ソフトバンクとKDDIの端末半額プラン、総スカンを喰らって・・どうする?

2019年9月13日 17:40

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 18年6月に、菅義偉官房長官が「携帯電話料金が高止まりしている」とやり玉に挙げたのを発端として、紆余曲折を経ながら10月に新しい携帯電話料金がスタートする。

【こちらも】楽天が急停止、携帯事業への本格参入を一時延期 (2-1) 何がネックだ?

 目玉は2年契約の途中解約違約金が9500円から1000円以下にすること、端末割引の上限を2万円として、通信料金と端末代金の完全な分離が実施されることだ。特に端末を大幅に値引きして行われていた利用者の取り込みが、通信料金の分かりにくさの元凶であったとの反省から、端末の割引金額に上限が設定された。

 こうした施策は、端末契約の流動化を促進して、キャリア各社の料金競争を促し通信料金を引き下げるのが目的だった。

 最初に動いたKDDIは、途中解約違約金を1000円に引き下げると発表した。次にソフトバンクが、2年縛りを9月中旬から廃止して、途中解約違約金もなくすことを発表した。

 10月に新たに携帯電話事業に参入し、料金引き下げの先導に立つことを期待されていた楽天は、従来「いつでも加入できて、いつでも辞められる」料金プランを発表するとアナウンスしていたため、料金引き下げへの期待はますます高まっていた。

 6日に、かねて基地局設置の進捗が遅れていると懸念されていた楽天が、携帯電話事業への本格参入を3~6カ月程度の不定期な範囲で延期すると発表し、料金プランも明かされなかったことから、通信料金引き下げへの期待が一気にしぼんだ。

 追い打ちをかけたのは、ソフトバンクが9日に発表した新たな端末販売プランだ。端末の販売を48回の分割にして2年後にその端末を返却して新機種に買い替えると、最大で24回の端末代金の支払いが免除される。結果として、端末代金が半額になるというこのプランには、12日にKDDIも同一内容で追随した。

 他の携帯電話事業者の契約者でも利用可能という”善意に溢れた”プランに聞こえたが、このプランで販売される端末には販売当初から100日間の「SIMロック」が設定されているため、その期間はソフトバンク(もしくはKDDI)の回線でしか利用できない。

 どう考えても、通信料金値下げへの機運に背を向ける骨抜き案だ。巧妙に細工されたおきて破りのようなあざとさすら垣間見える。

 ソフトバンクはこのプランを事前に総務省に確認済みであると胸を張っていたが、今まで1年以上の期間に渡って、携帯料金の在り方を検討してきた「携帯電話料金に関する有識者会議」から批判が噴出した。両社の認識に大きな乖離があったことを示すものだ。

 総務省は「課題が浮き彫りになった」として、スマホを分割払いで販売する場合に「SIMロック」の即時解除を義務とする方針だ。割賦代金未払いのまま、スマホが詐取されることなどを想定した、通信事業者保護の配慮が逆手に取られた総務省の怒りが透けて見える。

 注目はソフトバンクとKDDIの対応だ。先走ったソフトバンクと、思慮なく追随したKDDIが今まで有識者会議で積み重ねられた議論を無にするような対応に出ると、両社の企業イメージが、大きく低下することは必至だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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