東証、「上場基準厳格化改革」の一考察 (下)

2019年9月18日 18:17

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 東証の「上場厳格化改革」の在り様を求めて兜町の住人を渡り歩いているうちに、「なるほど」と頷かされる指摘に出会った。前回の「上」で記した様に「プレミアム市場」の上場要件に関しては、「流動性から考え、時価総額500億円以上で知名度の高い企業」でほぼ一致していたが複数の外資系証券からはこんな声が聞かれた。

【前回は】東証、「上場基準厳格化改革」の一考察(上)

(I)東証は指数化を視野に入れている: 米国の株式市場にS&P500指数の構成銘柄の内、25年以上に亘り連続増配をしている企業を対象にした「配当貴族株指数」がある。米国株を投資対象とする機関投資家が自身のパフォーマンスを計る上の基準とされている。東証はそれに倣い「プレミアム株指数」を登場させようとしている、というのである。

(II)昇格企業: 時価総額は悠に500億円を超えているが、現住所は東証1部以外(東証2部、ナスダック、東証マザーズ)の銘柄の「プレミアム市場」への移行という施策も考えられる。

 とりわけ「II」に惹かれた。調べてみた。現に1部以外の銘柄の中にも、500億円超の時価総額でかつ「知名度」でも「OK」とせざるをえない企業に容易に出会えた。例えば次の様な具合だ。

「日本マクドナルド(本稿作成時の時価総額、約6675億円)」、昨今その収益動向など何かと話題の多い「ワークマン(約5639億円)」「ミクシィ(1790億円)」「ナカニシ(約4538億円)」「ティーケーピー(約1627億円)」等々が容易に指折り数えられた。と同時に、いま株式市場にあって注目を集めている「東証1部」以外を住処とする「500億円前後」の企業の存在にも気づいた。

 例えば9月9日に企業・産業欄で記した「少子化時代に潤う、教育事業の実態」の主人公:イトクロは株価反転の動きから、時価総額は約454億円に至っている。知名度十分のヱスビー食品も約565億円。収益反発基調で増産体制が伝えられているブルボンも462億円。

そしてなんといっても興味を覚えたのが、夢真ホールディングス。専門色の濃い建設技術者の派遣や施工図作図など、「人手不足」の時代に即した企業の時価総額は681億円。前9月期の「32.5%増収、119.6%営業増益」と高くなった下駄をものともせず今期も、「23.7%増収、15.7%営業増益」計画。

収益動向に加え、株主(投資家)の耳目を集める還元策にも積極姿勢を示している。象徴的なのが9月9日の発表。「機動的な資本政策の遂行」とする名目で「自己株買いの期間・上限玉数」の延長・拡大を示した。昨年12月20日から今年9月30日までに上限「270万株/発行済み株式の3.62%」としていたものを、「12月19日まで、405万株/5.14%」とした。狙いがどこにあるのかは、容易に想像がつく。

 東証が標榜する「改革」、推測のしがいがある。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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