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アルマ望遠鏡、双子原始星から噴き出す分子流で連星誕生のプロセスに迫る
双子原始星からのふぞろいな分子流と円盤の想像図 (c) 国立天文台[写真拡大]
東京大学や国立天文台の研究者から成る研究チームは、双子原始星「VLA 1623A」をアルマ望遠鏡で観測し、それぞれの原始星から不揃いな分子流が噴出していることを発見した。これは、それぞれの原始星円盤の回転方向が同じではないということを示している。
【こちらも】原始星を取り巻く2つの独立したガス流 アルマ望遠鏡が恒星誕生の秘密を明らかに
■連星の誕生
肉眼で見ると1つの星に見えても、望遠鏡で観察すると実は接近した2つの星に分離することがある。このような星を重星と呼ぶ。重星の中でも実際に近い距離にあって互いに重力を及ぼし合っているものを連星という。
多くの星は連星として生まれると言われているが、連星がどのような過程で形成されるかは未だに謎のままである。現在考えられている星の誕生プロセスは次のようなものである。
星の材料である星間ガスが圧縮されて水素分子から成る分子雲ができる。分子雲の内側にはガスの密度の濃い分子雲コアがつくられ、やがて分子雲コアの中心に原始星が誕生する。
連星の誕生モデルとしては、分子雲の中で乱流により複数の分子雲コアが形成されるという「乱流分裂モデル」や、原始星を取り巻く原始星円盤が分裂して伴星ができるという「円盤分裂モデル」などが提唱されている。
これらのモデルのいずれが現実に合っているかを確かめるには、多くの若い連星系の観測データを積み上げる必要がある。そこでキーポイントとなるのが、原始星円盤の回転の向きである。
■今回の研究
研究チームは、観測対象として、へびつかい座の方向にある双子原始星VLA1623Aを選択した。この双子原始星は非常に若く、見かけの間隔が30天文単位とたいへん狭い。
アルマ望遠鏡での観測の結果、間隔が狭い連星系では初めて不揃いな分子流を検出した。
これまでの理論では、間隔が狭い連星系は「円盤分裂」でつくられるため、円盤の回転軸はそろっていると考えられていた。しかし、近年の「円盤分裂モデル」では磁場や乱流などを考慮した場合、円盤の回転軸がそろわない可能性も示唆されている。
今回の結果はこれによって説明できるが、「乱流分裂モデル」の反証とはならない。
研究チームは今後、同様の観測を多数行うことで、連星系誕生のモデルを検証し、連星系形成の謎を解き明かしたいとしている。
この成果は、9月11日から日本天文学会2019年秋季年会(熊本大学で開催)において発表された。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る)
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