人工衛星の画像を機械学習で解析、水害の被害を高精度に推定 東北大ら

2020年7月19日 17:37

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分析を行った観測データ(2019年台風19号)と学習データ(2018年西日本豪雨水害)。2018年西日本豪雨の被災地(岡山県倉敷市真備町)の浸水域のデータを機械学習し、2019年台風19号の福島県郡山市の浸水域を推定した。(画像: 東北大学の発表資料より)

分析を行った観測データ(2019年台風19号)と学習データ(2018年西日本豪雨水害)。2018年西日本豪雨の被災地(岡山県倉敷市真備町)の浸水域のデータを機械学習し、2019年台風19号の福島県郡山市の浸水域を推定した。(画像: 東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 大規模災害が発生した後の対応として最も重要であり難しい問題は、被害の全容をいち早く把握することである。そこで人工衛星からの観測情報を利用した広域被害把握が注目されており、特に機械学習を活用した解析との組み合わせ手法が発展しつつある。そんな中で東北大学らの共同研究グループは16日、水害の被害把握を機械学習で行うことに成功したと発表した。

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 東北大やペルー国立工科大学らの共同研究グループが研究の対象としたのは、2019年の台風19号である。2018年に発生した西日本豪雨水害のデータを機械学習して浸水域推定のアルゴリズムを作成し、台風19号へと適用した。

 浸水域の推定には、人工衛星から地表に照射されるマイクロ波の散乱や反射を観測した画像が用いられた。地表に照射されたマイクロ波は、浸水度の違いによって異なる散乱特性を示すことが分かっている。解析に利用した画像は、EUとヨーロッパ宇宙機関による地球観測衛星によって取得されたものだ。

 機械学習用のデータとして用いられたのは、岡山県倉敷市での西日本豪雨による浸水域のデータである。そのデータを用いて、福島県郡山市での台風19号による浸水域の推定を行った。

 その結果、推定された浸水域のデータは国土地理院による調査結果とほぼ整合していることが確かめられた。推定の精度としては約8割と非常に高い水準であった。衛星観測によるデータは地域固有の特性を示すことが多いが、今回の結果に関しては、別の地域であっても推定に用いることが可能だと示された。

 このように、過去の水害データの学習を蓄積することで、将来の水害の被害範囲を迅速かつ高精度で推定することが可能になりつつある。機械学習による人工衛星の画像解析はそのためのツールとして期待されている。特に水害に関しては、迅速かつ正確な浸水マップの作製に役立てられる可能性が示唆された。

 本研究の成果は13日付の「Remote Sensing」誌のオンライン版に掲載されている。

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