量研、核融合発電に必要なベリリウムの革新的精製技術を開発

2019年9月4日 13:37

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中性子増倍材の役割とベリリウムの安定確保の必要性。(画像:量子科学技術研究開発機構発表資料より)

中性子増倍材の役割とベリリウムの安定確保の必要性。(画像:量子科学技術研究開発機構発表資料より)[写真拡大]

 量子科学技術研究開発機構(量研)は、ベリリウムの画期的精製技術を開発したと発表した。ベリリウムはレアメタルの一種で、核融合発電の燃料生産に大量に必要となるマテリアルである。

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 研究開発に当たったのは、量研核融合エネルギー部門六カ所核融合研究所増殖機能材料開発グループの中道勝グループリーダーらによる研究チーム。

 ベリリウムという物質は多様な性質を持っている。常温常圧下においてはアルミニウムに似た銀白色の金属であり、各地に鉱脈が存在して豊富な埋蔵量を持つ。多様な用途があり20世紀初頭から生産されていたのだが、毒性があり、環境汚染物質でもあり、現状ではその生産は下火である。また、これは余談とはなるが少し不純物を混ぜるとエメラルドやアクアマリンなどの宝石になる物質でもある。

 現在、世界におけるベリリウムの総生産量は年約300トンに過ぎない。鉱山が発見されていても、閉山していたり採掘を休止していたりするところがほとんどだ。従来の方法ではベリリウムの精製には約2000度の高温処理が必要になるなどハイコストであったことや、作業従事者がその毒性に晒されやすいという問題などがあったためである。

 だがベリリウムは必要とされている。目下研究中の核融合発電において、燃料となるトリチウムを生産するために、原型炉一基当たり約500トンものベリリウムが求められるからだ。そのため、核融合発電を巡る研究開発の中で、ベリリウムの安定確保は重要な課題の一つであった。

 今回開発された新しい方法は、加熱処理に必要なエネルギーが100分の1以下になる上に、プラントの規模も数百分の1程度で済み、さらに従来は乾式加工であったものが湿式加工になるため毒性の問題も大幅に解消するなど、多くの点で画期的であるといえる。

 当該の技術は、鉱山を所有する世界各国の国や企業に向けて提供される予定となっているという。また、同技術は特許出願中であり、9月11日から開催される日本原子力学会2019年秋の大会の講演で詳しく解説される予定となっている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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