5~7歳頃の子どもに効く“ほめ方”

2020年1月21日 11:03

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 「子どもはほめて育てよう」「ほめる子育てが自己肯定感を生み、子どもは自信を持ち、がんばれるようになる」といった言説をしばしば目にする。

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 しかし、いざ実践しようと思うと、どうほめればよいのか戸惑うことも多い。ほめ方のポイントは、状況や相手の年齢などに応じていくつもある。

 本格的な自我が芽生えてきた5~7歳ころには、“具体的にほめる”ことが大切だ。

■“具体的に”ほめないと、子どもに響かない

 子ども園に勤務する知人に聞いた話だ。

 園児といえども年長にもなると、抽象的にほめたのでは響かない。響かないどころか、「先生は、わたしの気持ちを盛り上げるためにそう言ってるんでしょ」といった様子で、しらけた反応をする子もいると言う。

 ここで言うダメなほめ方というのは、例えば「××ちゃん、じょうず! すごいね!」のようなものだ。

 では、保育者たちはどうするのか。

 なるべく具体的に、“どこがどうだったので、どう感じたのか”ということを話すのだそうだ。

 例えば、お芝居の練習をしたのであれば、「大きく口を開けて、ゆっくりはっきりセリフが言えたね。ホールの一番後ろで見ていた○○先生が、××ちゃんのセリフがしっかり聞こえたって言っていたよ」といったように。

 こういった言い方でほめられると、その子は納得し、次の練習からも、ほめられたことをがんばろうと努める。

 このほめ方は、具体的であることと、もう1点、ポイントがある。“○○先生がこう言っていた”という表現だ。

 ほめている当の先生でない第三者の意見を伝えることによって、受け取る子どもはほめ言葉に客観性を見出す。同時に、目の前にいる先生と○○先生の2人からわたしは認められた、ということもおそらく理解しているだろう。

■ほめることでコミュニティーの雰囲気が向上する

 我が子が子ども園に通っていたときのこと。

 年中のときの担任は、幼稚園教諭になって2年目の女の先生だった。まだまだ新人ながら、落ち着きがあり、保育・教育にも熱心で、しっかりと子どもたちに目を配ってくれた。テンション高く子どもたちを盛り上げるタイプではないが、常にていねいに子どもの意見を聞き、小さなことでも積極的にほめてくれた。

 この先生が担任だった1年間は、クラスの雰囲気が非常によかった。

 一緒に鉄棒をしている子どもたちが、互いの技術をほめ合ったり、初めて園で逆上がりを成功させた子のことを、近くの先生に「××先生、見て! ○○くん、逆上がりできたよ!」とうれしそうに知らせたり。

 帰宅した我が子もよく、「◇◇ちゃんがきょう、頼まれないのに先生のお手伝いをしたんだよ。えらいよね」といった話をしていた。逆に、「折り紙の折り方が分からないお友だちに折り方を教えてあげたら、『折り紙じょうずですごいね』って言ってくれた」というような報告もしばしば聞いた。

■“ほめる”とは、子どもを“見て”、“認める”こと

 以上2つの例は、筆者が実際に見聞きした話だ。

 その後、『子どもが伸びる ほめる子育て ――データと実例が教えるツボ』(太田肇/ちくま新書)という本を読んでいたら、類似のエピソードが紹介されていた。

 同書には、ほめるためには相手を見なければならない、ほめるということは相手を認めることだ、とあった。

 人間は、自分を認めてくれる相手、自分を認めてくれるコミュニティーを嫌いになることはない。“子どもたちが互いにほめ合う”取り組みを実践している小学校では、だから、いじめが起きないのだと言う。

 親として子どもをほめるときに最も重要なのは、子どもをよく見て、その子の特質や行為を具体的にほめてやること。すなわちそれは、我が子をしっかりと認めてやることだ。

 4歳くらいまでは、「◇◇ができたね! すごい!」「さすが××くん! がんばったね!」といったほめ方でもよい。

 しかし、自分と他者との関係を認識し、それについて考え始める5~7歳ころには、より具体的に、客観性のある表現でのほめ方が有効になる。

 子どもの年齢が上がるにつれ、対応やほめ方も変える必要があるが、根底に常にあるべきなのは、子どもを“認める”ことであることには変わりがない。

※参考資料
『子どもが伸びる ほめる子育て ――データと実例が教えるツボ』太田肇 著(ちくま新書)

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