陽黒点数の変動。破線は望遠鏡により観測された黒点の記録を収集することにより再構築された黒点数の変動(画像:千葉大学報道発表資料より)

(a)赤色で示されたデータが今回の研究で取得された炭素14の高精度データ。灰色は先行研究により取得されていたデータ。(b)炭素14のデータと炭素循環ボックスモデルを用いた計算により復元された、地球に飛来した銀河宇宙線量の変動。(c)赤線が、bとともに復元された太陽黒点数の変動。破線は望遠鏡により観測された黒点の記録を収集することにより再構築された黒点数の変動(画像:千葉大学報道発表資料より)[写真拡大]

 千葉大学、武蔵野美術大学などは10日、樹木の年輪に含まれる炭素14を世界最高精度で測定することで、17世紀に起こったマウンダー極小期直前における太陽活動を明らかにしたと発表した。

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 マウンダー極小期のような太陽活動の低下は今後も発生する可能性がある。そのため、太陽活動の歴史を明らかにして、太陽活動のメカニズムを解明し、その予測手法を確立することは重要な課題となる。

■マウンダー極小期とは?

 1645年~1715年に及ぶマウンダー極小期においては、太陽活動が低下して黒点の数が著しく減少し、世界的に寒冷化が進んだ。イギリスのテムズ川が凍りついてしまったほどだ。

 研究グループは、このマウンダー極小期直前における太陽活動を、樹木の年輪に含まれる炭素14を測定することで明らかにした。

 太陽の磁場には宇宙放射線を遮る働きがある。そのため太陽活動が変動し、太陽の磁場が変動すると、地球に降りそそぐ宇宙放射線の量が変動する。例えば、太陽活動が低下し、太陽の磁場が弱まると、地球に降りそそぐ宇宙放射線の量が増える。

 ところで、この宇宙放射線が地球の大気と衝突すると、炭素14などができる。この炭素14は光合成によって樹木などに取り込まれる。そのため、樹木の年輪に含まれる炭素14の量が解れば、その年代の太陽活動が解る。

■世界最高精度で樹木の年輪に含まれる炭素14を測定

 研究グループは、炭素14などを測定するための加速器質量分析計を改良し、さらに重複測定をおこなうなどして、世界最高精度(従来の4倍程度)で、樹木の年輪に含まれる炭素14の測定に成功した。

 また炭素14の変動から、太陽活動の指標となる黒点数の11年周期変動に関する情報を精密に抽出するための手法も向上させたという。

 その結果、マウンダー極小期が始まる直前に、通常は11年である太陽活動の周期が最大で16年に伸びていたこと、また、マウンダー極小期の太陽活動の低下は、40年ほどの準備期間をかけてゆるやかに発生していたことを突き止めた。

 研究グループでは、1996年に始まったサイクル23の長さが12年4カ月に伸びて以来、サイクル24は顕著な伸びを示しておらず、2020年に始まった現在のサイクル25の動向次第では、さらなる太陽活動の低下がありうると考えられるため、注意が必要だとしている。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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