恐竜絶滅時の詳細をシミュレーションで明らかに インペリアルカレッジの研究

2020年5月27日 15:24

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 今からおよそ6600万年前にメキシコユカタン半島沖に小惑星が衝突し、それが恐竜絶滅のきっかけになったことは、今やだれでも知っている事実である。当時の地球上では恐竜のみならず75%の種が絶滅したと考えられている。

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 この事件の張本人である小惑星のとった軌道について、コンピューターシミュレーションによる解明を試みたインペリアルカレッジ(ロンドン)の研究者たちによる論文が、5月26日に英国Nature Communications誌で公表された。

 この事件は、学会では通称チクシュルーブインパクトと呼ばれ、それによって生じたクレーターは、チクシュルーブクレーターと呼ばれている。ボーリング調査も進められており、恐竜絶滅の謎の解明には多大な資金と人員が投入されている。この任務を遂行しているのが、IODP-ICDP共同探検隊364と呼ばれる組織である。

 今回のコンピューターシミュレーションでは、IODP-ICDP共同探検隊364が明らかにしたチクシュルーブクレーターに関する様々な調査データに基づき、これらをもっともうまく再現できる小惑星軌道の探索が進められた。

 コンピューターシミュレーション結果は、小惑星が北東の方角から飛来し、水平面に対して45ないし60度というかなりの急傾斜で地球に衝突したことを明らかにした。ディープインパクトのようなSF映画で描かれる小惑星衝突は、比較的緩やかな傾斜で地球に衝突する映像だが、6600万年前に起きた衝突はこのイメージからは程遠く、むしろ宇宙から巨大な爆弾が投下されたイメージに近い。

 しかもその爆弾の大きさは直径15km程度というのだから、直撃を受けた恐竜たちは、想像を絶する爆音と衝撃波を受けながら、頭上の空全体が小惑星に覆われてしまった情景を目撃したに違いない。

 ただ、研究者たちは小惑星が垂直に落下したとも考えにくいと主張している。その理由は、衝突現場の状況から衝突のエネルギーが、小惑星が垂直に衝突した場合の1/4程度と見積もられているからだ。クレーターの大きさは、衝突角度が浅くなるほど縮小するため、実際のクレーターの大きさから、45ないし60度の衝突角度であったのではないかという結論に至ったのだ。

この結論を裏付ける他の物的証拠もある。チクシュルーブクレーターの地球物理学的性質(主に重力分布の状況)には、非対称性が見られるからだ。この非対称性は小惑星が北東の方角から飛来したことを推論する根拠にもなっている。

 チクシュルーブインパクトは、ほんの数分間で大規模クレーターを誕生させたことも今回の研究で明らかになっている。たった数分間の出来事が、その後の地球上における生命の歴史を塗り替えてしまうほどの大事件に発展したのである。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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