水中の重金属や放射性物質を除去する材料に必要な結晶構造と形態を解明 阪大

2020年11月23日 08:28

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ナノサイズ海苔様シート状の層状チタン酸ナトリウム吸着材(画像: 大阪大学の発表資料より)

ナノサイズ海苔様シート状の層状チタン酸ナトリウム吸着材(画像: 大阪大学の発表資料より)[写真拡大]

 重金属や放射性物質による水の汚染への対策として、それらの物質を除去する材料の開発が望まれている。そのような材料を簡便な方法で合成することに成功したのが大阪大学の研究グループである。20日に発表された内容によれば、今回合成されたシート構造の層状チタン酸ナトリウムは、水中のコバルトイオンに対して高い除去特性を持つという。

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 層状チタン酸ナトリウムは、水中の重金属・放射性物質の除去材として、以前から多くの研究が行われてきた。しかし層状チタン酸ナトリウムは、複数の結晶構造や形態があるものの、どれが最適なのか未解明の部分が多いという課題があった。

 研究グループは今回、単純な合成条件の水熱合成法により、複雑な構造の層状チタン酸ナトリウムを合成することに成功した。通常は合成に添加剤や界面活性剤を加える必要があり、条件の最適化が必要なことがネックとなる部分である。今回合成した材料は、ナノファイバーが海苔のように複雑に絡み合ったシートのような構造をしている。そのため表面積が飛躍的に高くなり、コバルトイオンを収着しやすくなるという利点を有する。

 また、今回合成した層状チタン酸ナトリウムは、従来のものと異なる結晶構造である点も特性に大きく関係している。コバルトイオンの収着の際には、材料表面でのコバルト水和物の析出によって除去性能が低下する恐れがある。しかし今回の材料は、その結晶構造の違いによってコバルト水和物の析出が抑制され、除去性能を高く保つことが可能となった。

 このように、材料の形態と結晶構造の両方が除去性能に影響するというのが、今回の研究で得られた大きな知見である。また製造プロセスの面からも、簡易な方法で材料合成可能な点は重要な利点となり得る。今回の研究で合成された層状チタン酸ナトリウムは、重金属・放射性物質除去剤として応用されていくことが期待される。また、同様の反応を応用した電池材料などへの展開も可能であると、研究グループは示唆している。

 今回の研究成果は11日付の「RSC Advances」誌オンライン版にて掲載されている。

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