ウナギ減少の原因はネオニコチノイド系殺虫剤か 産総研などの研究

2019年11月6日 07:43

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島根県宍道湖の年間漁獲量の推移。縦の点線で示した1993年にネオニコチノイド系殺虫剤が初めて使用された。(画像:東京大学発表資料より)

島根県宍道湖の年間漁獲量の推移。縦の点線で示した1993年にネオニコチノイド系殺虫剤が初めて使用された。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 ウナギがいま絶滅の危機に瀕している、という話は耳にするようになって久しい。それと軌を同じくして実はワカサギも激減しているのであるが、その原因として1993年に登場したネオニコチノイド系殺虫剤があるのではないかという報告を、産業技術総合研究所(産総研)などの研究グループがまとめた。

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 研究に参加しているのは、産総研の田中 裕一郎山室真澄特定フェロー(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)、東京大学、島根県保健環境科学研究所、名古屋市環境科学調査センター、千葉工業大学。

 今回の研究は、島根県の宍道湖で行われた。日本の淡水魚の漁獲量は長らく減少し続けている。その原因としては、外来種の増加と、湖沼の貧栄養化が指摘されているが、日本には湖沼の貧栄養化はさほど見られないとの報告もあり、明確な原因は究明されていなかった。

 1980年代まで、日本の多くの湖沼で大量に羽化し、害虫とみなされていた存在にオオユスリカがある。宍道湖でオオユスリカが見られなくなったのがいつであったか調査したところ、1992年には住民から苦情が出るほど生息していたものが、1993年を境にぱったりと見られなくなっていたことが分かった。

 また、宍道湖の動物プランクトンの多くを占めるキスイヒゲナガミジンコの生息数も調べたところ、1993年5月から激減していたことが分かった。

 この前後に何があったかというと、1992年にネオニコチノイド系殺虫剤が初めて登録され、翌年5月、つまり田植えの季節に大量に散布され始めたのである。

 ネオニコチノイド系殺虫剤は水溶性の、昆虫にだけ毒性を発する殺虫剤である。より古い殺虫剤である有機リン系殺虫剤に比べると、哺乳類、爬虫類、鳥類に対する安全性は高い。

 しかし、ネオニコチノイド系殺虫剤があまりにも効果的でありすぎたためにプランクトンなどにも悪影響が出、結果として上位の捕食者であるウナギやワカサギの激減に繋がったのではないかというのが今回の研究である。

 研究の詳細はScience誌に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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