紛糾するアメリカ大統領選の行方とトランプ大統領の勝算 後編

2020年11月7日 16:41

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 2016年の大統領選挙において、ヒラリー・クリントン氏が総得票数で約300万票ものリードを広げていたにも関わらず、法定闘争にならなかったのは、やはり獲得した選挙人の数に大差があったという理由であろう。ブッシュ氏とゴア氏の場合は、選挙人の数が1名という僅差であったため、どこか1州でも選挙人の結果がひっくり返れば、ゴア氏が勝利したという状況だったのだ。

【前回は】紛糾するアメリカ大統領選の行方とトランプ大統領の勝算 前編

 もちろんこれらの状況が、トランプ氏とバイデン氏の争いと異なるのは明白だ。日本時間の11月7日(土)午前現在、総得票数ではバイデン氏がトランプ氏を約400万票ものリードを広げている上、現在のリードを保ったまま選挙人数を加算すれば、バイデン氏306人、トランプ氏232人と、総得票数も選挙人数も圧倒リードを広げたまま集計を終えることになる。奇しくも前回の大統領選で獲得した選挙人数が真逆だ。

 さて、ブッシュ氏とゴア氏の法定闘争の場合、焦点となったのはフロリダ州の得票結果である。たったの1784票差でブッシュ氏が競り勝っていたのだが、その得票数の差が同州の州法で認められた再集計の基準(得票数差が0.5%未満)を満たしていたためだ。

 その後、州法規定によって機械による再集計が行われ、差が1,000票ほど縮んだもののブッシュ氏の優勢は変わらなかったのだが、「特定地域のパンチカード方式に欠陥がある」として、手作業の再集計をゴア氏側がフロリダ州最高裁判所に提訴したというのが当時の成り行きである。

 「特定地域のパンチカード方式に欠陥がある」という客観的事実に基づいて法定闘争へとつながったことからも、今回のトランプ氏との主張が大きく異なることがお分かりいただけるだろう。トランプ氏の主張は、今のところ根拠がみられない「郵便投票全般への不正」と、「投票日以降に届く郵便投票が無効」であるという主張なのだ。特に後者に関しては州法で明確に定められているにも関わらずである。

 このように、トランプ氏は圧倒的に不利な状況であるため、たとえ法定闘争に持ち込んだとしても、選挙の結果が覆る可能性はほとんどないだろう。それでもトランプ氏が法廷闘争に持ち込む理由は、自身の考えに近い保守派の判事を指名したことで、保守派が多数となった連邦最高裁判所に一縷の望みをかけているのか、今のところは判然としない。

 最後に各市場の値動きについて触れておきたい。バイデン氏が有利となる前から、株式市場はリスクオンとなっているが、これは大統領選後の財政政策が期待された結果であり、より大規模な財政政策を掲げているバイデン氏が有利となってからは上昇率が一層増している。

 余剰資金が集まりやすい仮想通貨についても、ビットコインが昨年の高値150万円を上抜けていることからも、今週はリスクオン相場だったといえるだろう。このまま、毎年恒例の年末高へとつながっていくのか、それともバイデン氏の法人税増税を見越して頭打ちとなるのか、相場変動についても十分注視しておきたい。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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