乃木坂46 卒業する桜井玲香の肩を押した北野日奈子の覚醒

2019年9月2日 17:40

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 9月1日、東京神宮球場で行われた『乃木坂46真夏の全国ツアー2019千秋楽公演』において、これまで7年以上にわたってチームをけん引してきたキャプテン、桜井玲香が卒業していった。

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 会場では、彼女の雄姿を目に焼き付けようと、西野七瀬らOGメンバーも多数駆け付け、また共演しているバナナマンら芸能人も見守る中、感動的なシーンが随所に盛り込まれた。球場にいた観客のみならず、全国の映画館で行われたライブビューイングの会場の客からも、嗚咽があがるほどの盛り上がりを見せていたという。

 公演の後半には、今回のツアーを休んでいた井上小百合も駆け付け、新キャプテン秋元真夏の提案で会場を歩く桜井のところに、OGで盟友だった若月佑美が花束を贈呈するという、もはや「エモい」を通り越してエグイまでの演出で、随所に「乃木坂らしさ」を感じさせる、暖かく、熱いライブだったといえるだろう。

 だが、今回、記者が目を奪われたのは、2期生の北野日奈子の姿だった。

 北野といえば、乃木坂の元気娘として、常に感情をむき出しにしてメンバーを盛り上げ、かと思えば拗ねたりいじけたりしてメンバーにいじられるキャラクターだが、2年前の全国ツアー、その後のアンダーライブツアーでも体調を崩して休養するなど、メンタルの弱さ、不安定さを指摘されても来た『爆弾娘』でもある。

 これまでも、誰かの卒業のときには人一倍ショックを受けていたり、号泣していたり、「許しません!」と噛みついていたりと、賑やかに感情をぶつけていたが、今回のツアーでは一歩引いた形で、まるで噛みしめるように桜井の卒業を受け入れているように見えたのだ。

 記者の見解としては、彼女を内面的に大人にしたのは『日常』という曲だったと思っている。

 22枚目シングル『帰り道は遠回りしたくなる』のカップリングのアンダー曲として作られたこの曲は、彼女が本格的に活動復帰してから2作目のアンダー曲で、彼女がセンターをつとめている曲だ。発表当時から、ダンスパフォーマンスのよさと、北野の成長を物語る表情の変化に、地味ながら確実にファンを魅了する名曲となりつつある。

 実際、今回の全国ツアーでも楽曲としてネットで話題になるのは、『ガールズルール』とこの『日常』で、そこには、「とにかく北野がかっこいい」と、センター北野日奈子への賞賛の声が圧倒的に多いのである。

 元々、「ダンスは苦手」「歌は声が大きいけどはずれることがある」など、スキルにはあまり自信がないようなことを公言していた北野だが、この曲のときは、人懐っこい笑顔はなく、冷徹にすら見える真顔から切ない表情への切り替えが素晴らしく、多くのファンが衝撃を受けることが、これまでのライブでも証明されている。

 元々高いポテンシャルが、今一つかみ合わず苦しんでいた北野日奈子のギアをかっちり固めてくれたこの曲を経験して以来、はた目にも北野の視野が広がり、後輩への接しかた、同期への気配り、1期へのアプローチにも大人の、穏やかだけど強固な信頼関係を感じさせることが増えてきている。

 桜井玲香の卒業を後押ししたのは、そんな彼女の成長も、一つの要因だったように、記者には思えてならないのだ。(記事:潜水亭沈没・記事一覧を見る

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