「副業に給付金は必要ない」と感じている人に知って欲しいこと

2020年7月21日 18:56

印刷

 政府は、新型コロナウィルス対策として経済支援を行っている。持続化給付金では副業者も対象となったが、一部ではこれに疑問を感じている人も存在する。本記事では、副業の実態と合わせて経済支援の必要性について紹介したい。

【こちらも】持続化給付金は副業も対象になるのか?

■生活の安定のために副業している人々がいる

 副業解禁のアナウンスと同時に、多くの人はどんなことを連想しただろうか。副業収入を得て、優雅に海外旅行。さらには、欲しかった高額の買い物だったり。こうしたイメージは、「安定した収入+副業収入」という前提に基づいている。

 新型コロナの経済支援に、副業を含めるべきではないと考える人もいるだろう。それは、副業は単純にプラスアルファの収入だからという印象を持っているからではないだろうか。そこで、副業を取り巻く実情について伝えたい。

 総務省が発表した2019年の労働力調査によれば、雇用人口5660万人の内、非正規雇用は2165万人に上る。前年度から45万人増加し、非正規雇用者は全体の半数に届く勢いだ。性別の割合で見れば、女性の非正規労働者は半数を超える。

 さらに総務省の調査(2017年の就業構造基本調査)によれば、副業者の67.3%が年収299万円以下であるとされている。これらの統計データから分かることは、副業者の多くが高所得者ではなく、非正規雇用者も多く含まれているという現実である。

 つまり、副業は「安定した収入+副業収入」だけではない。むしろ、安定した収入を得るための兼業として、行われているケースも少なくないということだ。

■副業者への給付金支給には経済的弱者を支援するという意義もある

 新型コロナによる経済的打撃は、多くの人に影響を及ぼしている。倒産・廃業だけでなく、経営不振に陥れば、非正規雇用者はより不利な立場に立たされるだろう。こうした観点から、副業者への経済支援は、弱者救済の意味でも大きな意義がある。副業が給付金などの対象から除外されれば、さらに窮地に立たされる人々が増えてしまうからだ。

 そしてこの問題は、日本社会全体の問題でもある。非正規雇用は年々増加傾向で、その中には高齢者層も含まれている。定年を迎えた人が、年金だけでは暮らしていけないため働いている場合も多いのだ。

 高齢化社会がさらに進めば、非正規雇用の割合もさらに増すだろう。低所得者層がさらに増えれば、内需の増加はとても見込めない。国内のこの状況を打破せねば、明るい将来の見通しは立てられないだろう。

 経済的弱者について、自己責任論を唱える人もいるかもしれない。しかし、ハーバード大学の哲学者マイケル・サンデル教授は、経済的成功は運が大きく関わっていると主張している。

 東大進学者の親には高所得者が多いという事実もある。つまり、親の所得が子供の収入を左右している部分もあるのだ。子供は親を選べない。副業者にも経済支援が必要なのは、彼らだけの責任とは限らないからだ。(記事:西島武・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事