最適な硬さのアルミニウム箔でリチウムイオン電池を高性能化 東北大など

2020年4月28日 20:37

印刷

 現在リチウムイオン電池の負極は炭素系材料が中心だが、電池のさらなる高容量化のために金属系材料の使用が期待されている。例えばアルミニウムは多くのエネルギーを貯めることができるが、その一方で充放電時の膨張収縮による劣化が実用化の課題となってきた。東北大学と住友化学の研究グループは27日、高純度アルミニウム箔の硬さを最適化することにより、その課題を解決できる可能性を見出したと発表した。

【こちらも】燃えにくい安全なリチウムイオン二次電池、日立と東北大が試作に成功

 リチウムイオン電池の負極は、充電時に正極から移動してきたリチウムイオンを取り込む役割を持つ。アルミニウムなどの金属系材料は、多くのリチウムイオンを取り込めるため、従来の炭素系材料に比べ数倍の容量が期待できる。しかし、多くのリチウムイオンを取り込むことで、充電時に膨張が起こり電極構造が崩れてしまい劣化につながる。

 その課題を解決するために、研究グループはアルミニウム箔の硬さに着目した。最適な硬さのアルミニウム箔を用いることで、充電時のリチウムイオンの取り込みが箔の全面で均一に行われるようになる。通常の硬さのアルミニウム箔では、リチウムイオンの受け入れが局所的になってしまい、表面上で割れが発生してしまうのだ。

 最適な硬さのアルミニウム箔は、放電時にはリチウムイオンを放出して孔が多く空いた構造に変化する。その構造のおかげで、次の充放電時にもリチウムイオンの取り込みと放出がスムーズに行われ、劣化が抑制されることが判明した。

 アルミニウム箔の硬さを決めるのは、アルミニウム箔の純度である。不純物が少ない高純度なアルミニウム箔は、柔らかい。つまり、高純度なアルミニウム箔はリチウムイオン電池の負極に用いるのに最適な硬さを有するのである。

 従来のリチウムイオン電池の負極は、活物質である炭素系材料を銅箔の上に担持させた構造となっている。そのため、体積的にも重量的にも銅箔が一定の割合を占めてしまうという問題があった。だが今回のアルミニウム箔は、それ自体が電極構造を保持する働きがあり、余分な構造体を用いる必要がない。したがって、今回の研究成果はよりコンパクトで軽量なリチウムイオン電池の製品化につながると期待される。

 今回の研究成果は、Nature Communications誌のオンライン版に13日付で掲載されている。

関連キーワード

関連記事