障害者雇用に前向きな企業の実態と今後の課題

2019年10月29日 11:20

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 改正障害者雇用促進法(精神障害者も法定雇用率の算定基礎に加える)施行から、1年余が経つ。障害者に雇用の機会を提供する社会は、歓迎すべき社会といえる。各企業がこの間、受け入れ体制の整備を図っている。

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 だが一朝一夕に成しえないのも事実である。それなりの時間を要し、諸問題と取り組んだ積み重ねが推進の大前提となる。

 そんな中、我が地元:埼玉県に「高齢・障害・求職者雇用支援機構」(厚労省管轄)から昨年度「障害者雇用職場改善好事例」として、「奨励賞」を受けた企業が存在することを知った。越谷市に本社を構えるポラスグループ。取材を申し込み、快諾を得た。

 持ち株会社:ポラスは、傘下に25社を有する「新築分譲住宅」「新築戸建て住宅」「リフォーム」「分譲マンション」等を展開する企業。グループの総社員数4000名超。2019年3月期は「連結売上高2163億円余、営業利益129億円余」。今年3月、多分野の多面的ランキング発表で知られるオリコンの「住宅分野・顧客満足度調査」で1位に輝いている。そんな下知識を頭に過日、ポラス本社を訪れた。

 障害者対応を担うビジネスサポート課の鈴木英生課長は「取り組みを開始したのはかれこれ20年近く前。拡充の転機は2015年の特例子会社(ポラスシェアード)の立ち上げ」とし、質問に懇切丁寧に答えてくれた。以下のような具合である。

 「ポラスシェアード立ち上げ当初の障がい者数は、17名。それが現在では34名。他のグループ企業を合わせると、67名が勤務している」

 「障がい者との向き合い方は、OJTとしか言いようがない。画一的な研修は意味を持たない」。

 「事務職や設計分野が主たる業務。だが我々の判断だけで新しい仕事を勧めるのは禁物。それだけで不安を覚えさせ、退職という事態にもなりかねない。要はことあるごとに双方が裸になって話し合うことが大事。また月に1回は彼らとの面談を行っている」

 「個性を伸ばし、やりがいを持ってもらえるように資格取得をフォローしている。例えば現に1級・2級を合わせ4人の建築士資格保有者が生まれているし、4人の宅建建物取引士や簿記検定資格者5人が存在している」

 「採用時は正社員・派遣社員・パート社員に分けているが、本人そして会社の意向で転換も可能。面接と会社概念、社会・時事常識の試験を最低でも年に1回は実施している」

 「現状で、2人のリーダー(管理職者)が生まれている」

 今年9月には13年入社のWK氏が「埼玉県高齢・障害者ワークフェア2019」で、「公益社団法人埼玉県雇用開発協会会長表彰」を受賞した。WK氏は入社以来、「契約書や図面等の書類電子化」「データ入力業務」を担当。17年以降は業務リーダーとして業務の効率化や改善提案に取り組んできた。また17年-18年のアビリンピック(全国障害者技能競技会、日頃職場で磨いた技能を競う)埼玉大会で連続入賞するなどの実績が認められての受賞だった。

 最近では障害者雇用の為の環境の見本にすべく、ポラスを訪れる見学者の数も増えているという。

 障害者雇用の推進には、行政の本気度も覚える。「民間企業:2.2%」「国・地方公共団体・特殊法人等:2.5%」「都道府県等教育委員会:2.4%」と雇用率が定められている。と同時に「労働者100人超の組織が未達の場合は、不足1人に対し月額5万円の徴収」、逆に「雇用率達成企業には超過1人当たり2万7000円が支給」といった枠組みが設定されている。

 だが「体制整備」に関しては、こんな指摘も聞かれる。「道半ば」。周知の様に先の参議院選挙で「れいわ新選組」が2議席を得た。ともに障害者である。早々にバリアフリー対策が参議院負担でなされた。「介護対応」予算が検討され始めてもいる。「障害者雇用を進めるには、就業環境や介護ケア対策として補助金の供与が雇用率達成のためになされるべき」といった声である。検討に値すると考える。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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