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彗星の核で見つかった脂肪酸有機化合物 生命の起源物質は太陽以前に存在か
1月13日にイギリスのNature Astronomy誌に公表された論文で、欧州宇宙機関(ESA)の研究者が、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の核の表面に脂肪酸有機化合物を見出したことが明らかにされた。
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この彗星については、2015年にすでにESAの彗星探査機ロゼッタが観測を行い、アンモニア、メタン、硫化水素、シアン化水素、ホルムアルデヒドなどが含まれていたことが公表されている。当時はこの彗星が腐った卵(硫化水素)、馬小屋(アンモニア)、そしてホルムアルデヒドと、鼻を刺激する息の詰まるようなにおいがすると称されていた。
今回、論文で公表された内容は、これらの有機化合物に関するより詳細な赤外線スペクトル分析結果および、太陽系が形成される前の星間物質と、惑星や小惑星など現在の太陽系の構成員たちとの関係にまで踏み込んだものだ。
このチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の核の表面で検出された脂肪酸有機化合物は、太陽系が形成される前の星間物質の構成要素と非常によく似ており、原始太陽系の進化のなぞ解明に役立つことが期待されている。
原始太陽系を形成するに至った星間物質の源は、太陽誕生以前に輝いていた恒星が超新星爆発を起こし、それによってばらまかれた物質であると考えられている。それらの中にバラエティに富んだ有機化合物が含まれていたことが示唆されており、生命の起源に迫る情報もこの研究で得られるのかもしれない。
有機化合物を構成する炭素、水素、窒素などの元素の由来は、太陽が誕生する前に輝いていた恒星の内部で起きた核融合反応である。だがそれらの元素がいかにして、複雑な構造の有機化合物を形成するに至ったのかは、実のところ明確なメカニズムは解明されていない。
だが、生命誕生の材料となる有機化合物が、すでに太陽が誕生する前の星間物質に含まれていた事実は、少なくとも太陽系が形成されるメカニズムの中で、これらが形作られてきたのではないことを示唆している。
生命誕生の起源となる物質が実は太陽が誕生する前から準備されていたとは、まさに驚きである。私たちの体を構成する有機化合物の実年齢は、実は太陽の50億歳をはるかにこえる値なのかもしれないのだ。
人間の寿命はたかだか100年に届くかどうかにすぎないが、それを構成する分子まで遡れば、100億年単位に及ぶ壮大なドラマの中を生きてきたことになる。(記事:cedar3・記事一覧を見る)
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